米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 新型コロナウイルスの影響で、アーリーステージにあるバイオファーマの資金調達が低調となっている一方、デジタルヘルス分野への投資は急拡大しています。
(この記事は、DRG発行のレポート「Biotech White Paper 2020」の一部を日本語に翻訳したものです。レポートのダウンロードはこちら)
アーリーステージの資金調達は低調
企業が機関投資家に株式を売り込む、いわゆる「ロードショー」は、新型コロナウイルス感染症に伴う移動制限のため、デジタルで行われるようになった。
シリーズB以降のラウンドまたは株式市場でグロースキャピタルを調達している企業の場合、バーチャルでの売り込みに移行するのはさほど難しくない。こうした企業は、シードラウンドやシリーズAの資金調達を模索している企業に比べ、すでに知名度があるからだ。
8月末までにバイオファーマがシードラウンドやシリーズAで調達した資金は約36億ドルで、昨年の47億ドル、一昨年の65億ドルに比べて少なかった。
年頭に新型コロナウイルスが流行し始めたアジア太平洋地域では、第1四半期(1~3月)にベンチャーファイナンスはほとんど行われなかった。欧州では、第2四半期にベンチャーファイナンスが停滞したものの、6月に再び活発化した。米国では、年間を通して資金調達のペースは変わっていない。
がん治療薬を手掛ける企業がベンチャーファイナンスによる資金調達の相当部分を占めている状況は変わらず、全調達金額の約3分の1を占めている。一方、新型コロナウイルスなどの感染症に注力する企業が占める割合は10.1%となり、昨年の3.9%、一昨年の8.1%から増加した。
今年、バイオファーマが非営利組織との協働や助成金を通じて調達した資金の大半(それぞれ87%と85%)も、新型コロナウイルスの治療や予防などの事業に充てられた。BioWorldが把握している今年のバイオファーマ―非営利組織間の契約590件のうち、283件は新型コロナウイルス感染症の治療に関するものだ。同様に、現時点で430件93億ドルの助成金のうち117件が新型コロナの治療薬やワクチンに関する事業に支給されている。
デジタルヘルスへの投資が急増
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、ソーシャルディスタンスの確保やロックダウンといった措置がとられた結果、特に米国ではバーチャル診療が増加した。
米国ではこれまで、なかなか遠隔診療が定着してこなかった。しかし、コロナ禍で不要不急の診療が控えられ、規制緩和が行われたことで、導入が促進された。今年7月時点で、過去3カ月の間にバーチャル診療を行った米国の医師は全体の80%に上り、4月の39%、3月初旬の9%から大きく増加した。
デジタルヘルスへの投資は増加し、今年上半期の調達資金は全世界で63億ドルに達した。この記録的な金額は、昨年の同じ時期の51億ドルを24%上回っている。このうち最も多い17億ドルを調達したのは、新型コロナウイルスの影響で需要が拡大した遠隔診療。次いでアナリティクスが8億2600万ドル、モバイルヘルスケアアプリが7億9400万ドル、臨床判断支援が5億4500万ドルを調達した。
(この記事は、DRG発行のレポートの一部を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com