2020年11月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】早老症の疾患修飾薬「Zokinvy」や遺伝性肥満治療薬「Imcivree」など
「Sesquient」米セドール
抗てんかん薬「Sesquient」(fosphenytoin)は、室温で管理できるホスフェニトインナトリウム注射剤。てんかん重積状態や脳神経外科手術中のてんかん発作抑制のほか、経口フェニトインの一時的な代替に使用されます。既存の「Cerebyx」(米ファイザー)は冷蔵が必要でした。
「Zokinvy」米アイガー
米メルク創製のファルネシルトランスフェラーゼ阻害薬「Zokinvy」(lonafarnib)は、ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(プロジェリア)とプロセッシング欠損のプロジェロイド・ラミノパチーに対する疾患修飾薬。両疾患は早期老化を引き起こす遺伝性疾患で、多くの患者は心臓病で15歳を迎える前に亡くなると知られています。小児・若年成人のプロジェリア患者を対象に行った臨床試験では、未治療の患者と比べて死亡率を60%低下させ、平均生存期間を2.5年延長しました。
「Oxlumo」米アルナイラム
「Oxlumo」(lumasiran)は原発性高シュウ酸尿症1型(PH1)に対する核酸医薬。PH1はシュウ酸塩の過剰産生を特徴とする遺伝性疾患で、腎臓結石や腎不全などを引き起こすとされています。同薬はHAO1をターゲットとするRNAi治療薬で、HAO1メッセンジャーRNAを分解して肝臓でのシュウ酸産生を抑制。臨床試験では、プラセボと比べて尿中のシュウ酸濃度を有意に低下させることが確認されました。欧州でも同月承認されています。
「Imcivree」米リズム
メラノコルチン4受容体アゴニスト「Imcivree」(setmelanotide)は、POMC遺伝子またはPCSK1遺伝子、LEPR遺伝子の欠損による肥満を対象とした米国初の治療薬。6歳以上の患者の長期体重管理に使用されます。臨床第3相(P3)試験では、POMC/PCSK1欠損患者の約80%、LEPR欠損患者の約46%が治療1年後に10%超の減量を達成。空腹感を軽減する効果も確認されました。欧州でも申請中です。
「Danyelza」米Y-mAbs
抗GD2抗体「Danyelza」(naxitamab)は、骨または骨髄での再発・難治性の高リスク神経芽腫治療薬です。対象は1歳以上の小児と成人で、これまでの治療で部分奏効または最小奏効、病勢安定となった患者。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)製剤と併用します。全奏効率(ORR)や奏効期間(DOR)を検証した2つの臨床試験で有効性が確認され、迅速承認に至りました。
悪夢に介入するAppleWatch用アプリ「Nightware」が承認
悪夢による睡眠障害を軽減するAppleWatch用アプリ「Nightware」(米Nightware)も医療機器として承認されました。対象は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)などによる悪夢に悩まされる22歳以上の成人で、ほかのPTSD治療などと組み合わせて処方されます。アプリは睡眠中の心拍数や体の動きを分析し、悪夢をみているか判別。悪夢だった場合は、穏やかな振動で患者を目覚めさせます。臨床試験では悪夢の頻度と強度を低下させ、睡眠の質を有意に改善させることが示されました。
【適応拡大】「Brilinta」の脳卒中リスク低減や「Keytruda」のトリプルネガティブ乳がんんなど
「Totect」英クリニジェン
「Totect」(dexrazoxane)は、「ドキソルビシンに関連する心筋症の発生率と重症度の低減」の適応で承認を取得。ドキソルビシン療法を受けている転移性乳がん患者が対象です。同薬はアントラサイクリン系抗がん剤の血管外漏出の適応で2007年に承認されており、日本でも同適応でキッセイ薬品工業が「サビーン」の製品名で販売しています。
「Brilinta」英アストラゼネカ
抗血小板薬「Brilinta」(ticagrelor)は、急性虚血性脳卒中、高リスク一過性虚血性脳卒中患者の脳卒中リスクの低減で新たに承認されました。アスピリンへの上乗せ効果を評価したP3試験では、アスピリン単剤と比べて脳卒中・死亡の複合リスクを有意に減少。脳卒中の再発をリスクを下げると期待されます。中国と欧州でも同適応で申請を済ませています。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、切除不能な局所再発・転移性トリプルネガティブ乳がんに適応拡大。PD-L1陽性の患者が対象で、化学療法と併用します。P3試験では、化学療法単独と比べて病勢進行または死亡のリスクを35%低下させました。日本でも今年10月、トリプルネガティブ乳がんへの適応拡大を申請しました。
「Vimpat」ベルギーUCB
抗てんかん薬「Vimpat」(lacosamide)は、新たにてんかん患者の強直間代発作(代表的な全般発作)治療の補助療法として使用できるようになりました。4歳以上の患者を対象に、錠剤、経口液剤、注射剤の3製剤で承認。欧州でも近く同適応拡大が承認される見通しで、日本でも申請中です。
「Xofluza」米ジェネンテック
塩野義製薬創製の抗インフルエンザウイルス薬「Xofluza」(baloxavir marboxil)は、「12歳以上のインフルエンザウイルス感染暴露後予防」に適応拡大。あわせて、経口懸濁液も新たに承認されました。予防適応での承認は、インフルエンザ患者の同居家族らを対象に日本で行われたP3試験結果に基づいています。日本でも11月、予防適応を取得しました。
(亀田真由)
AnswersNews編集部が製薬企業をレポート
・塩野義製薬