今年3月末時点の国内のMR数は5万7158人で、前年の同じ時期から2742人減少したことが、MR認定センターのまとめでわかりました。減少幅は過去最大で、ピークの13年度と比較すると8600人近く減っています。
INDEX
6年連続減少
MR認定センターが公表した2020年版の「MR白書」によると、19年度(20年3月31日時点)の国内のMR数は5万7158人で、前年度から2742人(4.6%)減りました。国内のMR数は13年度の6万5752人をピークに6年連続で減少しており、この6年で8594人減ったことになります。
薬価の引き下げや後発医薬品の普及などを背景に、国内市場の収益環境は厳しくなっており、製薬各社は営業体制の見直しを進めています。IQVIAが11月に発表した最新の市場予測によると、国内市場の年平均成長率は15~20年度が0.9%減~0.7%減、20~25年度が0.9%減~0.1%増と緩やかなマイナス成長となる見込み。新型コロナウイルス感染症による受診行動の変化が続くほか、21年度から始まる薬価の毎年改定が市場の自律成長を相殺するとみられています。
MR数の推移を、内資製薬企業/外資製薬企業/CSOの別に見ると、内資が3万3463人で前年度から5.6%減(1992人減)、外資が1万9711人で5.1%減(1052人減)。一方、CSOは8.4%増(303人増)の3917人で、3年ぶりに増加しました。
MRの削減は外資で先行していましたが、18年度、19年度は2年連続で内資の方が大きな減少となりました。19年度は、鳥居薬品や中外製薬、協和キリンが早期退職を実施。20年度も武田薬品工業や日本ケミファが早期退職の実施を発表したほか、複数の外資系企業でも人員削減が行われています。
新卒採用実施は4割
MR認定センターに登録している200社(製薬企業185社、CSO14社、卸1社)のうち、今年春の新卒採用を行ったのは85社と全体の42.5%にとどまり、57.5%にあたる115社は新卒採用を行いませんでした。6年前は半数以上を占めていた新卒採用を行う企業は年々減少しており、外資系企業では4割を、内資系企業でも半数を下回っています。
一方、19年度にMRの中途採用を行った企業は130社で、全体に占める割合は前年度から2.4ポイント上昇しました。正社員として採用した企業は87.7%(114社)で前年度から1.9ポイント上昇。契約社員として採用した企業は38.5%(50社)で0.9ポイント減少しました。
中途採用者の前職を見てみると、製薬他社のMRを採用した企業が77.7%と最も多く、コントラクトMR(54.6%)、特約店関係者(卸のMSなど、12.3%)、他業界(16.2%)と続きました。傾向としては例年と同じですが、前年度と比べると、製薬他社のMRが4.5ポイント上昇した一方、コントラクトMRが1.3ポイント、特約店関係者が2.7ポイント減少。他業界から採用した企業は6ポイント増加しました。
新型コロナでデジタル化加速
MRをめぐっては、新型コロナウイルスの感染拡大を機に削減が加速するとの見方が出ています。
コロナ禍で製薬各社はMRの医療機関への訪問を自粛し、web会議システムを使ったリモート面談が拡大。現役のMRからは「web面談によって移動時間が減り、効率的に活動できるようになれば、1人のMRが担当するエリアや医師の数が増え、MRの削減が進む」との声も聞かれます。リモート専任のMRを置く企業や、オリジナルキャラクターが動画で製品や疾患の説明を行う「バーチャルMR」を導入する企業、LINEなどSNSの活用を試みる企業もあり、各社とも営業の「ニューノーマル」を模索しています。
IQVIAの市場予測によると、市場全体に占めるスペシャリティ医薬品の割合は、15年度の31.0%から25年度には43.2~44.2%に上昇する見通し。同社は21~25年度に発売される新薬の売上高の6割以上はスペシャリティ医薬品が占めるとも予想しています。市場構造の変化に伴い、数を背景とした従来型の情報提供が過去のものとなりつつある中、MRの業務や体制のさらなる見直しは避けられそうにありません。
(前田雄樹)