米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 新薬の承認数が増加傾向にある中、米FDAの承認数は今年、コロナ禍でも昨年を上回りそうです。
(この記事は、DRG発行のレポート「Biotech White Paper 2020」の一部を日本語に翻訳したものです。レポートのダウンロードはこちら)
FDA、8月までに33の新薬を承認
米FDA(食品医薬品局)が承認した新規有効成分含有医薬品は、過去10年増加傾向が続いており、今年も昨年を上回りそうだ。世界で初めて発売された新規有効成分含有医薬品の数も2010年以降、年8%のペースで増加している。
FDAは今年、8月までに33の新規有効成分含有医薬品を承認した。ただ、これらは新型コロナウイルス感染症の流行前に承認審査が始まったものだ。今年の前半、新薬や適応拡大の申請が大きく減少したことを考えると、来年は承認数が減少するかもしれない。
新型コロナウイルスの感染拡大防止策として移動が制限されたことで、製薬企業は進行中・計画中の臨床試験を中断、延期、中止することを余儀なくされた。実際、進行中の臨床試験のうち、少なくとも427件が中断している。パンデミックが近い将来に収束する兆しはなく、臨床試験からの離脱やさらなる延期により、今後、その数は増加する可能性もある。
昨年承認の新薬 半分は希少疾患
昨年、初めて発売された新薬は世界全体で46品目だった。その3分の2は大手製薬企業の製品だが、売上高上位10社の製品は13品目にとどまった。共同開発品の割合は25%で、2010年の10%から大きく上昇している。
46品目のうち23品目は希少疾患を対象としたもので、多くは発売された国でオーファンドラッグの指定を受けている。最大市場の米国では29品目が発売され、日本は11品目、中国は5品目が発売された。
「がん」「免疫」に研究開発費の半分を投資
クラリベイトグループのセンター・フォー・メディシン・リサーチ・インターナショナルの調査によると、昨年発売された新規有効成分含有医薬品に占める抗がん剤と免疫調整薬の割合は35%だったが、この領域に製薬企業が投じた研究開発費は全体のおよそ半分(47.6%)だった。
製薬企業のパイプラインのうち、他社からライセンスインした新規有効成分の割合は、2014年の18%から2018年には22%と拡大。一方、ライセンスインした新規バイオ医薬品の割合は、2014年が35%、2018年が36%でほぼ変わらなかった。
過去5年に発売の新薬 収益の1割にとどまる
年間20億ドル超の研究開発投資を行う大手製薬企業は、この5年間で105の新規有効成分含有医薬品を発売したが、大きな収益源として頼りにしているのは、十分な販売実績のある製品だ。大手製薬の収益の40.7%は各社の売上高上位3製品からもたらされており、過去5年以内に発売された新薬の売上高は11.3%にとどまる。
米国では、向こう7年で120の医薬品が特許切れを迎えると予想され、その8%は売上高10億ドル超のブロックバスターだ。製薬大手は新たな収益源の確保を迫られ、同業間の提携がさらに進むだろう。
(この記事は、DRG発行のレポートの一部を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
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