米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 韓国のHTA(医療技術評価)で、がん治療薬はどのように評価されているのでしょうか。
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
ベネフィット「妥当性あり」が8割
韓国では、医薬品の保険償還の可否は健康保険審査評価院(HIRA)の評価結果によって決まる。このため、HIRAの基準を満たさず、保険償還されないこともある。
韓国市場への参入を目指す製薬企業が、有効性・安全性や経済性に関するデータを提出する上で参考となるよう、われわれはContext MattersのMarket Access Platformを使い、HIRAが2015~19年に行ったがん治療薬の評価の臨床的・経済的根拠を分析した。
大半の評価では、ベネフィットの妥当性が認められていた。ベネフィットなしと評価されたケースもいくつかあったが、そうした場合、その薬剤は韓国で薬価交渉の対象から外れることになる。
償還の承認には「有効性の改善」「良好な費用対効果」が必要
評価結果を全体的に見てみると、償還を認められたのは、有効性が改善し、費用効果も許容範囲だった場合だ(通常はリスクシェアリング協定を締結)。経済モデルとしては、直接的なコスト比較が最も多く用いられている。4カ国以上で承認されている医薬品は、経済評価データの提出を免除されるものとして分類されていた。
一方、有効性の基準は満たしたものの、費用対効果を示すことができず、HIRAからの評価が芳しくなかった薬剤もあった。HIRAは費用対効果の基準を公式には設定していないが、暗黙の了解として約2500万ウォン(2万2000ドル)、がんや希少疾患の治療薬は5000万ウォンが目安となっている。
韓国市場参入のポイント
こうしたことから、がん治療薬を開発する製薬企業が韓国市場に参入するには、臨床アウトカムの改善を示す頑健な臨床データと、薬剤の費用対効果を示す有力な経済性データを提出する必要があると言える。
リスクシェアリング協定と経済評価の免除によって、ほかに治療法がなく生命を脅かされている患者は薬剤を入手しやすくなる。ベネフィットなしと評価されるのは、主に有効性と費用対効果が不明確な場合だ。
臨床評価と経済評価に必要なエビデンスの基準を理解することで、革新的な治療薬を患者に届けるまでの時間を短縮することができる。韓国は、抗がん剤と希少疾病用医薬品を中心に、保険償還後の評価を導入する予定だ。
(原文公開日:2020年11月3日)
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com