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ニュース解説

変わる処方薬の受け渡し「宅配」「ロッカー」新型コロナ感染防止で接触回避

更新日

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、対面が主流だった処方薬の受け渡しにも変化が起きています。オンライン診療・服薬指導の普及に伴い、患者宅に配送する動きが広がっているほか、非接触で受け渡しを行えるよう無人ロッカーを活用する薬局も。米国ではライドシェア大手なども参入し、薬局から患者までの「ラストワンマイル」をめぐる競争が激化しています。

 

オンライン服薬指導、5~6月に約7万件

医療機関や薬局での新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐため、厚生労働省は今年4月、初診からのオンライン診療を認めるとともに、改正医薬品医療機器等法(薬機法)で今年9月に予定されていたオンライン服薬指導を前倒しで解禁。患者は、宅配サービスなどを使って自宅で処方薬を受け取れるようになりました。

 

厚生労働省のまとめによると、今年5~6月に行われたオンライン服薬指導は約6万9000回で、全処方箋枚数に占める割合は0.51%。受け渡しには88.8%が配送業者を利用しており、10.5%は薬局スタッフが届けていました。

 

【オンライン服薬指導の実施状況】(処方箋枚数/オンライン服薬指導件数/割合): <5月>814万8125/4万9959/0.61% <6月>510万7173/1万8890/0.37% <合計>1325万5298/6万8849/0.51% 【配送方法】(6万8849件のうち) 配送業者を利用/88.8%(6万1162件) 従事者が訪問/10.5%(7211件) 無回答/0.7%(476件) |※厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(2020年8月6日)の資料をもとに作成

 

新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない中、政府は、時限的・特例的な措置としている初診からのオンライン診療を恒久化する方針。宅配需要の拡大を見据え、新たなサービス開発も活発化しています。

 

アルフレッサホールディングス(HD)傘下のアルフレッサとヤマトHD傘下のヤマトロジスティクスは6月、遠隔処方を行う薬局向けのサービスを共同開発することで合意。品質の維持や利便性の向上を目指した専用宅配資材を研究するほか、新たなビジネスモデルの構築に向けた検討も進めます。

 

アルフレッサは昨年1月にヤマトHD傘下のヤマト運輸と「医薬品流通研究会」を立ち上げ、医療提供体制の変化を見据えた流通サービスの検討に着手。同年9月からは、薬局向けの在宅医療支援サービスとして、患者が薬剤師に注文した栄養食品などを、アルフレッサの倉庫からヤマト運輸を通じて患者宅に直接配送するサービスを展開しています。

 

凸版印刷子会社の「おかぴファーマシーシステム」は3月から、処方薬の宅配サービス「とどくすり」の提供を開始。8月には、自社運営薬局「とどくすり薬局」を開局し、最短で当日中に処方薬を患者宅に届けるサービスを東京都内の一部地域で始めました。

 

薬局にロッカー 非接触で受け取り

オンライン服薬指導によって、薬局に行くことなく処方薬を受け取れるようになった一方、患者は医療費に加えて宅配料金を負担する必要があります。そこで、薬局やその周辺に無人のロッカーを設置し、非接触での受け渡しを試みる薬局も出てきています。

 

大阪府と兵庫県で調剤薬局を運営するメディカルユアーズは、オンライン服薬指導システム「Curon(クロン)お薬サポート」を提供するMICIN(マイシン)、日本ベクトン・ディッキンソン(日本BD)とともに、医薬品の自動入庫払い出し装置を使った実証実験を10月から開始。メディカルユアーズの「梅田薬局」(大阪市北区)に日本BDが提供する自動入庫払い出し装置を設置し、患者は自身のスマートフォンに届いたQRコードを使って好きな時間に処方薬を受け取ることができます。

 

日本調剤も今月から、宅配ロッカーを使って非接触で処方薬の受け渡しを行う実証実験を横浜市の店舗で始めました。クオールも今月、QRコードを使って受け渡しができるロッカーを東京都内の店舗に導入。今後、対象店舗を拡大させていく計画です。

 

米国ではオンライン薬局が急成長しており、2018年にはアマゾン・ドット・コムがピルパックを買収。医療保険大手のユナイテッドヘルス・グループも今年、新興のディヴィー・ドーズを買収したと報じられました。新型コロナウイルス感染症の拡大によるオンライン診療の拡大を受け、処方薬を宅配するスタートアップ企業も成長。ウーバーイーツを展開するウーバーも処方薬の配達サービスに参入するなど、競争が激しくなっています。

 

(前田雄樹)

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