2020年10月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】エボラ治療薬「Inmazeb」と新型コロナ治療薬「Veklury」
「Inmazeb」米リジェネロン
抗体カクテル製剤の「Inmazeb」(atoltivimab/maftivimab/odesivimab)は、米国初のエボラウイルス感染症治療薬。ウイルス表面に発現する糖タンパク質を標的としており、ウイルスが細胞内に侵入するのを防ぎます。2018〜19年のコンゴ民主共和国でのアウトブレイクでは、4つの候補薬を検討する「PALM試験」で使用され、ZMapp、remdesivirと比べて死亡率を有意に低下させることが確認されました。
「Veklury」米ギリアド
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)治療薬として5月に緊急時使用許可を取得していた「Veklury」(remdesivir)は、成人と12歳以上の小児の入院患者を対象に正式に承認されました。同薬は、COVID-19の原因ウイルスSARS-CoV-2の複製を阻害する抗ウイルス薬。米国立アレルギー・感染症研究所が行った臨床試験では、プラセボに比べて回復を5日間早める効果が確認されました。FDAはまた、12歳未満で体重3.5kg以上の小児の入院患者らに対する緊急時使用許可を出しました。
【適応拡大】「Opdivo」+「Yervoy」の悪性胸膜中皮腫、「Keytruda」の古典的ホジキンリンパ腫など
「Opdivo」+「Yervoy」米ブリストル・マイヤーズスクイブ
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Opdivo」(nivolumab)と抗CTLA-4抗体「Yervoy」(ipilimumab)の併用療法は、新たに未治療の切除不能な悪性胸膜中皮腫の適応で承認。プラチナ製剤を含む標準療法と比べて全生存期間を有意に延長し、同適応に対する全身療法として15年ぶりに承認されました。日本でも今年10月、同適応で申請しました。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-1抗体「Keytruda」(pembrolizumab)は、▽成人の再発・難治性の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)▽小児の難治性cHL、3次治療以降のcHL――に適応拡大。臨床第2相(P2)試験の結果に基づき、2017年に4次治療以降での承認を取得していましたが、brentuximab vedotinと比較したP3試験で無増悪生存期間の有意な延長や死亡リスク低下などが確認され、今回の承認に至りました。FDAはまた、成人・小児の難治性の縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫(3次治療以降)の適応で同薬を完全承認しました。
「Venclexta」米アッヴィ
BCL-2阻害薬「Venclexta」(venetoclax)は、azacitidine、decitabineまたは低用量cytarabineいずれかとの併用療法で、急性骨髄性白血病の適応で完全承認を取得しました。対象は、強力な化学療法が適応とならない、新規に診断された成人患者。FDAは18年、同適応でVenclextaを迅速承認していました。今回の完全承認の根拠となった国際共同P3試験の結果に基づき、日本でも今年6月に適応拡大を申請しています。
(亀田真由)