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新型コロナウイルス、メドテックへのインパクト|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 新型コロナウイルスの感染拡大は、医療機器メーカーのビジネスにどのような影響を与えるのでしょうか。

 

(この記事は、DRG発行のレポート「COVID-19 Pandemic : Impact on Medtech Regulatory Bodies and Health Agencies」の一部を日本語に翻訳したものです。レポートのダウンロードはこちら

 

影響は一時的か

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各国の規制当局はさまざまな対策を求められている。規制緩和や外資からの買収防止策といった措置によって、検査やPPE(個人防護具)へのアクセスが確保され、新型コロナウイルス感染症以外の患者に対しても、遠隔診療での医療提供が可能となっている。同時に、パンデミックが収束したあとも、医療インフラの重要な機能が損なわれないようにしている。

 

コロナ禍で余儀なくされた規制の変更は、その多くが一時的なもので、感染が収束すれば元に戻るだろう。しかし、長期的に見れば、その影響は多少残ると予想される。

 

審査プロセスに大きな影響はない

ソーシャルディスタンス確保などの措置が緩和され始めたことを受け、規制当局は業務を通常に戻そうとしている。例えば、英国ではMHRA(医薬品・医療機器規制庁)が9月にも製造施設の立ち入り検査を再開する予定だ。米国でも活動が段階的に再開され、欧州ではIVDR(体外診断用医療機器規則)の適用延期をめぐって反対が続いている。

 

このパンデミックの中、規制当局が患者と医療従事者の安全に配慮しつつ、監督業務を継続するには、一時的な変更が不可欠だ。ただ、感染防止策が進むにつれ、ほとんどの医療機器については、従来通りのプロセスに戻るだろう。

 

 

一方、今後また別のパンデミックが起こった際、規制当局がスムーズに対応できるよう、業界団体は備えを求めている。MedTech Europeは、パンデミックのようにオンサイト監査を実施できない非常時には、バーチャルで実施できるようにしておくことが必要だと強調している。こうした動きに呼応するように、各国の規制当局も、ほかに治療選択肢のない重篤な疾患を対象とした製品については、イノンベーションや市場参入の妨げになるようなプロセスを撤廃しようと取り組んでいる。

 

新型コロナウイルスの収束後、薬事プロセスには大幅な変更が加えられるだろう。▽シナリオの立案と作成▽将来のパンデミック時にも機能する柔軟な仕組みの開発▽重篤な疾患を対象とした製品への規制緩和▽国内サプライチェーンの確保――が焦点となる。

 

遠隔診療の利用拡大

医療機器の審査プロセスには、長期的に大きな影響はほとんどないと考えられる。一方、コロナ禍で遠隔診療の需要と導入が拡大し、プラットフォームプロバイダ間の競争が激化している。また、医療資源の配分の改善や待ち時間の短縮、再診の簡便化など、遠隔診療のメリットに対する意識も高まっている。

 

こうした状況を受け、規制当局も、より明確で長期的な視点に立ったガイドラインや規則の策定・実行を進めるだろう。それによって、遠隔診療の実施方法や対象の概要が示されるだけでなく、保険償還対象の遠隔診療を利用できるケースが増えることにもつながるだろう。

 

 

しかし、遠隔診療が新たなスタンダードとして定着するには、まだ多くの障壁を乗り越えなければならない。EU(欧州連合)など一部の地域では、プライバシー保護に関する法令が厳しいため、患者からプロバイダに健康情報を提供するのも簡単ではなく、安全な情報伝達システムの構築が必要となっている。コロナ後に需要が見込めないと判断すれば、企業側もそうしたインフラに投資しようとは思わないだろう。

 

ドイツの「デジタルヘルスケア法」が定めるような基準を国レベルで実行しなければ、相互運用性の問題が遠隔診療の定着を阻む深刻な課題となる可能性がある。それでも、コロナ禍で脚光を浴びたことで、このサービスが抱える課題にも目が向けられ、結果として世界中で導入が加速するのは間違いない。

 

治験や研究開発の中断は一時的

治験の中断にかかるコストは大きく、開発の一部を無期限延期または中止し、治験を完全に中断する企業もあるかもしれないが、これまでのところ、そうしたケースはあまりなく、ほとんどは一時的な中断となっている。感染拡大の抑制に伴って、移動制限も段階的に解除されており、長期的には多くの治験が通常の体制に戻るだろう。

 

とはいえ、コロナ後に遠隔診療が定着すれば、特に患者報告やモニタリングなど、治験でもこのテクノロジーを活用するシーンが増えると予想される。ただ、結局のところ、治験や研究開発プロセスへの新型コロナウイルスの影響は、さほど大きくはなさそうだ。

 

 

とはいえ、コロナ後に遠隔医療の定着が実現すれば、特に患者の報告やモニタリングなど、治験でもこのテクノロジーを活用することが増えるだろう。ただ結局のところ、治験やR&D(研究開発)のプロセスがCOVID-19から受ける影響はさほど大きくなさそうだ。

 

新型コロナウイルスは当面、メドテック分野の規制当局や医療機関に大きな影響を与え続けるだろう。状況は極めて流動的で、突然変わることもあり得る。感染が続いている国や地域も多く、産業界全体で第2波への警戒を続ける必要がある。

 

(この記事は、DRG発行のレポートの一部を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com

 

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