米国に本社を置くコンサルティング企業DRGのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 最新の調査によると、新型コロナウイルスのパンデミックで、米国では診療や情報収集にデジタルツールを活用する医師が増えているといいます。
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
医師の5人に4人が遠隔診療を経験
7月半ばの時点で、米国の医師の5人に4人が過去3カ月の間にバーチャル診療を行っていた。新型コロナウイルス感染症の影響で、外来診療の半分以上がオンラインに移行している。
遠隔診療が急増したのは、やむを得ない理由からだ。今春、新型コロナウイルスの第1波が襲い、緊急性が低いとされる多くの受診がキャンセルとなった。規制当局はこれを受け、手続きの簡素化や保険償還の見直しなど、遠隔診療を利用しやすくするための措置を講じた。
遠隔医療への移行は緊急的なものだったが、パンデミックが終わったあとも続く可能性が高い。6月と7月に行った調査では、「今後もバーチャル診療を行うつもりだ」と答えた医師が52%と半数を超えた。ただ、5人に3人(58%)は、遠隔で提供できる医療の質に不安を持っていると回答している。
製薬企業担当者との対面交流は激減
リモートディテーリングの経験がある医師の割合は、長年ほぼ変化が見られなかったが、新型コロナウイルスの影響で急増した。製薬企業担当者との連絡手段はメールが44%で、電話の36%を上回っている(今年夏時点)。一方、製薬企業担当者とはこれまで通り直接面談するのが好ましいと答えた医師は、わずか4人に1人にとどまった。
医師同士のコミュニケーションにも同じ傾向がみられる。パンデミックの間、ほかの医師との連絡手段として好ましいのはメールだと答えた医師は、5人に2人で最も多かった。
専用SNSで情報収集
新型コロナウイルスの影響で直接的な交流が制限された結果、利用頻度が増えた情報源について聞いたところ、52%の医師が「医師専用のソーシャルネットワーク」を挙げた(今年6月と7月の調査)。
ソーシャルネットワークへの移行は、今春の時点ですでに見られていた。多様なオンラインツールを中心に、デジタルリソースを利用する医師が増えている。
注目すべきは、ソーシャルネットワークの利用と、それを介した同僚とのオンラインコミュニケーションだ。1カ月あたりの利用は、それぞれ17ポイント増の81%、15ポイント増の70%と大きく増えている。
これは、主に医師専用のソーシャルネットワークによるもので、その月間利用率は77%と前年の58%から急激に増加した。医療従事者向けの一般のソーシャルネットワークの利用も増えているが、こちらは40%から49%と医師ほどの伸びではない。
65%の医師は、一般のソーシャルネットワークよりも医師専用のほうが信頼できると回答。58%の医師は、プラットフォーム上で症例情報を共有できるという理由で医師専用サイトを好んでいる。
従来、同僚は医師にとって最高の臨床情報源だった。こうしたデータは、同僚との情報供給がパンデミックによってオンラインに移行したことを示している。
(原文公開日:2020年9月2日)
(この記事は、DRGのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)
【記事に関する問い合わせ先】
DRG(クラリベイト・ジャパン・アナリティクス株式会社)
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:Hayato.noji@clarivate.com