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アデュカヌマブはアルツハイマー病の歴史を変えるのか|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。米バイオジェンが、米FDAに申請したアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブ。疾患修飾薬として初の承認にこぎつけられるのか、注目が集まります。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

見方に変化

ロシュがクレネズマブの臨床試験を打ち切ったわずか2カ月後、2019年3月にバイオジェンとエーザイが無益性解析の結果を受けてアデュカヌマブの臨床第3相(P3)試験を中止したとき、われわれはアルツハイマー病における抗アミロイドβ(Aβ)薬の開発は幕を閉じるのかと懸念した。そのため、発表からほどなく、Decision Resources Groupは臨床開発の後期段階にあったすべての抗Aβ薬を市場予測から外した。

 

その時点では、アルツハイマー病に対する新薬は、前駆症状のある患者への一次予防が最後にして最大の望みだと考えていた。ところが、バイオジェンとエーザイは2019年10月、EMERGE試験のデータを再解析した結果、高用量投与群で有効性が示されたとして承認申請を行うという驚くべき発表を行った。それから何カ月もの間、われわれはアップサイドケースとして抗Aβ薬の発売をシミュレーションしてきた。

 

われわれは、アデュカヌマブの試験データに対する感想や薬剤の臨床プロファイルに関する意見を聞くため、何人かのキーオピニオンリーダー(KOL)と議論した。データや分析結果に依然として疑問を呈するKOLがいるのも無理はないが、2019年に強い失望を味わった専門家が、今年になって楽観的ではないにせよ確信を深めていることがわかり、考え方の変化が見てとれた。

 

 

「このデータは、アデュカヌマブの明確な臨床効果を示したという意味で説得力がある。これは誤った結果だとは思わない。バイオマーカーに関しては、最も顕著な結果が出ていると考えられる。これほどのものは、これまで見たことがない」(米国の神経科医)

 

「アミロイド関連画像異常(ARIA)については、これまでほど懸念があるとは思わない。ARIAを合併したアポリポプロテインE4遺伝子タイプ4(ApoE4)陽性患者は懸念があるかもしれないが、これが抑制要因であるとは思っていない」(米国の神経科医)

 

「FDA(米国食品医薬品局)がアデュカヌマブを承認することを期待している」(米国の神経科医)

 

FDA判断は来年3月

処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)に基づくアデュカヌマブの審査終了目標日は2021年3月7日に設定された。過去17年間、新薬が登場しておらず、アンメットニーズの極めて高いこの疾患にとって、この日は重大な分岐点となる。

 

多くの識者は、アデュカヌマブが承認される可能性を「コイン投げのようなもの」と述べているが、それも無理ははい。申請書の提出は非常に複雑で、前例がないからだ。諮問委員会の質疑では、アデュカヌマブの有効性が十分証明されているか、ベネフィットがリスクを上回るか、という2点に集中するだろう。活発な議論が行われることになりそうだ。

 

 

FDAの最終判断と諮問委の勧告が相違することはあまりないが、そうした場合、当局は規制を強める傾向がある。両者の相違は、諮問委の委員間で意見が一致しなかった場合に起こることが多く、アデュカヌマブも意見が割れるであろうことは想像できる。データによると、諮問委が承認反対したケースでもFDAは20%を承認している。票が割れた場合、承認率は60%だ。

 

現時点では、「ENGAGE」「EMERGE」「PRIME」の3つの試験で得られたエビデンスが全体として承認を後押しする可能性が高いと考えられる。アデュカヌマブの生物活性は明らかで、高用量の投与で有効性を得られる可能性があるようだ。ARIAについては深刻で重大な懸念があるが、適切なモニタリングで対処できる可能性が高い。長期的な安全性試験はすでに進行中だ。

 

当局が▽データと申請についてバイオジェンに継続的に関与していること▽追加試験を必要とせず評価しようとしていること▽優先審査を迅速に適用したこと▽申請に対して「迅速に対応する」との意向を示したこと――も、楽観的な見方の根拠となっている。アデュカヌマブの強力なバイオマーカーデータやアルツハイマー病の重篤度、極めて高いアンメットニーズを考えると、有効性を確認する試験を求めながら迅速に承認する道は、依然として選択肢にある。

 

 

100億ドル市場へ

Decision Resources Groupは今年10月に、2019~2029年のアルツハイマー病市場の予測を更新して発表することにしている。そこでは、2021年初頭の予測として3つの抗Aβ抗体(アデュカヌマブ、エーザイとバイオジェンのBAN2401、ロシュのガンテネルマブ)を再び加える予定だ。

 

市場浸透にはさまざまな障壁があり(例えば、コスト、保険償還範囲、適格基準、バイオマーカーテスト)、売り上げ予測は控えめに設定した。それでもこのクラスの新薬は、アップサイドケースで2028年までに売上高が100億ドルを超えるとの予測の予測が出ている。ただし、使用拡大の速さや規模、診断と薬物治療率の変化、価格設定、販売地域などについて仮設を立てるのは難しく、妥当と思われるシナリオは多数ある。

 

アデュカヌマブの商業的な影響は別として、最も重要なのは、アルツハイマー病が個人と社会に及ぼす影響が極めて大きいという事実だ。どの薬剤であれ、初めて疾患修飾薬が登場したあかつきには、この深刻な病と闘う世界中の何百万人という患者と家族の一部にでも、真の治療効果が届くことを願ってやまない。

 

(原文公開日:2020年8月21日)

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:hnoji@teamdrg.com

 

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AnswersNews編集部が製薬企業をレポート

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