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ニュース解説

新型コロナワクチン、製薬企業にのしかかるプレッシャー

更新日

ロイター通信

8月11日、米国政府とのワクチン供給契約を発表したモデルナ(ロイター)

 

[ニューヨーク ロイター]米国政府は、新型コロナウイルスワクチンへの支払いを製造や承認のマイルストンと結びつけ、モデルナなどのワクチンメーカーに野心的とも言える早期供給の目標を達成するようプレッシャーをかけている。

 

マイルストン達成が支払いの条件に

8月11日に発表された米国政府とモデルナの合意では、連邦政府機関が支払いのスライディングスケールについて交渉した。15億ドルに及ぶ今回の取引は、同社のワクチンが2021年1月31日までに規制当局の承認を受けた場合、全額が支払われる。一方、この目標を達成できなかった場合、モデルナには12億ドルしか支払われない。

 

また、規制当局の承認が下りる前であっても、工業規模の製造能力を構築したことを証明できた場合には、前倒しで6億ドルを受け取ることができる。

 

トランプ政権高官がロイターに語ったところによると、米政府はほかの製薬企業に対しても、秋口までに臨床試験を開始し、年末までに製造体制を確立することを支払いの条件にしている。

 

この取引条件は、製薬企業の財務リスクを増大させ、公衆衛生を擁護する一部の人々が懸念している「スピード」への圧力を強めている。HHS(米保健福祉省)とモデルナはコメントに応じず、ほかの製薬企業もコメントを避けた。

 

承認された場合のみ支払い

製薬企業は米国政府との具体的な契約条件を明らかにしていないが、ファイザーはビオンテックと共同開発しているワクチンの契約について、規制当局の承認が得られた場合にのみ支払いが行われると述べている。

 

米国政府は、▽ジョンソン・エンド・ジョンソン▽ファイザー/ビオンテック▽モデルナ▽サノフィ/グラクソ・スミスクライン――と供給契約を結んでいる。さらには、アストラゼネカとは研究開発資金の提供と引き換えに3億回分を、ノババックスとは製造体制強化への資金提供と引き換えに1億回分を調達する契約を締結した。

 

米国政府と製薬企業の合意では、ワクチンは1人あたり20~42ドルの価格設定となっている。アナリストによると、製薬企業はワクチン開発に投資した数十億ドルを回収するのに苦労する可能性があるという。

 

行政当局者は、米国政府のワクチン開発プログラム「ワープ・スピード作戦」から年内にもワクチンが供給されると期待している。ドナルド・トランプ大統領は、11月3日の大統領選までにワクチンが入手できるようになる可能性があるとの見通しを示している。

 

間に合うか疑問

規制当局の承認を得るには、ワクチンを接種していない人との比較で新型コロナウイルスへの感染を50%減少させるとともに、高いレベルの安全性を実証する必要がある。

 

専門家によると、何万人もの被験者を登録し、新型コロナウイルスに感染するのを待たなければならない現在の臨床試験では、結果が得られるのが2021年半ばまで遅れる可能性があるといい、トランプ政権が設定したスケジュールに間に合うかどうか疑問を呈している。

 

今年1月にワクチンの開発を公表して以来、モデルナの株価は3倍以上になった。モデルナはこれまで、規制当局から承認されたワクチンを製造したことがない。米国政府から満額の支払いを受けた場合、モデルナのワクチンは1人あたり30.50ドルとなる計算だが、来年1月31日までに承認が得られなければ、これは24.50ドルまで減少する可能性がある。

 

米国はワープ・スピード作戦を通じ、新型コロナウイルスワクチンが規制当局に承認される前から、供給契約を結ぶために90億ドル以上の予算を確保している。

 

(Carl O’Donnell、翻訳:AnswersNews)

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