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ニュース解説

新型コロナウイルス 抗体の急速な低下、ワクチン開発の課題に

更新日

ロイター通信

急ピッチで開発が進む新型コロナウイルスワクチン(ロイター)

 

[ロンドン ロイター]新型コロナウイルスに対する免疫防御は長続きしない可能性があるという新たな研究結果が発表された。専門家からは、将来の感染に備えて人々を完全に保護するワクチンを開発するのはさらに難しくなったとの見方が出ている。

 

中国、ドイツ、英国などで行われた予備的な研究では、新型コロナウイルスに感染した患者は免疫システムによる防御の一部として抗体をつくることがわかったが、これは数カ月しか持続しないようだ。

 

「新型コロナウイルスに感染したほとんどの人は抗体を作るが、これは急速に衰えていくことが多く、感染後数カ月で免疫がほとんどなくなることを示唆している」と、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのダニエル・アルトマン教授(免疫学)は述べている。

 

このことは、新型コロナウイルスワクチンの開発者と、将来のパンデミックから人々を守るためにワクチンを展開しようとしている公衆衛生当局にとって、大きな問題を提起していると専門家は言う。

 

英リーズ大医学部のスティーブン・グリフィン准教授は「(パンデミックをコントロールするために)ワクチンに過度に依存するのは賢明ではないということだ」と話す。ワクチンが真に効果を発揮するには「より強力で持続的な防御をもたらす必要があるだろう。あるいは、ワクチンを定期的に投与することも必要になるかもしれない。このことは、決して些細なことではない」と言う。

 

現在、世界で100を超える研究機関や企業が新型コロナウイルスに対するワクチンの開発を目指しており、少なくとも17のワクチンがすでにヒトでの有効性を検証するための試験に入っている。

 

「AZD1222」として知られる英アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンは、豚を使った前臨床試験で、1回投与よりも2回投与のほうが高い抗体反応が得られることが示された。しかし、ヒトでの試験では今のところ、免疫応答が十分に強力で、かつ長期間持続することを示すデータはない。

 

ブースターショット

英オックスフォード大の微生物学の客員教授で、以前は仏サノフィパスツールに勤務していたジェフリー・アーノルド氏は、データが不足している理由の1つは単に時間の問題だと述べている。新型コロナウイルスワクチンの開発はかなりのスピードで進められており、開発が始まってからまだ6カ月も経っていない。これは、ワクチンの効果の持続性を検証するのに十分な長さではない。

 

アーノルド氏やほかのワクチン・免疫学の専門家は、新型コロナウイルスに自然に感染した人で免疫が衰えることが、必ずしもワクチンによる免疫応答と同じとは限らないと指摘する。「ワクチンはもちろん、ウイルスに直接感染するわけではない。ワクチンの理想的な目標は、自然に感染するよりも強力な免疫応答を引き出すことだ」とアーノルド氏は話す。

 

グリフィン氏は、使用可能なワクチンが開発された場合の1つのアプローチとして、定期的にブースター注射を行うことや、2つ以上のタイプのワクチンを組み合わせて接種することを、当局は考慮する必要があると言う。

 

ただし、実際には大きな課題がある。「世界中の人々に1回分のワクチンを接種するのと、複数回分のワクチンを接種するのは、全く別のことだ」とグリフィン氏は語った。

 

(Kate Kelland、翻訳:AnswersNews)

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