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規制当局と償還機関、臨床試験データの評価でそれぞれが注目するポイント|DRG海外レポート

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 米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。規制当局と償還機関は、臨床試験データの何を評価し、それぞれ注目するポイントに違いはあるのか。欧州で承認された急性骨髄性白血病治療薬を例に分析しました。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです)

 

背景と調査の方法

EU(欧州連合)加盟国で抗がん剤の販売しようとする場合、欧州医薬品庁(EMA)による規制プロセス通じて販売承認を得るのが一般的だ。一方で、償還に関する意思決定は各加盟国が個別に行い、自国の医療システムに照らして医薬品の潜在的役割と使用法を検討する。その結果、目的が「規制」なのか「償還」なのかによって、検討に用いるデータが違ってくる可能性がある。

 

この記事では、急性骨髄性白血病を例に、規制当局と各国の償還機関が意思決定に用いた臨床試験が同じであったかどうかを調べ、規制当局による販売承認と償還機関による医療技術評価(HTA)の間に存在する違いを検討した。

 

こうした検討によって、製薬企業は、EU全域でエビデンスの提示を戦略的かつ効果的に行うことができる。

 

急性骨髄性白血病治療薬として承認された薬剤について、EMAによる規制承認事項と、欧州5カ国(フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国)のHTAに関する報告書を調査し、検討に用いられた臨床試験を特定した。調査で対象とした薬剤はすべて、EU全域を一元管理する手続きによって承認されたものである。

 

【規制当局とHTA機関の間の一致と不一致】(n=22): 規制当局とHTA機関の両方が用いた試験/59% |規制当局だけが用いた試験/18% |HTA機関だけが用いた試験/23%

 

製薬企業や患者への影響

規制当局とHTA機関が意思決定に用いる試験を一致させることができれば、販売承認までの機関が短縮され、迅速な市場アクセスが可能となる。コストの高い試験を、目的別、審査者別にいくつも計画する無駄を削減することにもなる。試験の使われ方の違いが明確になれば、戦略的なエビデンス構築につながる可能性もある。

 

われわれの分析では、全生存期間と臨床応答が主要なエンドポイントとして規制当局とHTA機関の両方から評価され、治療薬が生存に及ぼす影響が重要視されていることが明らかになった。双方の審査者はこうした指標を用いる点で一致しており、規制当局とHTAの分析の共通性が示された。一方、共通性がみられない場合、その差は、対象集団や試験デザインといった因子によるところが大きかった。

 

患者にとっては、実施する試験の数が少なくて済むなら、新薬に迅速にアクセスできるようになる。

 

【規制当局とHTA機関が評価に用いた主要アウトカム項目】: 全生存期間/11 |完全寛解・臨床応答/10 |無イベント生存期間/4 |無病生存期間/2 |再発率/1 |寛解不能/1

 

全生存期間は、規制当局とHTA機関の両方で最も頻度高く評価された主要評価項目であり、臨床的率・臨床応答がこれに次いだ。一方、寛解不能と最年率は、規制当局とHTAの双方で最も頻度の低い主要評価項目だった。

 

疑問と回答

EMAに参照された試験がHTA機関には参照されなかった場合、その違いが生じる理由は何か?

母集団の違い(小児対象の試験)、試験デザインの違い(非無作為化試験、探索的用量設定試験)、または対応するプロトコルの拡大などが原因と考えられる。

 

HTA機関に参照された試験がEMAには参照されなかった場合、その違いが生じる理由は何か?

試験デザイン(研究者主導の試験はバイアスを生んだ可能性がある)、エビデンスの補強としての試験使用、患者のサブグループの違い、EMAの承認を下回る用量で評価したことが原因と考えられる。

 

国によってHTA機関による試験の扱い方にばらつきはあったか?

われわれの分析では、そのようなばらつきは認められなかった。

 

実践に向けて

規制当局と償還機関が検討対象としてエビデンス全体に大きなばらつきが認められた。試験の扱い方の違いが明確になれば、製薬企業は試験と関係書類提出の計画が立てやすくなるだろう。その結果、規制当局とHTA機関への資料提出が堅固なものとなり、時間も短縮できる。規制当局とHTA機関の要件を満たすべく製薬企業が円滑に対応すれば、販売承認も市場アクセスも迅速に進められるだろう。

 

規制と償還の両機関が意思決定に向けたエビデンスにもとめているものを理解することで、製薬企業は実践的なエビデンス構築の戦略を立てることができる。それが、革新的新薬への迅速な患者アクセスにもつながる。

 

販売承認とHTAのレビューは、臨床試験データを検討して医薬品の有効性と安全性を確認する別個のプロセスだ。製薬企業がみずら試験をデザインし、規制当局の承認と市場参入に向けた関係書類を提出するには、両方のプロセスを理解することが極めて重要だ。

 

規制当局とHTA機関は連携を強化している。ここで述べてきた戦略を実践することで、重要な新薬への患者アクセスが促進され、ひいては公衆衛生全般の利益になるだろう。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:hnoji@teamdrg.com

 

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