新型コロナウイルスワクチンを開発している中国企業の一つ、カンシノ・バイオロジクス(ロイター)
[ソウル/シンガポール ロイター]中国は、COVID-19パンデミックを制御するワクチンの開発を進めている。シノバック・バイオテックのワクチン候補は7月下旬に最終段階の試験に入る予定では、中国では2番手、世界でも3番手となる。
中国はワクチン産業で世界から後れをとっている。しかし、新型コロナウイルスの発生源と考えられるこの国では、全世界で50万人以上を死に至らしめたCOVID-19と闘うため、国と軍、民間が一丸となってワクチン開発に取り組んでいる。
米国を含む多くの国が、民間と緊密に連携してワクチン開発競争に勝利しようとしているが、中国は多くの課題に直面している。
COVID-19の感染拡大を抑制することに成功した中国では、大規模なワクチンの臨床試験を行うのが難しくなっている上、中国の臨床試験に協力することに同意した国は今のところ数カ国にとどまっている。北京はまた、過去のワクチンスキャンダルを踏まえ、安全性と品質に関するすべての要件を満たしていることを世界に示し、納得させなければならない。
しかし、中国のコマンドエコノミー型のツールの使用は、これまでのところ結果をもたらしている。
例えば、ある国有企業は2つのワクチン工場を数カ月という「戦時下のスピード」で完成させ、国有企業や軍部は実験用の注射剤を職員に使用させている。
中国の感染症対策の原動力となった人民解放軍の医学研究部門もまた、カンシノなどの民間企業と協力し、COVID-19ワクチンの開発に取り組んでいる。
欧米の伝統的な優位性に反し、中国は世界で臨床試験入りした19のワクチン候補のうち8つを開発。このうち、シノバックのワクチン候補や軍とカンシノが共同開発したワクチン候補が先行している。
中国はまた、インフルエンザや麻疹といった病気に対するワクチンに使われてきた不活化ワクチン技術にも力を入れており、成功の可能性を高めている。対照的に、欧米のライバル企業である米モデルナや独キュアバック、同ビオンテックなどは、これまで規制当局によって承認されたことがないメッセンジャーRNAを使ったワクチンを開発している。
試された真実
フィラデルフィア小児病院のワクチン教育センター長であるポール・オフィット氏は、不活化ワクチン技術について「安全で効果的である可能性が最も高いワクチンを選ぶとすれば、不活化ワクチンが一番だろう」と話す。オフィット氏は、米メルクのロタウイルスワクチン「ロタテック」の共同開発者でもある。
臨床試験が行われている中国のワクチン候補のうち、4つが不活化ワクチンで、ここにはシノバックのワクチン候補や、国有の中国国家医薬集団(シノファーマ)の一部門である中国国家生物技術集団(CNBG)の2つのワクチン候補が含まれる。
現在、最終段階の臨床第3相(P3)試験が行われているワクチン候補は2つ。シノファーマのものと、英アストラゼネカと同オックスフォード大のものだ。シノバックのワクチン候補は、今月下旬に3番手としてP3試験に入る見込みだ。
このプロセスを迅速化するため、中国当局は、シノファーマとシノバックにワクチン候補のP1試験とP2試験を組み合わせることを許可した。
カンシノの実験用ワクチンには人民解放軍の研究所が重要な役割を果たしており、アデノウイルスを用いた方法を開発している。軍は独自の「軍事上、特に必要とされる医薬品」の承認プロセスを持っており、先月、軍の研究部門とカンシノが開発したワクチン候補の軍事使用を承認した。
国営メディアによると、人民解放軍のワクチン開発の顔として活躍してきた陳偉主任科学者は、彼女のチームが開発したCOVID-19ワクチン候補を初めて打った一人であり、数年前にはSARSの潜在的治療薬も同様に服用していたという。
課題は
ただ、中国には課題も多い。流行は沈静化しており、大規模な試験を行うのは難しくなった。
中国は海外に焦点を移しているが、協力する意思を示しているのはUAE(アラブ首長国連邦)、カナダ、ブラジル、インドネシア、メキシコとほんの一握りだ。欧州の主要国も米国も、中国のCOVID-19ワクチンには関心を示しておらず、自国のプロジェクトに集中している。
加えて、品質への懸念も払拭しなければならない。中国では近年、品質と安全性の基準を下回るワクチンが出荷され、問題となった。国連開発計画のイニシアチブとして設立された非営利機関「国際ワクチン研究所」のジェローム・キム所長は「中国の規制当局はワクチン製造への監督を改善している」と話す。
中国は昨年、ワクチン産業を規制する新たな法律を制定した。偽物や低品質のワクチンを販売したり製造したりした場合、ほかの医薬品よりも重い罰則が科される。
(Sangmi Cha / Miyoung Kim、翻訳:AnswersNews)