日本の医薬品市場の過去5年の年平均成長率が初めてマイナスに転じたことが米IQVIAのレポートで明らかになりました。マイナス成長は、先進10カ国に中国など主要な新興4カ国を加えた14カ国の中で日本だけ。向こう5年の年平均成長率も、14カ国中唯一マイナス成長が予想されています。
14~19年 日本市場は年平均マイナス0.2%
米国の調査会社IQVIAが発表した最新の医薬品市場予測レポート「Global Medicine Spending and Usage Trends OUTLOOK TO 2024」によると、2019年の日本の医薬品市場は870億ドル。14~19年の過去5年の成長率は年平均マイナス0.2%で、先進10カ国に中国、ブラジル、インド、ロシアを加えた14カ国で唯一のマイナス成長となりました。IQVIAのレポートで日本の5年成長率がマイナスとなるのは初めてです。
世界市場は19年に1兆2504億ドルに達し、過去5年間で年平均4.7%拡大。最大市場の米国は5103億ドルで年平均4.3%増加しました。日本に次ぐ低成長となったフランスの年平均成長率は1.2%で、それ以外の先進国は3~7%台の成長率でした。
レポートは日本市場がマイナス成長となった要因には言及していませんが、薬価の引き下げや後発医薬品の使用拡大などが背景にあると考えられます。昨年のレポートでは、日本市場について「2年に1回の薬価引き下げシステムにより、成長率はほかの先進国市場よりも一貫して低くなっている」と指摘しており、こうした傾向に変化は見られません。
日本市場の低成長は、向こう5年間も続く見通しです。IQVIAは、20~24年の日本市場の成長率を年平均マイナス3%~0%と予測。マイナス成長となる可能性があるのは14カ国のうち日本だけです。昨年のレポートで19~23年の成長率をマイナス1%~2%とされたフランスも、20~24年の予測は0~3%に引き上げられました。
世界3位は維持
世界市場は20~24年にかけて年平均3~6%成長し、24年には最大1兆6000ドルに達する見通し。米国は3~6%と引き続き高い成長が予測されており、欧州5カ国も3~6%の成長が見込まれています。成長を支えるのはスペシャリティ領域の医薬品で、24年には世界市場の40%を占めると予測。先進国ではスペシャリティ医薬品が市場の半分以上(52%)を占めるようになると見られています。
日本市場は24年も、米国、中国に次ぐ世界3位をキープする見通しですが、米国と比較した相対的な規模は大きく縮小します。米国市場を100として各国市場を指数化すると、日本は19年の16.9から24年には13.2へと低下。中国は27.9から29.7に拡大し、日本の倍以上の規模となる見込みです。
新興国の市場拡大は鈍化していますが、それでも引き続き先進国を上回る成長が見込まれています。24年にはブラジルがフランスやイタリアを抜いて世界5位の市場となる見通しで、インドは上位10カ国に、エジプトは上位20カ国に入る予想です。
(前田雄樹)