米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。 新型コロナウイルス感染症の影響で、米国では遠隔診療を利用する医師が急増しています。
(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
専門医で際立つ利用率
Decision Resources Groupの「Taking the Pulse」のデータによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策としてソーシャルディスタンスの確保が求められて以降、米国で遠隔診療を導入する医師が急増している。
3月初旬から4月中旬にかけて調査した医師の21%が、この12カ月の間にバーチャルで診療したことがあると答えた。2019年は9%にとどまっていたが、COVID-19の影響をとらえて急激に上昇した。
この変化は、一部の専門医で際立っている。遠隔診療を行っていると答えたリウマチ専門医は1年前の25%から46%に増加。腫瘍内科医も同様に、わずか7%だった2019年から48%まで増えた。
規制緩和が利用促進
トランプ政権は3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大防止のために多くの措置を講じ、遠隔診療の規制を撤廃するとともに、償還政策を緩和している。ウイルスへの曝露を抑えつつトリアージを行う上で理にかなった施策だ。パンデミック前は導入が進まなかったテクノロジーが、ここにきて息を吹き返している。
5年前、遠隔診療が新たなテクノロジーとして有望視されていたころ、米国では医師の47%が関心を示し、13%はすでに行ったことがあると答えていた。
しかしその後、各州が設けた規制によって償還が制限され、遠隔診療の将来に対する期待はしぼんだ。これといった遠隔診療のプラットフォームがないことも手伝って、医師の関心は目に見えて減退している。
医師が好むのは現場組み込み型のプラットフォーム
遠隔診療の導入が停滞していた一因は、おそらく米国の医療システムが細分化していることにある。細分化しているがゆえ、バーチャル診療を患者に直接提供する、あるいは医療提供者と共同で提供する全国規模の会社から、薬局や病院、保険業者が直接運営するシステムまで、多くの遠隔診療プラットフォームが生まれている。
しかし、医師らは、DTC型のサービスや薬局などの外部組織が提供するサービスよりも、自らの施設が実施する、あるいは自らの施設と協力して運営する方式を圧倒的に望んでいる。
タイプの異なる遠隔診療サービスプロバイダーが数多く存在し、ごく最近まで限られた利用にとどまっていたことを考えると、3月中旬にはその多くが急増した需要に対応しきれなくなっていたと言われても、驚くには当たらないだろう。
高齢患者で利用拡大か
これまでは、遠隔診療を利用するのはもっぱら若者だった。2019年の調査では、34歳以下では3人に1人が遠隔診療を利用していたが、65歳以上ではわずか1%にとどまっている。
新型コロナウイルス感染症は高齢者が特に深刻な危険にさらされ、中国のある研究によると80歳以上の患者の死亡率は15%近くに達する。リスクの高い高齢者が感染を防止する目的で遠隔診療を選ぶようになれば、世代ごとの利用率はあっという間に逆転するかもしれない。
遺伝子検査サービスを提供する米国企業「23andMe」のアン・ウォイッキCEOが先月ツイッターに投稿したように、目下の危機で「デジタルケアの導入曲線が変化する」のは間違いない。デデジタルヘルスインフラの強化が難局への対応を可能にするとともに、デジタルケアそのもののも普及していくと期待される。
この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。
本記事の元となっているTaking the Pulseレポートでは、日本を含む世界29か国において25の専門領域、6000人以上の医師を対象にマルチチャンネル活動についてのサーベイを実施しています。またCybercitizen Healthレポートでは、日本を含む9か国において50以上の疾患領域、1万人以上の医師に情報検索行動に関するサーベイを行っています。詳しくは以下よりお問い合わせください。
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