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2020年以降、多発性骨髄腫の治療を変える新薬候補|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、BCMAを標的とした抗体医薬や細胞療法の開発が活発な多発性骨髄腫治療を取り上げます。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

BCMAを標的とする治療の台頭

イノベーションの加速によって、がん患者の治療選択肢は広がっている。反面、治療をどう組み立てるのが最善なのか、といった治療選択と意思決定は、医師にとって厄介なものとなった。

 

多発性骨髄腫のように、頻繁な再発や再燃を特徴とする疾患でも状況は同じだ。とはいえ、多発性骨髄腫治療薬は開発競争が激しく、将来、治療の選択肢となるであろう新薬候補がひしめいている。中でも、特に際立つ2、3の新しい治療法が、2020年以降の治療に変革をもたらし、現状を打破することになるかもしれない。

 

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注目されるのは、B細胞成熟抗原(BCMA)を標的とした治療法だ。BCMAはがん化した形質細胞に多く発現する一方、正常細胞での発現は少なく、多発性骨髄腫の治療標的として精力的に研究開発が進められている。目指すのは、BCMAの機能を遮断する、斬新かつ革新的なアプローチで、基本的には細胞療法や抗体医薬が用いられる。

 

抗体を使った新たなアプローチ

モノクローナル抗体

従来のモノクローナル抗体よりも強力な抗体依存性細胞傷害性を誘発し得る非フコシル化モノクローナル抗体が開発戦略の1つとなっている(シアトルジェネティクスの「SEA-BCMA」など)。

 

抗体薬物複合体(ADC)

ADCは、腫瘍細胞を標的として細胞傷害性ペイロードを送達することにより、正常細胞への影響を最小化しながら抗腫瘍効果を発揮する。

 

多発性骨髄腫治療薬として開発の最先端を行っている抗BCMA ADCは、グラクソ・スミスクラインの「belantamab mafodotin(GSK2857916)」だ。同薬は、前治療歴の長い患者を対象とした極めて重要な「DREAMM-2試験」で、臨床的に有意義な全奏効率(ORR)の改善を示し(31%)、今年1月に米FDA(食品医薬品局)から優先審査をとりつけた。今後、BCMAを標的とするCAR-T細胞療法との熾烈な競争が予想される。

 

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二重特異性T細胞抗体

抗原結合部位の片方がBCMAを、もう片方が細胞傷害性T細胞(CTL)上のCD3を標的とする。主なものとしては、アムジェンの「BiTE AMG-420」や、ブリストル・マイヤーズスクイブの「CC-93269」がある。

 

三重特異性抗体

T細胞受容体を同時に刺激することで、治療効果を高められる可能性がある。ハープーン・セラピューティクスとアッヴィは、三重特異性T細胞活性化構築物(TriTAC)の「HPN-217」を開発中だ。HPN-217は、抗CD3 ScFvと、BCMAとアルブミンのそれぞれを標的とする2つのシングルドメイン抗体を組み合わせた遺伝子組換え融合タンパク質である。

 

BCMAを標的とした細胞療法

ほかの造血器腫瘍に対する抗CD19 CAR-T細胞療法の成功を受け、多くの企業がBCMAを標的とした細胞療法の開発に取り組んでいる。

 

CAR-T細胞療法

この治療法の開発では、ブリストルとブルーバード・バイオの「idecabtagene vicleucel(ide-cel、bb2121)」が先行し、僅差でヤンセンとレジェンド・バイオテックの「JNJ-4528/LCAR-B38M」が続いている。

 

ide-celは今年3月、臨床第2相(P2)試験「KarMMa試験」の結果に基づいてFDAに承認申請を行った。試験の結果は目覚ましく、OORは73.4%だった。4次以降の治療では、BCMAを標的としたADCである「belantamab mafodotin」(グラクソ・スミスクライン)と激しい競争を繰り広げることになるだろう。ADCは細胞製品に比べて製造も投与もしやすいので、ide-celよりも大きなシェアを獲得すると予想される。

 

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二重特異性CAR-T細胞療法

一部の企業では、標的特異性をさらに高めるため、次世代の二重特性CAR-T細胞療法の開発に取り組んでいる。例えば、BCMAとTACI(膜貫通型活性化因子、カルシウム調節因子、シクロフィリンリガンドの相互作用因子)を標的としたオートラスの「AUTO2」や、グレイセル・バイオテクノロジーズのCAR-T細胞がある。

 

CAR-NK細胞療法

CAR-NK細胞療法のような斬新な方法を用いた汎用型細胞療法も、実現の可能性が模索されている(アスクレピオス・テクノロジーの「BCMA CAR-NK 92」や、セルラリティの「PNK-007」など)。アスクレピオスの他家細胞由来CAR-NK細胞は、ヒトナチュラルキラー細胞株NK-92の誘導体である。自家細胞由来のCAR-T細胞療法とは異なり、利用しやすい。

 

ダラザレックスは今後も治療に変革をもたらす

抗CD38抗体「ダラザレックス」は、再発・難治性の多発性骨髄腫に対する単剤療法として2015年に承認されて以来、進歩の著しいこの領域でいくつもの適応拡大を成功させている。ダラザレックス主体の併用レジメンも、今ではすっかり再発・・難治性多発性骨髄腫の治療として定着した。

 

ダラザレックスは、P3試験「CANDOR試験」の肯定的なデータを背景に、さらなる適応拡大が確実視されている。ジェンマブとヤンセンは今年2月、DKdレジメン(ダラザレックス、カイプロリス、デキサメタゾンの3剤併用療法)の一角としてFDAに承認申請を行った。

 

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ダラザレックスは、米国で移植適応の有無を問わず、未治療患者を対象とした主要な併用レジメンに含まれる形でも承認を受けており、ファーストラインでの使用が承認された初めての抗体医薬である。

 

Decision Resources Groupは、向こう10年で、ダラザレックス主体のレジメンが、収益性の高いファーストラインで重要な標準治療になると予測している。今後予想される、くすぶり型多発性骨髄腫での承認、より簡便な皮下投与製剤の投入、維持療法としての使用も、ダラザレックスのシェア獲得と収益拡大の後押しとなるだろう。

 

市場の展望は

多発性骨髄腫に対する新規薬剤の処方と導入は、臨床での有効性と安全性、治療コスト、患者アクセスといった、いくつもの要因に左右されることになる。コストの問題は患者アクセスを低下させかねず、米国では民間保険やメディケアの対象になるかどうかによって薬剤の使用状況は変わってくる。

 

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今後10年で、ダラザレックス主体のレジメンがどの治療段階でも優勢となり、初期の治療では重要な標準治療になるだろう。BCMAを標的とするアプローチ(CAR-T細胞療法やADC)は、上に挙げたような潜在的な障壁が存在する上、患者の少ない後期の治療にかなり制限されるため、2028年までに達成できる売り上げは市場全体の5%程度にとどまると予想される。

 

それでも、期待通りに割り増し価格が設定されれば、この薬剤クラスの売り上げはかなりの数字になるはずだ。新規の治療法は、すでに3つ以上の治療を受けて治療選択肢が限られる患者(特にダラザレックスで効果不十分な患者)の重大なアンメットニーズに対応することになるだろう。

 

(原文公開日:2020年4月28日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:hnoji@teamdrg.com
Tel:03-6625-5257(代表)

 

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