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働き方変わる?「新型コロナウイルスで訪問自粛」MRの本音【匿名座談会】

更新日

新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関への訪問自粛が続くMR。対面での情報提供がかなわない中、MRたちはどんな活動をし、働き方や役割の変化についてどう思っているのか。6人のMRに話を聞きました。(4月21~22日に実施した個別の取材をもとに座談会形式で構成しました)

【参加者プロフィール】
Aさん…30代前半/MR歴8年/内資系中堅メーカー
Bさん…30代後半/MR歴10年/外資系メーカー
Cさん…30代前半/MR歴8年/内資系大手メーカー
Dさん…20代後半/MR歴2年/内資系中堅メーカー
Eさん…30代前半/MR歴8年/外資系メーカー
Fさん…20代後半/MR歴5年/外資系メーカー

 

Web面談やメールを活用

――新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、製薬企業ではMRによる医療機関への訪問を自粛する動きが続いています。皆さんの現在の状況を教えて下さい。

Aさん:3月頭から医療機関への訪問は自粛となっています。緊急事態宣言が出る前は、先方から要望があった場合は訪問していましたが、宣言後は原則として禁止。やむを得ず訪問する場合には部長の決済が必要です。

 

Bさん:弊社も3月頭に「不要不急の訪問は控えるように」との指示があり、アポイントのみの対応となっていましたが、緊急事態宣言後はそれも基本的には断るという形に変更になりました。訪問には部長級への承認が必要で、ハードルはかなり上がったという状況です。

 

Cさん:2月後半から「得意先のニーズに応じて訪問活動を行う」という指示があり、診療所には訪問を続けていましたが、3月中旬からは基本的に自粛。緊急事態宣言後は「アポイントや説明会の予定が入っている場合は得意先の意向を確認した上で対応」となっていますが、私が聞く限り訪問しているMRはいないようです。

 

Dさん:訪問規制のかかっていない医療機関には4月上旬までアポイントをとった上で面会していましたが、それ以降は全面的に面会禁止となっています。

 

Eさん:3月の半ばを過ぎたあたりから訪問自粛となりましたが、先週まではアポイントがあれば訪問は可能でした。緊急事態宣言が全国に広がってからは、緊急の案件やどうしてもという要望がある場合以外は訪問しないことになっています。

 

Fさん:私は北海道を担当しているのですが、全国に先駆けて道独自の緊急事態宣言が出た2月28日以降、会社としては北海道に限り不要不急の訪問は自粛することになりました。今は全国的にそういう対応になっていて、先方から要求があったり、政府の緊急事態宣言が出る前にアポイントを入れていたりした場合は訪問可能ですが、事業部のトップの承認が必要です。

 

講演会「夏まで中止」も

――そうした中、皆さんはどのような活動を行っていますか?

Aさん:医師とは基本的にメールでコンタクトをとっています。Webでの面談も打診はしていますが、抵抗感のある医師も多いようで、なかなか受けてもらえません。リアルの講演会は9月いっぱいまで中止することが決まっています。「不要不急の外出」にあたるとの判断からなのか、Web講演会も演者に断られて中止になることもありました。近く新製品の発売が予定されているのですが、この時期の新薬の立ち上げはかなりキツいですね。

 

Bさん:Web面談を打診し、難しい場合は医師の意向に応じて電話やメールでやりとりをしています。Web面談は他社と比べても早くから取り組めていると思っていますが、面談率をどう上げていくかが社内でも課題になっています。現状では医師の反応は二極化している印象です。講演会は、6月までに予定していたものは中止する方向で動くようにとの指示が出ています。

 

Eさん:私も製品に関する情報をメールで送る活動が中心でしたが、オンラインでの面談をやろうと案内の連絡を始めました。反応としては5人に案内して1人受けてくれるかという感じ。講演会や説明会は、先週までは医療機関側の要望があればやっていましたが、今週からは一切禁止です。現状では6月末までは実施しないことになっています。

 

Cさん:急を要するような問い合わせもないので、web講演会の案内や製品情報を郵送しています。郵送物のほうがメールよりも見てもらいやすいかなと思って。Web面談も私が担当する生活習慣病の領域ではあまり行われていないイメージです。講演会は、夏くらいまでに予定されていたものは中止や延期になっています。再開は今のところ未定です。

 

Fさん:メールが中心で、あとは電話や配送などで対応しています。私の場合、大きな担当先は訪問制限が強くなく、アポイントをくれる医師もいるので、そういう場合は訪問することもあります。講演会は延期または中止。会社からは明確な時期が示されているわけではありませんが、私の担当では4月頭に予定していたものを11月に延期したり、最近企画したものも日程を7月後半に設定したりしています。

 

Dさん:実績の確認や卸への新規納入先の確認などはしていますが、営業活動はほとんど行えていません。医師とのコミュニケーションも、講演会の中止や延期などの連絡事項のみ。社内の研修動画などを使って自己学習する時間が多いです。

 

活動量「普段の半分」「1割以下」

――そうした活動について、医師や薬剤師はどんな反応をしていますか?

Aさん:薬剤師と電話で話した時に「どうですか?」と聞いてみたんですが、訪問がなくてもそれほど不便は感じていないようでした。もちろん「来てくれなくて残念だ」と言ってくれる医師もいますが。

 

Bさん:特に反応はないですね。「こういう状況だから仕方ないよね」という感じです。

 

Dさん:私も同じです。ただ、弊社はかなり遅い時期まで訪問を継続していましたので「よく来るね」とは言われました。

 

――普段の活動と比べると、活動量はどれくらい減りましたか?

Aさん:待ち時間や移動時間がなくなったので、半分くらいには減っているかもしれません。医師とのコミュニケーションもピンポイントに薬の話だけになりました。そうでない話題から入る医師の場合、コンタクトが取りづらいです。

 

Bさん:対顧客の活動ということでいうと、6割くらいは減っていますね。「張り付いて捕まえる」ということが今はできませんので。お互いに見かけた時にパッと話すということがなくなったので、コミュニケーションの量も減っています。

 

Cさん:対顧客の活動だと9割以上は減っています。医師とのコミュニケーションも同様です。

 

Dさん:社内業務も含めても7~8割、対顧客だと9割くらいは減っていると思います。給料をもらうのが申し訳ないくらいです。

 

Eさん:普段の対顧客の活動を10とすると、今は1もないくらい。今まではメールでアポイントをとって訪問していましたから、訪問がなくなるとそれくらいになってしまいます。

 

Fさん:8割減。ほぼメールしかできていないので、コミュニケーションも下がっているのではないかと心配しています。

 

効率化の一方で「Web面談率向上が課題」

――リモートワーク(営業活動だけではなく、社内業務も含む)でやりづらいと感じていること、逆にやりやすいと感じていることはありますか?

Bさん:提示できる資料に限りがあるので、医師側のニーズを満たせていないのではないかという懸念があります。一方、移動が不要なので効率的に面談を打診できるのはいいですね。社内の会議もリモートで十分だと感じていますが、何かやっていないと不安なのか、今までなかったような社内ミーティングが増えています。せっかく効率化するチャンスなのに。

 

Cさん:朝起きてすぐ仕事できるので、タイムロスが少ないのはメリットだと思っています。勤務時間中はみなパソコンの前にいますから、社内のコミュニケーションは活発になりました。顧客との接点は減っていますが、チームで対策を検討したり議論したりという時間は充実しています。

 

Aさん:勤務時間中ほぼパソコンの前にいるので、社内業務に対するレスポンスは早くなっているはず。課題はそこで生まれた時間をどう活用するか。Web面談をしていかないと厳しいですね。

 

Fさん:すごくやりにくいです。新薬の発売を予定しているのですが、全例調査の契約も「郵送でいいか」と打診して、OKなら書類を書いて返送してもらっています。このタイミングでの新薬の発売はキツくて、医師からも同情されますよ。社内の会議もWebだと円滑でないと思うところが多く、やりやすさを感じることはありません。

 

Eさん:やりづらさはそんなに感じていないです。内勤業務は楽になっていますし。

 

コロナ後は「訪問規制続く」「Web組み合わせ面談の濃度上がる」

――非対面での営業活動が中心となっている今、あらためて対面での情報提供の必要性についてどう考えますか?

Bさん:非対面だと相手の状況がわからないので、対面での対話は必要だと思います。忙しいのか、疲れているのか、無理して時間を作ってくれているのか、Web面談だと空気までは読み取れません。相手がどんな資料を見ながら話しているのかもわかりにくい。そこが非対面の限界で、両方を使い分けられるのが理想だと思います。

 

Fさん:相手の反応を読みながら営業活動するという点では、対面のほうがやりやすいですね。

 

Dさん:医師の細かなニーズも対面でないと拾いにくい。地方だと特に、対面での面会を求められることも多いと思います。

 

Aさん:会えばポロッと言ってくれることはあっても、それをわざわざメールに書いてくれることはありません。「何か聞こうと思ってたんだけど…」ということも、会えば思い出してくれますし。会わなくていいのであれば、MRはコールセンターと変わらない。

 

Eさん:医師がオンラインでの情報提供に興味があるのならいいのですが、必ずしもそういう人ばかりではない。特に新製品の情報は対面でしっかり話したほうがいいと思っています。うちも新製品がもうすぐ出ますが、情報を知りたい人はいるはずだし、来てほしいと思う人もいるんじゃないでしょうか。

 

Cさん:製薬企業側からすれば、結局は売り上げと競合の活動によるところが大きい。コロナを機に一定に競合もリアルの面会を減らすならいいですが、おそらくそんなことはないので、訪問は必要になると思います。

 

「医師が変わらなければ働き方も変わらない」

――新型コロナウイルスの感染が収束したあと、MRの活動はコロナ以前に戻ると思いますか?それとも、何か変化が起こると思いますか?

Aさん:完全に元に戻ることはないでしょうね。個人的には完全アポイント制がかなり広がるのではないかと感じています。Web面談が普及すれば「エリア」の概念もなくなるかもしれません。ただ、特に新薬の導入や適応拡大の時はやっぱり対面での情報提供になると思います。そういう時は人が来たほうが便利ですから。

 

Bさん:変わるのは間違いないでしょうが、領域ごとに違いが出てくると思います。専門性の高い領域では、Webと対面を組み合わせることで面会の濃度が上がっていくかもしれません。「Webのほうが効率的でいい」と思う医師はいるので、デジタルの活用は広がると思います。マンパワーが足りず訪問できない施設もあるので、今回Web面談のノウハウを得られたのはプラスと捉えています。

 

Cさん:医師が変わらなければ変わらないのではないでしょうか。「来なくていい」と言われれば従来のような活動は減るかもしれないし、Web面談で十分だと言われればそれを使うことになりますが、そうでないところは今までと変わらない。

 

Dさん:変わってほしいと思っています。中止してみると社内会議は不要だったと気付けましたし、特に用がなくても行っていた卸への訪問も電話で済ませることができるのではないでしょうか。

 

Eさん:オンラインでの情報提供を好む医師に対しては、効率的な活動ができるようになるのではないかと思います。相手が開業医か病院かによっても違いそうですよね。開業医はおそらく以前と変わらない。病院はもしかすると、コロナ対策としての訪問規制が収束後も継続するかもしれません。

 

Fさん:あくまで私の担当施設での話ですが、収束すればまた元に戻ると思います。そこまでMRと面会することにマイナスな印象を持っていないようなので。でも、個人的にはすごく不安です。

 

「MRだからこそできることあるはず」

――コロナ後のMRのあり方についてはどうお考えですか?

Bさん:コロナを機に、ただ製品のノイズを上げるようなMRは淘汰されていくんだと思います。今は営業活動が第一で、本来の責務として持っている安全性情報の収集が二の次になっている面もあると思いますが、そこは逆転してくるんじゃないかという気もします。そうなると今の人数が必要かということになってくるでしょうね。

 

Cさん:宣伝色の強いディテールは減っているので、その流れは加速するでしょう。すべての医師が一つひとつのエビデンスや添付文書の記載を把握しているわけではないので、そういうところで役に立てることはあると思っています。

 

Eさん:今、MRが来なくて楽だと思っている医師もいると思うので、以前よりも必要ないという医師は増えるかもしれない。ただ、まったく必要ないという医師はいないのではないかと思います。医師側も知りたい情報はあるはずだし、知識と信頼関係があるMRだからこそ伝えられることがあるはずです。

 

Fさん:北海道にいて実感するんですが、特に地方では医療従事者への情報提供というのはすごく重要で、そういうところにはMRが必要です。Webを通じた情報提供の普及で相対的な位置付けは下がるかもしれませんが、講演会などのイベントを企画したり、世間一般で行われている治療の情報を提供したりできるのは人間であるMR。医師の細かいニーズに応じた情報提供ができるのもMRだと思っています。

 

――訪問自粛で比較的時間に余裕のある状況かと思いますが、コロナを通じて自身の働き方やキャリアについて考えることはありますか?

Aさん:めちゃめちゃ考えますね。情報提供のチャンネルは多様化していくでしょうから。Webを通じた情報提供をうまく使えたらいいと思いますが、そのためには会社の規模が重要。今の会社で医薬品のプロモーション部門にいるというのは不利だと思っています。

 

Bさん:私は単身赴任せずに家族と一緒に暮らしているのでよかったのですが、こういう状況になってみて、単身赴任を伴うようなキャリアアップにはリスクを感じるようになりました。

 

Cさん:もともと転職も含めいろいろな選択肢を考えていたので、情報収集やスキルアップに充てる時間は増えました。

 

Fさん:在宅勤務が始まったころは、この先どうやって食っていこうかということも考えたりしました。製薬会社を辞めたほうがいいんじゃないかと。ただ、こういう状況であればほかの業界に行ったとしても営業は活動できないでしょうし、新薬の発売で忙しいので、今はそういう気持ちは落ち着いています。

 

(取材/構成・前田雄樹)

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