米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、高成長が期待される美容医療分野の5つのトレンドを、国際学会に参加した専門アナリストが紹介します。
(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
安全性・有効性に関心 規制や監視が強化
今年の国際美容学会(IMCAS)では、▽処置数が堅調に増加していること▽美容機器の安全性と有効性に対する注目が高まっていること▽処置に対する規則と監視が強まっていること――に注目が集まった。出席したDecision Resources Groupのラーガヴ・タングリ(上級美容アナリスト)が、3日間に渡って開かれた学会をハイライトし、5つの重要なトレンドを紹介する。
高周波エネルギー機器の利用者が大幅に増加
高周波エネルギー機器は今後、利用者数を大幅に増やして進歩すると考えられる。レーザー、プラズマ、超音波と異なり、より効率的な温度管理が可能で、皮膚に火傷を負うリスクが低いからだ。主要なエネルギー機器企業は、既存の高周波機器を改良したり、新たな機器の導入を目指したりすると予測され、市場の拡大につながると考えられる。
こうした企業の1例がインモードだ。同社は、モーフィアスとイヴォークの高周波エネルギー機器を提供しており、継続的にこの機器に改良を加えている。
投資家は美容事業とその他事業の分離を望む
美容や製薬、医療機器といった企業の間でM&Aが増加しているが、投資家は美容事業とその他の事業を分離することを望んでいる。これは、▽自己負担で定期的な支払いが発生すること▽規制が比較的厳格でないこと▽患者の選択が重要であること――といった美容事業の特性によるものだ。
例えば、今年のIMCASでは、アラガンのジェリー・ミューレ副社長兼国際医療美容部門長が、買収完了後もアラガンはアッヴィから独立して機能すると繰り返した。別のケースとしては、2019年にネスレが子会社のネスレスキンヘルスを売却したことが挙げられる。これによって、独立した美容企業としては最大級の規模の会社が誕生した。
欧州での規制強化
欧州医療機器規則(MDR)は今年の学会の大きな焦点だった。簡単にまとめると、MDRによって美容製品は正式に医療機器に分類され、医療機器に関するすべての規制の対象となった。MDRの付属書XVIの範囲に該当する機器を持つ美容企業は、共通仕様書が発表されてから6カ月以内に、その付属書の共通仕様書に準拠しなければならない。
長期的に見れば、MDRは最終的にEU全体における安全性、有効性、規制調和を改善することにつながると見られている。ただ、MDRへの適合性を評価する機関が不足することや、多くの臨床データを求められることで市場から追いやられる企業(特に、規模が小さく資金が少ない企業)が出てくることも予想されている。利害関係者は、規制に対応するためのタイムラインやコストについて、さまざまな懸念を表明している。
社会的許容を再定義
今年のIMCASで顕著だったもう1つの傾向は、業界が顧客ベースの年齢範囲を拡大することに重点を置き、加齢に対する心構えと美容処置に対する社会的許容を再定義していることだった。
例えば、メルツ・エステティックの「Xenomin」という製品の「Later Haters」キャンペーンは、女性(特に、家庭やキャリアを持つ年齢の高い女性)に対して、美容医療を受けるかどうかを決める要因として働く「罪悪感」や「外見に関する決めつけ」を無視しようと呼びかけた。これは、若い世代や男性をターゲットとした業界のこれまでのトレンドと一致している。美容医療の企業は今後も、年齢や性別を問わず患者相を広げようと努力するだろう。
併用治療の増加がM&Aを促す
「毒素と皮膚フィラー」「EBDと注射剤と薬用化粧品」といった組み合わせによる治療が増加した結果、幅広いポートフォリオの構築が将来の成功を決める要因となっており、ポートフォリオの拡大を狙ったM&Aが活発化している。
テオキサン・ラボラトリーズとレバンス・セラピューティクスは、併用治療に使う製品を共同で販売するための提携に合意した。テオキサンの創始者でCEO(最高経営責任者)を務めるヴァレリー・トーピンはIMCASで、両社のポートフォリオが幅広いことを示す1つの例として、自社のRHAフィラー製品群とレバンスのDAXI神経修飾物質の併用をアピールした。
魅力的なターゲット
美容市場は全体として、ほかの医療機器や医薬品の市場と比べて、いつ急速な成長が続く状態に入ってもおかしくないと見られており、企業にとっては大きな収益が見込める魅力的なターゲットとなっている。
一方で、強力な成長に伴って▽安全性と有効性の問題▽美容医療を行う医師の種類の拡大(場合によっては免許不要)▽患者プールの制限――など、さまざまな問題が発生する。規制当局は、市場の急速な変化に追いつくべく規制を強化している。
成功している美容企業は、今後も顧客ベースを拡大し、規制への対応を進めることで、顧客に安全性と有効性のあるソリューションを提供する努力を続けるだろう。
(原文公開日:2020年2月20日)
この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。
【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
野地(アカウントマネージャー)
E-mail:hnoji@teamdrg.com
Tel:03-6625-5257(代表)