米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、米国の肥満手術デバイスの市場を展望します。
(この記事は、Decision Resources Groupが発行したレポート「Obesity Interventions-US 2019」の概要を日本語に翻訳したものです。レポートの詳細はこちら)
スリーブ状胃切除術が普及へ
肥満の外科手術は米国で最も実施率が低い手術の1つだ。必ずしも保険給付の対象ではなく、2017年に手術を受けたのは適格患者の約1%に過ぎない。
しかし近年、腹腔鏡手技の進歩によって肥満外科手術の安全性は大幅に向上し、手術に関連する死亡のリスクは1%まで低下している。こうしたことを背景に、今後はある程度、手術の数も増加しそうだ。
肥満外科手術への保険適用は2009年から2017年にかけて大幅に広がった(州公務員医療制度で23%増、メディケイドで9%増)ものの、推奨される肥満外科手術は2018年1月の時点でも多くの州で保険給付の対象にはなっていない。
加えて、肥満外科手術の必要性を検討する前に、患者はほかの安価な治療を試した上で厳格な基準を満たす必要がある。これが手術へのアクセスの障壁となっており、手術はさほど浸透せず、今後も傾向は変わらないと考えられる。
ほかの国と同じように、米国でもスリーブ状胃切除術が肥満外科手術の中で最も多い。胃バンディング(緊縛)術や胃バイパス術よりも新しい術式であり、経験のない医師も少なくないが、臨床でその安全性が証明されるにつれ、この術式を習得しようとする医師も増えている。糖尿病などの合併症がある患者には依然として胃バイパス術が標準だが、スリーブ状胃切除術は高度肥満患者に対する主要な術式として普及していくことが予想される。
米国には、新たな高度肥満外科手術を導入する上で高い障壁が存在しており、選択可能な治療の数は比較的少ないと言える。これが、治療を受ける患者や市場にマイナスの影響を及ぼしている。
市場成長を牽引するのは
欧州などほかの地域で展開されている新規イノベーションの多くは、米国では承認されていない。しかし、最近承認された、あるいは間もなく承認が見込まれる新たなデバイス―AspireAssist、TransPyloric Shuttle System、EndoBarrier、SatiSphere、abiliti system、Gastric Vest Systemなど―は、米国市場の成長を牽引する可能性を持っている。
創閉鎖デバイス市場は収益が見込めるため、この領域の主要企業が肥満外科手術市場全体の上位を占めている。とりわけメドトロニックは、ステープラーと体内縫合デバイスの売り上げによって創閉鎖デバイス市場の圧倒的シェアを握っており、2018年には米国肥満外科手術でトップとなった。
一方、エチコンは最近、胃バンディング術市場から撤退し、サーキュラーステープラー製品のリコールがあったにもかかわらず、この領域で2位につけている。創閉鎖デバイス市場では、新規参入による市場はほとんど予想されておらず、この市場の持続的な成長にあわせて、メドトロニックとエチコンが上位を維持しそうだ。
エチコンは自社の「ECHELON FLEX GST System」をメドトロニックの「エンドGIAステープラー」と比較する治験を行い、シェア拡大への努力を見せたが、メドトロニックは体内縫合デバイスの圧倒的なシェアを背景に市場の首位に立っている。
結節なしの「V-Locクロージャーデバイス」は人気が高く、同社のエンドステッチデバイスに装填することで素早い縫合が可能になる。エチコンがリコールでイメージダウンしたことも、メドトロニックにとって追い風となっている。
Apollo Endosurgeryは、胃バンディング術市場で強力な存在感を示し、肥満外科手術デバイス部門の首位に立っていましたが、胃バンディング術市場の急速な衰退に伴い、同社のシェアは近年、大幅に低下している。
2018年12月、同社は胃内バンド製品をReShape Lifesciencesに売却し、ReShapeの胃内バルーン製品ラインを獲得した。Apollo Endosurgeryは2019年1月、Reshape社バルーンの販売を中止したものの、胃内バルーン市場では首位を守っており、肥満外科手術市場全体でも一定のシェアを維持しています。バルーン市場は今後も拡大が予想されており、同社は利益を上げそうだ。
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