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ニュース解説

エーザイ「25年度まで年平均20%成長」の現実味

エーザイが、進行中の中期経営計画「EWAY2025」の後半(2020~25年度)に年平均20%の売り上げ成長を目指すと宣言しました。高成長の牽引役となるのは、米メルクとの提携で販売が拡大する抗がん剤「レンビマ」と、申請準備中のアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブ。実現すれば、「アリセプト」で世界市場を席巻した2000年代後半の業績を大きく上回ることになりますが、果たして。

 

「眼前に大きな成長機会」

エーザイの内藤晴夫代表執行役CEO(最高経営責任者)は、3月上旬に同社が開いたインフォメーションミーティングで、2020~25年度に年平均で売上収益を20%、営業利益を25%成長させる考えを明らかにしました。同社では2016年度から10カ年の中期経営計画「EWAY2025」が進行中。同社は折り返し地点となる20年度の目標として「売上収益8000億円以上」「営業利益1020億円以上」を掲げてきましたが、それ以降の業績見通しはこれまで示されていませんでした。

 

エーザイの足元の業績は好調で、19年度は売上収益6800億円(前年度比5.8%増)、営業利益1100億円(27.7%増)を予想。トップラインは20年度目標と開きがあるものの、利益は1年前倒しで達成できる見通し。ROE(自己資本利益率)に至っては、25年度の目標(15%以上)を早々とクリアする勢いです。

 

中計前半の16~19年度の年平均成長率は、売上収益が5.5%増、営業利益が20.6%増となっており、新たに設定した後半の成長目標はこれを大きく上回ります。高成長の支え手として期待がかかるのは、自社創製の抗がん剤「レンビマ」と、米バイオジェンと共同開発中のアルツハイマー病治療薬アデュカヌマブ。内藤CEOは「われわれは非常に大きな成長機会を眼前にしている」とし、「レンビマとアルツハイマー病治療薬で飛躍的な成長を目指す」と語りました。

 

【中期経営計画「EWAY2025」期間中の業績のグラフ(実績とシミュレーション)】(売上収益/営業利益): ※19年度見通し:6800億円/1100億円、20~25年度で売上収益20%増/営業利益25%増(※年平均)| |16年度/5391/591 |17/6001/772 |18/6428/862 |19/6800/1100 |20/8160/1375 |21/9792/1719 |22/11750/2148 |23/14100/2686 |24/16921/3357 |25/20305/4196 |※エーザイのインフォメーションミーティング(20年3月6日)資料をもとに作成

 

「レンビマ」はブロックバスターに

レンビマの売り上げは順調に拡大しており、19年度は1190億円(前年度比90.1%増)とブロックバスターとなる見通し。17年度から18年度にかけて日米欧中で肝細胞がんへの適応拡大が承認され、特に米国と中国で急速に販売を広げています。

 

レンビマをめぐっては、18年3月に米メルクと戦略提携を締結。世界18カ国で共同販促を展開しているほか、メルクの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」との併用療法を共同開発しています。併用療法は昨年9月、進行性子宮内膜がんを対象に米国で初の承認を取得。提携で設定されたマイルストンはこれまですべて達成しているといい、内藤CEOは「協業は順調かつ着実に進行している」と手応えを語りました。

 

併用療法の開発では、7がん種11適応で申請用の臨床試験が進行中で、▽子宮内膜がん▽▽腎細胞がん▽肝細胞がん――の3がん種では米FDA(食品医薬品局)からブレークスルーセラピーに指定。さらに、胃がんやトリプルネガティブ乳がんなどを対象としたバスケット試験も走っています。

 

【レンビマとキイトルーダの併用療法の開発状況】(★は米でブレークスルーセラピー指定。2020年3月6日現在。1L=ファーストライン、2L=セカンドライン) (適応/開発地域/開発段階): 進行性子宮内膜がん★/米/承認 |子宮内膜がん(2L)★/日米欧/P3 |腎細胞がん(1L)★/日米欧/P3 |肝細胞がん(1L)★/日米欧中/P3 |メラノーマ(1L)/米欧中/P3 |非扁平上皮非小細胞肺がん(1L、化学療法併用)/日米欧中/P3 |PD-L1陽性の非小細胞肺がん(1L)/日米欧中/P3 |子宮内膜がん(1L)/日米欧中/P3 |非小細胞肺がん(2L)/日米欧/P3 |膀胱がん(1L)/日米欧中/P3 |頭頸部がん(1L)/日米欧中/P3 |固形がん(子宮内膜がん・腎細胞がん・頭頸部がん・尿路/米欧/P1/2 |上皮がん・非小細胞肺がん・メラノーマ)/日/P1 |メラノーマ(2L)/米欧/P2 固形がん(トリプルネガティブ乳がん・卵巣がん・胃がん・大腸がん・膠芽腫・胆道がん)/米欧/P2 |肝細胞がん(肝動脈化学塞栓療法=TACE併用)/日米/P1 |※エーザイのインフォメーションミーティング(20年3月6日)資料などをもとに作成

 

内藤CEOは併用療法について「これだけのがん種をカバーすれば、レンビマとキイトルーダの併用療法はいわゆるバックボーンセラピーとしての地位を確立するのではないか」と期待を寄せます。戦略提携を通じた共同販促と併用療法の開発によって、将来的にレンビマの売り上げは5000億円規模まで伸びると見込んでおり、中計後半に見込む高成長の原動力となります。

 

アデュカヌマブの申請が焦点

レンビマが順調に拡大する一方で、焦点となっているのがバイオジェンと共同開発している抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブの申請です。

 

アデュカヌマブをめぐっては、昨年3月に「主要評価項目が達成される可能性が低い」として2本の臨床第3相(P3)試験を中止したものの、同10月には一転して「追加データも含めて詳細な解析を行ったところ、2本のうち1本で主要評価項目を達成した」と発表。「20年の早い段階」に米国で承認申請を行う方針を示していました。

 

昨年10月に発表された詳細な解析データによると、アデュカヌマブはアルツハイマー病の悪化を2割程度抑制するとされています。ただ、2本のP3試験のうち1本では詳細解析でも主要評価項目を達成できておらず、この結果で本当に承認を取得できるのかは不透明です。

 

eisai_midium_term_04アルツハイマー病治療薬の開発について説明する内藤CEO。新型コロナウイルスの影響により、インフォメーションミーティングはライブ配信で行われた 

 

内藤CEOは「日米欧の規制当局と協議を続けている。米国では早期の申請完了に向けて順調に進行している」と強調する一方、具体的な申請時期については「受理された段階で速やかに発表したい」と述べるにとどめました。エーザイとバイオジェンは近く、過去にアデュカヌマブの臨床試験に参加した患者を対象に、オープンラベルの再投与試験を始める予定です。

 

アデュカヌマブは、承認されればかなりの売り上げになるとみられており、エーザイは同薬を含めた中枢神経系領域の20~25年度の成長率を年平均45%増としています(がん領域は年平均25%増)。中計後半で目指す高成長は、アデュカヌマブにかかっているといっても過言ではありません。

 

エーザイの売上収益は、認知症治療薬「アリセプト」が世界で3228億円を売り上げた09年度の8032億円がピーク。新たなに掲げた成長目標を達成できれば、25年度にはこれの倍近い規模まで売上収益が拡大することになります。パテントクリフを脱しつつある中、新たな成長フェースを迎えることができるのか。アデュカヌマブの動向が注目されます。

 

【エーザイの業績推移のグラフ】(年度/アリセプト売上収益/パリエット売上収益/レンビマ売上収益/その他売上収益/営業利益): |08/3038/1599/0/3180/918 |09/3228/1480/0/3324/864 |10/2904/1369/0/3416/1131 |11/1471/1264/0/3745/957 |12/943/1084/0/3710/705 |13/827/914/0/4263/711 |14/657/560/4/4264/283 |15/633/461/115/4270/519 |16/492/364/215/4320/591 |17/443/320/322/4916/772 |18/402/277/626/5123/862 |19/350/240/1190/5020/1100 |※エーザイの決算発表資料をもとに作成

 

(前田雄樹)

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