2020年2月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】LDLコレステロール低下薬「Nexletol」や片頭痛治療薬「Nurtec」など
「Pizensy」米Sebela
「Pizensy」(一般名・lactitol)は、慢性特発性便秘症治療薬の適応で承認を取得しました。lactitolは代替甘味料の1つで、便秘治療薬としてはスイスやオランダなどで「Importal」の製品名で販売されています。
「Twirla」米アジャイル
経皮避妊薬「Twirla」が承認されました。ホルモン製剤のlevonorgestrelとエストロゲン薬ethinyl estradiolを含有しており、経口薬と同等のエストロゲンを送達。1週間に1回の貼付で済みます。
「Anjeso」米Baudax
COX-2阻害薬meloxicamの静注剤「Anjeso」が、中等度から重度の疼痛治療薬として承認されました。1日1回投与の非ステロイド性抗疼痛薬で、24時間いつでも使用できます。オピオイドの乱用が社会問題となる中、急性期に使える非オピオイド鎮痛薬として期待されています。
「Nexletol」/「Nexlizet」米エスペリオン
「Nexletol」(bempedoic acid)は、LDLコレステロール低下の適応で承認。同薬はATPクエン酸リアーゼ阻害薬で、肝臓でのコレステロール合成を阻害します。最大耐量のスタチン療法を行っている動脈硬化性心血管疾患やヘテロ接合性家族性高コレステロール血症の患者に対し、補助的に使用。1日1回1錠の非スタチン系高コレステロール血症治療薬は、米国ではおよそ20年ぶりとなります。エゼチミブとの配合剤「Nexlizet」も承認。非スタチン性系同士の配合剤は米国初です。
「Vyepti」デンマーク・ルンドベック
抗CGRP抗体「Vyepti」(eptinezumab)は、片頭痛予防の適応で承認を取得しました。3カ月に1回投与の静注剤で、承認のもととなった臨床試験では、投与翌日から効果を確認。6カ月後まで効果を示しました。欧州でも今年中に申請する予定で、その後日本や中国での申請を見込んでいます。
「Barhemsys」英アカシア
制吐薬「Barhemsys」(amisulpride)は、術後悪心・嘔吐の予防と治療の適応で承認されました。同薬は選択的ドーパミンD2/D3拮抗薬で、標準的な予防で効果が得られなかった患者に使用できる治療薬は米国初。欧州などでは「Solian」の製品名で統合失調症薬として使用されています。
「Nurtec」米バイオヘブン
「Nurtec」(rimegepant)は、片頭痛の急性期治療で承認を取得しました。CGRP受容体拮抗薬の口腔内崩壊錠は米国初。投与後1時間以内で痛みが引き、48時間ほど効果が続くとされています。臨床試験では、86%の患者が救急薬を使用せずに治療を完了。有効性の高さから、大型化が見込まれています。
【適応拡大】「Trulicity」の心血管リスク低減と「Nerlynx」のHER2陽性転移性乳がん
「Trulicity」米イーライリリー
GLP-1受容体作動薬「Trulicity」(dulaglutide)は、2型糖尿病患者の心血管リスクの低減で承認されました。心血管疾患の発症していない患者にもリスク低減を目的に使用できる2型糖尿病治療薬は初めて。
心血管リスク低減の適応を取得したGLP-1受容体作動薬は、1月に承認されたデンマーク・ノボ ノルディスクのsemaglutideに続いて2剤目となります。
「Nerlynx」米プーマ・バイオテクノロジー
チロシンキナーゼ阻害薬「Nerlynx」(neratinib)は、HER2陽性の進行・転移性乳がんへの適応拡大が承認されました。2つ以上の抗HER2治療を受けた患者が対象で、カペシタビンと併用します。日本ではHER2陽性乳がん治療薬としてファイザーが開発中。欧州では早期乳がんを対象に18年に承認されています。
(亀田真由)