外資系製薬企業が存在感を増していると言われて久しい日本の医薬品市場。外資のシェアはどこまで高まったのか、IQVIAの市場統計をもとに分析しました。
INDEX
上位10社中7社が外資
IQVIAが2月18日に発表した2019年の国内医薬品市場統計によると、国内医療用医薬品の売上高でトップとなったのは5695億円(前年比0.6%増)を売り上げたファイザー。2位には5083億円(6.4%増)の中外製薬が入り、3位に武田薬品工業、4位に第一三共、5位にアストラゼネカと続きました。前年と比べると、武田と第一三共が入れ替わり、アストラゼネカは7位から2つ順位を上げました。
19年の売上高上位20社を外資系企業と日本企業に分けて見ると、外資が11社と半数を超え、上位10社に限ると7社を外資が占めました。トップ10に入った日本企業は武田と第一三共、大塚製薬の3社だけです。
2010年のランキングと比較してみると、外資と内資が半々だった上位20社では外資が1社増え、外資5社・内資5社だったトップ10でも外資が2社増えました。10年はトップ20に入っていたエーザイ、大日本住友製薬、塩野義製薬の3社はランキングから姿を消し、田辺三菱製薬やアステラス製薬も順位を大きく下げています。
売上シェアも外資が7割
売り上げの額で見ても、外資系企業の占有率は上昇しています。
19年に上位20社に入った企業の売上高の合計は約6.26兆円で、このうち外資は約3.73兆円と全体の59.6%を占めます。10年と比べると外資の売り上げは13.0%伸びた一方、内資は16.7%減少。外資のシェアは7.5ポイント上昇しました。
上位10社に限ってみると、外資への集中度はさらに鮮明になります。19年のトップ10でのシェアは69.0%とほぼ7割に達し、10年から16.3ポイント上昇。この間、外資は売り上げを21.9%増やしましたが、内資は38.9%減少しました。
外資と内資の明暗を分けているのは、開発力の差にほかなりません。
国内の売り上げ上位10製品を見てみると、10年はARB「ブロプレス」(武田)や認知症治療薬「アリセプト」(エーザイ)など日本企業が創製した医薬品が6製品ランクインしていました。ところが19年にはそれが逆転し、内資の創製品は免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」(小野薬品工業)や抗凝固薬「リクシアナ」(第一三共)など4製品だけに。免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」(MSD)、抗がん剤「アバスチン」(中外製薬)、疼痛治療薬「リリカ」(ファイザー)のトップ3はすべて外資系企業の創製品に変わりました。
世界でも数少ない創薬国であり、世界3位の医薬品市場を抱えながら、グローバルでの存在感は薄いとされる日本の製薬企業。革新的新薬の評価に重点を移す薬価制度改革の影響もあり、マザーマーケットでの地位も危うくなっています。
(前田雄樹)