「2020年9月までに80%」とする政府の後発医薬品使用目標の達成期限まであと半年余り。昨年9月時点の使用割合は76.7%まで高まっていますが、足元では伸びが停滞しており、目標達成を危ぶむ声も聞かれるようになってきました。国は4月の診療報酬・調剤報酬改定で使用促進策を見直し、目標達成へラストスパートをかけます。
使用割合 伸び悩み
「このままでは9月までに80%という目標を達成するのは難しいのではないか」。ある後発医薬品メーカーの関係者は、こんな見通しを口にします。これまで順調に拡大してきた後発品の使用割合が、1年ほど前から伸び悩んでいると言うのです。
約4035万人が加入する国内最大の全国健康保険協会(協会けんぽ)によると、2019年9月時点の後発品の使用割合は76.9%。2年前の同じ時期から8.3ポイント上昇しましたが、19年1月以降は月平均0.1ポイントの伸びにとどまっており、このままのペースでは今年9月までに80%には届きません。国全体では19年9月時点で76.7%と2年前に比べて10.9ポイントアップしたものの、協会けんぽの使用割合が頭打ちになっている状況から考えると、目標達成は難しそうです。
国はこれまで、▽後発医薬品調剤体制加算(薬局向け)▽後発医薬品使用体制加算(医療機関向け)▽一般名処方加算(同)――といった診療報酬・調剤報酬上のインセンティブを設け、医療機関や薬局に後発品の使用を促してきました。今年4月の診療報酬・調剤報酬改定では、目標達成に向けてこうした使用促進策の見直しが行われます。
薬局向け加算 ペナルティを拡大
後発品の使用割合が高い薬局を評価する「後発医薬品調剤体制加算」では、使用割合85%以上の「加算3」を従来の26点から28点に引き上げる一方、75%以上80%未満の「加算1」は18点から15点に引き下げ(80%以上85%未満の「加算2」は22点で据え置き)。使用割合が低い薬局へのペナルティとなる調剤基本料の減算措置(2点減算)は、従来の20%以下から40%以下へと対象を広げます。
医療機関向けの「後発医薬品使用体制加算」では、使用割合85%以上の「加算1」を45点から47点に、80%以上85%未満の「加算2」を40点から42点に、70%以上80%未満の「加算3」を35点から37点に、それぞれ2点ずつ引き上げ。60%以上70%未満の医療機関を評価してきた「加算4」(22点)は廃止されます。
医薬品の一般名を含む処方箋を交付した場合に算定できる「一般名処方加算」は、後発品があるすべての医薬品を一般名で処方した場合の「加算1」が6点から7点に、後発品がある医薬品を1つでも一般名で処方した場合の「加算2」が4点から5点に引き上げられます。
フォーミュラリー評価は見送り
バイオシミラーの普及に向けては、医科診療報酬の在宅自己注射指導管理料(注射薬を自己注射する患者に指導管理を行った場合に算定)に「バイオ後続品導入初期加算」を新設。患者にバイオシミラーの情報を提供し、同意を得てバイオシミラーを処方した場合を評価するもので、最初に処方した月から3カ月を限度に月1回150点を加算します。
一方で、後発品の使用促進につながると期待されていた「フォーミュラリー」(使用ガイド付き医薬品集)の評価は見送られました。フォーミュラリーとは「医療機関などで医学的妥当性や経済性などを踏まえて作成された使用指針を含む医薬品集」のことで、厚生労働省は特定機能病院を対象にフォーミュラリーの作成を診療報酬で評価することを中央社会保険医療協議会(中医協)に提案。しかし、処方できる医薬品が制限されることを懸念した診療側委員が反発し、20年度改定では導入に至りませんでした。
日本病院薬剤師会のデータによると、特定機能病院の21%がフォーミュラリーを作成しており、このうち82%が「後発品やバイオシミラーの使用促進」に効果があったとしています。中医協がまとめた診療報酬改定答申の付帯意見には「医学的妥当性や経済性の視点も踏まえた処方の取り組みについて、病院内における実施体制や実施方法などの実態把握・分析を進めること」と書き込まれており、次回の22年度改定に向けて検討が続く見通しです。
(前田雄樹)