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高血圧管理デバイスとして期待される「腎デナベーション」の行方|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。同社が発行したレポートをもとに、高血圧管理デバイスとして再び注目が集まる「腎デナベーション」の市場を展望します。

 

(この記事は、Decision Resources Group社が発行したレポート「Hypertension Management Devices―Global 2019」のExecutive Summaryを翻訳したものです)

 

関心高まるデバイス治療

高血圧症は有病率の高い疾患で、日米欧に2億人以上の患者がいると推定されるが、大部分はコントロール不良である。(Hypertension. Decision Resources Group, Epidemiology, 2019)。高血圧は脳卒中や心臓発作などのリスク要因となるため、血圧の管理は重要だ。

 

治療の選択肢には、生活習慣の改善、降圧薬、医療機器があるが、米国で行われた腎デナベーション(カテーテルで腎神経を焼灼する治療法)の臨床試験「SYMPLICITY-HTN 3試験」で有意差が示されなかったことを受け、高血圧管理用デバイスを手掛ける主な企業はその販売を停止している。

 

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有用性を示す決定的なエビデンスに欠けるため、診療ガイドラインではデバイスを用いた高血圧の治療推奨されていない。ただ、「SPYRAL HTN」や「RADIANCE-HTN」といった治験が行われており、これらは高血圧管理用デバイスの市場を再び確立する上で重要な意味を持っている。初期のデータは有用性を期待させるものとなっており、腎デナベーションデバイスはシャム治療と比べ、6カ月後までの時点で大幅な高圧効果を示している。こうしたデータにより、デバイスを用いた高血圧の管理に対する医師の関心が再び高まっている。

 

腎デナベーションだけでなく、圧受容器反射活性化療法(BAT=baroreflex activation therapy)や心臓ニューロモジュレーション療法(CNT=cardiac neuromodulation therapy)といったデバイスによる治療アプローチも研究されている。しかし、BATやCNTなどのデバイスの発売が腎デナベーションシステムの市場に与える影響は大きくはなさそうだ。CNTデバイスは対象患者が限定的で、BATデバイスは手技が複雑なため、いずれも浸透には時間がかかるだろう。

 

メドトロニックやリコー・メディカルなどが治験

デバイスによる高血圧管理を評価する治験では、今後も肯定的な結果が得られると予想される。強力な臨床データが得られれば、これらの機器は急速に普及するだろう。腎デナベーション術に対する保険償還が促進され、各国で高血圧管理デバイスの市場は急成長しそうだ。

 

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SYMPLICITY HTN-3の結果が発表されるまでは、▽「Vessixバルーン」(ボストン・サイエンティフィック)▽「Iberis」(テルモ)▽「EnligHTN」(セント・ジュード・メディカル、のちにアボット・ラボラトリーズが買収)▽「Surround Sound」(コナ・メディカル)――など、複数の腎デナベーションデバイスが欧州で販売されており、米国などでも承認取得に向けた治験が行われていた。しかし、同試験の結果を受け、各社は腎デナベーション製品の販売を中止。これらのメーカーの大半が、腎デナベーションシステムに関する治験プログラムを中断した。

 

しかし、メドトロニックやリコー・メディカル(大塚メディカルデバイスに買収)、アブレーティブ・ソリューションズなどの一部メーカーは治験を続けており、腎デナベーションシステムの臨床データを収集している。これらの治験は、SYMPLICITY HTN-3の失敗につながった可能性のある交絡要因に対応することを意図したもので、肯定的なデータが得られれば、腎デナベーションデバイスの有効性を証明し、高血圧の治療法として確立されることが見込まれる。

 

これらの治験の初期データは有望で、完了予定日から判断すると、3社はいずれも2021年中に腎デナベーションシステムを発売すると予想される。

 

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欧米で相次ぎ発売へ

3社の腎デナベーションシステムは欧州でECマークを取得している。このため3社とも、実施中のPoC試験(▽メドトロニックの「Symplicity Spyral」を評価するSPYRAL HTN-ON MED試験▽リコー・メディカルの「Paradise」を評価するRADIANCE-HTN試験▽アブレーティブ・ソリューションズの「Peregrine」を評価するTARGET BP OFF-MED試験)で主要評価項目のデータ収集が終了し、データが一貫して肯定的なものであれば、速やかに欧州市場に参入すると予想される。いずれも主要評価項目のデータは2020年に取得が完了する見通しで、3社とも相次いで欧州で販売を開始するとみられる。

 

一方、米国ではメドトロニックが最初に市場参入を果たすと予想される。同社は米国でSymplicity Spyral を評価するSPYRAL HTN-OFF MED試験を実施中で、FDA(食品医薬品局)の承認に必要なデータを収集している。中間データは欧州のSPYRAL HTN-ON MED試験、米国のSPYRAL HTN-OFF MEDともに肯定的で、最近発表されたGlobal Symplicity Registryからの3年データも有望なものだった。OFF MED試験の主要評価項目データの収集が完了するのは2020年6月と予想されており、メドトロニックのSymplicity Spyralは2021年初頭にも米国で発売されると期待される。

 

これに続いて、リコー・メディカルのParadiseやアブレーティブ・ソリューションズのPeregrineも2021年下半期の発売が見込まれる。メドトロニックは巨大な米国市場で“一番乗り”のベネフィットを享受できるが、ライバルが相次いで参入してくると予想されるため、速やかに地位を確立する必要がある。

 

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米国市場に最初に参入するメドトロニックは有利な立場にあるものの、リコー・メディカルの超音波焼灼カテーテルは良好な臨床データを追い風に、世界の腎デナベーションデバイス市場で大きなシェアを獲得すると予想されている。RADIOSOUND試験の3カ月データでは、超音波アブレーションによる腎デナベーションは高周波アブレーションに比べて自由行動下血圧収縮期血圧を大幅に低下させた(超音波アブレーションで13.2mmHg低下、高周波アブレーションで6.5mmHg低下、Fengler K, 2019)。このデータは、リコー・メディカルに競争優位性を与え、メドトロニックとも競合できそうだ。

 

BATやCNTのシェアはわずか

業界筋によると、開発中の腎デナベーションデバイスで最も費用対効果に優れているのはアブレーティブ・ソリューションズのPeregrineケミカルアブレーションシステムだという。設備が不要な上、デナベーション剤はアルコールで、しかも1処置あたり約0.3~0.6 mlと少量で済み、治療にかかる時間も最も短い。コストを抑えながら施術患者を増やせるし、初期投資も少額で済むので、医療機関にとっては魅力的だろう。承認されれば、メドトロニックやリコー・メディカルとも互角に戦えそうだ。

 

高血圧管理のアプローチとしては、腎デナベーション以外にも、圧受容器反射を活性化させるBATや、埋め込み型パルスジェネレーターを使うCNTも開発されている。

 

BATでは、CVRxが「BAROSTIM NEO」の、バスキュラー・ダイナミクスが「MobiusHD」の治験をそれぞれ実施中。主要評価項目のデータ収集完了予定日から判断すると、MobiusHDの米国及び欧州での発売は2022年の下半期、BAROSTIM NEOは遅くとも2025年と予想される。ただし、BAROSTIM NEOは欧州だけで治験を行っており、発売も欧州だけになる見通しだ。

 

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CNTでは、欧州でオーケストラ・バイオメドのModeratoシステムに関する治験が進行中で、2021年末までに発売が予想される。ただ、腎デナベーションに比べるとBATやCNTの影響は限定的とみられる。BATは手技が複雑で、CNTは適応がデュアルチャンバーペースメーカーを使用している患者に限られるからだ。BATやCNTのメーカーが高血圧管理デバイスの市場で獲得できるシェアはごくわずかだろう。

 

Decision Resources Groupは市場分析の一環として複数の専門医にインタビューを行った。その中である医師は、腎デナベーション術は将来的に外来治療となる可能性があるとコメントしている。

 

「長期的なビジョンは、腎デナベーションを外来手術とすることだ。アブレーティブ・ソリューションズのデバイスを使えば15分で済むので、実現可能である。一方、メドトロニックのデバイスは約45分必要だ。将来的にはこちらも外来手術でと考えるが、現時点では不可能だ」(オランダのインターベンショナル・ラジオロジスト)

 

この記事は、Decision Resources Group社が発行したレポート「Hypertension Management Devices―Global 2019」のExecutive Summaryを翻訳したものです。同レポートでは、日本、米国、欧州5カ国の高血圧管理デバイス市場について、2028年まで分析・予測しています。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(コマーシャルエクセレンス ディレクター)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-6625-5257(代表)

 

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