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新薬に迅速アクセスの道を開く スコットランド「暫定収載」の取り組み|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。スコットランドで始まった、重篤な疾患や希少疾患に対する医薬品へのアクセスを迅速化するための取り組みを紹介します。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

EMAの条件付き承認、NHSリストに暫定的に収載

医療技術評価(HTA)による医薬品評価のプロセスは、世界中でパラダイムシフトの真っ只中にある。細胞治療・遺伝子治療の評価、患者の意見の反映、リアルワールドデータなど従来とは異なる指標の導入に関するガイドラインの策定、さらには条件付き保険償還の実施と、医薬品市場の変化に後れをとらないよう、制度の変革は不可欠だ。

 

2016年、新薬の使用について独自のレビューを行ったスコットランド政府は、終末期医療、希少疾患、超希少疾患に対する新薬へのアクセス向上に向けた計画を発表した。このレビューには、同地域の新薬承認プロセスの改革に関する勧告も含まれている。計画には、リアルワールドデータやペイシェントレポーティッドアウトカムといった質的指標を活用し、アンメットニーズに対応する医薬品を暫定的に使用可能にすることが盛り込まれた。

 

EarlyAccessPathways_SMCInterimDecisions_01

 

スコットランドのHTA機関である「スコットランド医薬品コンソーシアム」(SMC=Scottish Medicines Consortium)は2018年、暫定償還の仕組みを導入した。EMA(欧州医薬品庁)から条件付き製造販売承認を受けた医薬品に対し、スコットランド国民医療サービス(NHS Scotland)のリストに暫定的に収載することを認めるものである。

 

このプロセスは、イングランドの抗がん剤基金(CDF)と同じようなものだが、同政府は仮承認のための個別の予算は立てていない。

 

データ不足でも有効性が明らかに期待できる医薬品が対象

EMAの条件付き承認は、エビデンスは限定的だが、リスクと比較してベネフィットが大きく、条件付き承認後に包括的なデータの提供が確約されている医薬品に与えられる。データが未成熟というマイナスを、迅速に使用を可能にするプラスが上回る医薬品、すなわち重篤な疾患や希少疾患と闘うための医薬品が恩恵を受けられる仕組みだ。

 

EarlyAccessPathways_SMCInterimDecisions_02

 

条件付き承認は1年間有効で、1年ごとに更新される。ライセンスが期限切れになると、EMAは条件付き承認を通常承認に切り替えるが、製薬企業はこの段階で追加のエビデンスを提示し、改めて審査を受けることになる。

 

SMCの暫定収載は、最初の申請で不明確だった要素について、将来的に新たなエビデンスが示される見込みがあると委員会が判断した医薬品が検討の対象となる。

 

暫定償還のメリットを享受できるのは、長期的なリスク/ベネフィットのデータは不足しているものの、有効性が明らかに期待できる医薬品。暫定収載の目的は、NHS Scotlandの業務負担を軽減しつつ、新薬への迅速なアクセスを可能にすることだ。

 

White caplet with reflection on dark background.

 

委員会は、EMAの条件付き承認を拠り所にして、エビデンスの不足に由来するリスクを低減しようとしている。製薬会社にとってEMAの条件付き承認は縛りとなり、再審査に向けた追加データを収集し、可能であれば実臨床のエビデンスも提供する責任を負う。

 

SMCは2019年7月、暫定収載の申請の受け付けを開始したが、詳細は明らかにされておらず、最終的な判断もいまだに公表されていない。

 

EMAの条件付き承認 06~16年で30品目

EMAの条件付き承認と連携した暫定収載が実行に移されたことで、臨床情報と専門知識の再利用が促される。欧州レベルで協調が生まれ、リソースの利用が最適化されるだろう。救命的な治療薬を公正かつ迅速に使えるようにすることは、業界関係者の共通の目標だ。SMCの暫定収載を利用すれば、アクセスを迅速化するチャンスはあるが、基準がEMAの条件付き承認だけに依存している点は制限にもなる。

 

EMAの報告書によると、2006~2016年に条件付き承認を取得した医薬品は、わずか30にとどまる。最近になって、非小細胞肺がんやベータサラセミア、高リポタンパク血症1型、有棘細胞がんなどの治療薬が条件付き承認を得ている。

 

Taking the medicine.

 

暫定収載は、ほかに治療法のない医薬品へのアクセスの強化につながると期待されている。しかし、市場導入までの期間の短縮を目指すと言いながら、暫定収載の適用に向けた申請スケジュールははっきりしていない。

 

スコットランド政府は、個々の患者の治療に対する要望(Individual Patient Treatment Requests:IPTRs)のプロセス改善、患者関与の向上、国民電子健康記録の推進にも力を入れている。超希少疾患の治療薬や終末期向けの医薬品を開発する製薬会社は、NHS Scotlandの範囲内で、規制緩和やアクセスの迅速化が期待できる。その影響は(おそらくプラスの方向で)近いうちに現れてくるだろう。

 

(原文公開日:2019年11月4日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(コマーシャルエクセレンス ディレクター)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-6625-5257(代表)

 

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