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ニュース解説

RNA活用で変わる がんの臨床検査…精度と利便性の向上期待

がんの分野で、RNAを活用した新たな臨床検査の開発が進んでいます。がん関連遺伝子を網羅的に調べる「がん遺伝子パネル検査」では、東京大や大阪大がRNAを使うことで精度を高めた検査の臨床試験を実施中。東レは、血中のマイクロRNAを調べることでがんを早期に診断する検査を開発しています。

 

パネル検査は低調なスタート

今年6月、「がん遺伝子パネル検査」が相次いで保険適用され、遺伝情報に基づいて個々の患者に最適な治療を行う「がんゲノム医療」が本格的に始動しました。

 

がん遺伝子パネル検査は、次世代シークエンサーと呼ばれる機器を使ってがん関連遺伝子の変異を網羅的に調べる検査。現在、国内では「OncoGuide NCCオンコパネルシステム」(シスメックス)と「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」(中外製薬)の2製品が保険適用されています。

 

OncoGuideは114、FoundationOneは324のがん関連遺伝子を1回の検査で調べることが可能。FoundationOneはさらに、国内で承認されている15の分子標的薬のコンパニオン診断薬としても使用できます。

 がん遺伝子パネル検査(19年6月保険適用)の表

 

「使用患者数は3桁台」

遺伝子パネル検査の開発と並行して、厚生労働省は、がんゲノム医療を提供する「がんゲノム医療中核拠点病院」(2019年4月1日現在で全国11カ所)と「がんゲノム医療連携病院」(同156カ所)を指定。今年9月には、両者の中間的な役割を担う「がんゲノム医療拠点病院」に34の医療機関を指定するなど、医療提供体制の整備を進めています。

 

一方で、パネル検査は低調なスタート。6月の保険適用以降、検査を受けた患者の数は、OncoGuideもFoundationOneも3桁台にとどまるといいます。いずれも5年後のピーク時に年間1万3000人程度の使用を見込んでいるものの、現段階では思うように伸びていないのが現状。医療機関からのニーズは高いといいますが、本格的な普及はこれからといった状況です。

 

RNA活用のパネル検査 東大と阪大で開発

こうした中、東京大と大阪大では、RNAを活用した新たなパネル検査の開発が進んでいます。現在、先進医療Bで行われている「Todai OncoPanel」(東大オンコパネル、東大医学部付属病院)と「Oncomine Target Test」(阪大医学部付属病院)は、いずれもDNAパネルとRNAパネルを組み合わせているのが特徴。RNAを使うことで、検査精度の向上を目指しています。

 

先進医療で行われているパネル検査の表

 

東大オンコパネルは、DNAパネルで464遺伝子の変異と増幅を、RNAパネルで463遺伝子の融合転写産物を検出することができ、肺腺がん融合遺伝子や肉腫融合遺伝子も調べることができます。DNAパネルでもいくつかの融合遺伝子を検出することは可能ですが、東大オンコパネルではRNAを使うことで遺伝子数と検出率が大幅に増加。RNAの活用により、「MET」や「CTNNB1」といった遺伝子のエクソンスキッピング変異の検出や、発現量の比較解析も可能になりました。

 

東大は今年6月、コニカミノルタ、国立がん研究センター研究所と、RNAを使った新たなパネル検査の共同研究を開始。東大オンコパネルをベースに、コニカミノルタが2017年に買収した米アンブリー・ジェネティクスの技術を組み合わせ、より包括的な変異情報を取得・解析するプラットフォームの開発を行っており、21年以降の発売を目指しています。アンブリーは、生殖細胞系列遺伝子変異を調べるRNA検査を世界で初めて製品化した企業です。

 

一方、阪大のOncomineは、治療薬に結びつきやすい「ALK」や「ROS1」など46の遺伝子に特化した小型パネル。DNAとRNAを組み合わせて精度を高めつつ、検査範囲を絞ることで費用を安く抑えています。

 

少量の血液で早期診断

治療方針の決定をサポートするパネル検査だけでなく、がんそのものの診断へのRNAの活用に向けた研究開発が進んでいます。RNAを使うことによって、負担の少ない検査でがんを早期に発見できると期待されています。

 

東レと国立がん研究センターは、マイクロRNAバイオマーカーを活用し、ごく少量の血液でがんを診断するシステムを共同で開発。膵臓がんと胆道がんを対象とした検査キット「MI-004」は今年4月、厚生労働省から体外診断用医薬品の先駆け審査指定制度の対象品目に指定されました。いずれも早期発見が難しいがんで、東レは早期の申請を目指して臨床性能を評価する試験を進めています。

 

マイクロRNAは、血液や唾液、尿などの体液に含まれる小さなRNA。疾患に伴って種類や量が変動することが知られており、がんや認知症といった疾患のバイオマーカーとして期待されています。

 

東レのシステムにつながった日本医療研究開発機構(AMED)が支援するプロジェクトでは、国内のバイオバンクから日本人に多い13のがん種の検体を収集。データベースを構築し、バイオマーカーとなり得るマイクロRNAの発現パターンを同定しました。

 

簡便な検査で精度高くがんを判別できると期待されるマイクロRNA検査。MI-004以外にも検査キットの開発が進んでおり、将来的にがんの診断を大きく変える可能性があります。

 

(亀田真由)

 

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