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潰瘍性大腸炎、治療薬の進歩で焦点は寛解後に…治療満足度向上を目指す取り組み

効果の高い治療薬の登場で難治例にも光が見えてきた潰瘍性大腸炎で、患者の治療満足度の向上を目指す動きが増えてきています。新しいバイオマーカー検査や医師とのコミュニケーション支援など、患者負担の軽減に向けた取り組みを展望します。

 

寛解状態を維持しQOLを保つ

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症が起こり、潰瘍やびらん(ただれ)ができる自己免疫疾患。主な症状は血便や下痢で、症状が良くなったり(寛解)、悪くなったり(再燃)を繰り返すのが特徴です。

 

国の指定難病に指定されており、2016年度の全国疫学調査によると、国内の患者数は推計22万人。もともとは欧米で多く見られる疾患でしたが、現在、日本は米国に次いで世界で2番目に患者が多い国となっています。同じ炎症性腸疾患(IBD)のひとつであるクローン病を合わせると、患者数は約29万人に上ると考えられています。

 

潰瘍性大腸炎の発症のピークは20歳代。根治療法はなく、生涯を通して病気と付き合うことになります。治療の基本は炎症を抑える薬物療法で、中心となるのは「アサコール」(メサラジン、ゼリア新薬工業)や「ペンタサ」(同、杏林製薬)などの5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤。効果が得られない場合にはステロイドなどが使用されます。

 

こうした治療薬で効果が得られない難治例に対しても、抗TNF-α抗体「シンポニー」(ゴリムマブ、ヤンセンファーマ)や同「ヒュミラ」(アダリムマブ、アッヴィ)、抗α4β7インテグリン抗体「エンタイビオ」(ベドリズマブ、武田薬品工業)などの生物学的製剤や、JAK阻害薬「ゼルヤンツ」(トファシチニブ、ファイザー)が登場。患者の負担が大きい大腸全摘出手術の件数は大幅に減少しました。

 

潰瘍性大腸炎の薬物治療の表。【寛解導入療法】<非難治>軽症~中等度:5-ASA製剤、ステロイド(局所)・重症:プレドニゾロン注射剤、ステロイド(全身)<難治>中等度~重症:免疫調整薬、抗TNF-α抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体、JAK阻害薬、免疫抑制剤【寛解維持療法】<非難治>軽症~重症:5-ASA製剤<難治>軽症~重症:5-ASA製剤、中等度~重症:免疫調整薬、抗TNF-α抗体製剤、抗α4β7インテグリン抗体、JAK阻害薬。

 

有効な治療薬の登場で、長期的な治療目標は、手術の回避と大腸がんのリスク軽減、そして社会復帰へと移行。より安定した寛解状態を維持し、QOLを高く保つことが焦点となっています。

 

カルプロテクチン、検査の患者負担を軽減

安定した寛解状態を長期に維持する上で欠かせないのが、検査です。潰瘍性大腸炎では、内視鏡検査で病気の活動が見られない「内視鏡的寛解」と診断された場合、予後が飛躍的に良くなることが知られています。

 

潰瘍性大腸炎では患者の病態を把握するために定期的に内視鏡検査が行われますが、侵襲性が高く、身体的な負担が課題。これを解決するものとして注目されているのが、内視鏡検査の結果と相関のあるバイオマーカーであるカルプロテクチンです。カルプロテクチンは、主に好中球から分泌されるカルシウム結合タンパク質で、腸の炎症で特異的に上昇します。便中濃度で計測するため患者負担も軽減でき、欧米では以前からIBDの診断や活動性の評価に使われています。

 

日本では、17年6月に酵素反応を利用したELISA法での検査が保険収載。今年6月にはアルフレッサファーマの体外診断用キット「ネスコート」が承認を取得しました。ネスコートは「金コロイド凝集法」と呼ばれる測定原理を用いており、測定時間はわずか10分。外来当日に結果を知ることができるので、適切なタイミングで治療介入が可能となります。数カ月ごとに検査結果を追いかけることで再発リスクを評価することもできます。

 

潰瘍性大腸炎の主な検査の表。【内視鏡】頻度:年1・2回・侵撃性:高い・精度:高い。<カプセル型>頻度:年1・2回・侵撃性:やや低い・精度:やや高い。【カルプロテクチン】<ELISA法>頻度:3カ月に1回・侵撃性:低い・精度:やや高い。<イムノクロマト法>頻度:3カ月に1回・侵撃性:低い・精度:やや高い。<凝集法>頻度:3カ月に1回・侵撃性:低い・精度:やや高い。

 

カルプロテクチンはあくまでも副次的なマーカーで、完全に内視鏡検査に取って代わるものではありません。しかし、内視鏡検査よりも頻度高く行うことで再燃をいち早く感知でき、場合によっては内視鏡検査の回数を減らすこともできると考えられます。アルフレッサが開催したプレスセミナーで、杏林大の久松理一教授は「結果をすぐに患者に見せながら治療方針を相談できる」と同製品に期待を寄せました。

 

治療満足度向上のカギ握る情報共有

慢性疾患では、薬物治療の向上に伴い、医師が検査結果や治療選択肢を提示し、患者の好みや希望に沿った治療方針を決定する「Shared Decision Making(共有意思決定、SDM)」の重要性が高まっています。医療者が最良と考える治療法への着地を期待するインフォームド・コンセントとは別の考え方で、ここ10年で広く知られるようになりました。

 

SDMとインフォームド・コンセントの違いの図。

 

ヤンセンファーマが日本人IBD患者1035人を対象に行った全国調査によると、92%の患者が「意思決定における情報共有をしたい」と回答。特に潰瘍性大腸炎では、主治医との情報共有の密度が大きい患者は、そうでない患者と比べて、治療満足度が約16倍高いことが明らかになりました。

 

17年4月、ヤンセンは治療支援デジタルサービスを手がけるウェルビーと協働で、スマートフォンアプリ「IBDサプリ」を発表。患者が日々の症状を記録し、医療者と共有できるようにしました。今年7月には武田も同様のアプリ「IBDホーム」をリリース。症状の記録・共有に加え、薬の飲み忘れを防止するリマインド機能や、トイレ検索機能なども備えています。

 

IBDとリウマチを専門とする錦秀会インフュージョンクリニックでは、IBDサプリと遠隔診療システム「CLINICS」を組み合わせたオンライン診療を開始。オランダで行われた研究によると、遠隔診断の利用で外来受診や入院が減少したという報告もあります。今後、患者が社会生活をしながら治療を行う上で、こうしたアプリが重要な役割を担うようになるでしょう。

 

より精度の高い個別化医療へ

海外では、診断の初期段階で病気がどのように進行するか予測し、より精度の高い個別化医療の実現を目指す動きも出てきています。今年4月、英PredictImmuneが英国とアイルランドで新たな血液バイオマーカー検査を発売。英ケンブリッジ大と共同開発した同検査は、治療を始める段階で、強力な治療が必要な患者を特定することが可能だといいます。

 

ヤンセンの全国調査では、生物学的製剤を使っている患者ほど満足度が高いという結果も出ています。いかに再燃を防ぎ、QOLを高く保つか。治療と検査の両面で、さらなる取り組みが期待されます。

 

(亀田真由)

 

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