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キイトルーダと化学療法、併用療法の未来|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、6月に開かれたASCO(米国臨床腫瘍学会)から、免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」と化学療法の併用療法に関する話題をお届けします。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

頭頸部扁平上皮がん対象の「KEYNOTE-048」で好結果

米メルクの抗PD-1抗体「キイトルーダ」はこれまで、単剤療法として▽メラノーマ▽非小細胞肺がん▽頭頸部扁平上皮がん▽古典的ホジキンリンパ腫▽縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫▽尿路上皮がん▽胃腺がん・胃食道接合部腺がん▽子宮頸がん▽肝細胞がん▽メルケル細胞がん――の10のがん種で当局の承認を受けているほか、高頻度マイクロサテライト不安定性のあるがんでは、幅広い固形がんが対象となっている。

 

しかし、キイトルーダの成功を決定付けたのは、化学療法との併用で転移性扁平上皮非小細胞肺がんのファーストライン治療となった2017年の適応拡大だった。それからわずか2年のうちに、キイトルーダと化学療法の併用は、頭頸部扁平上皮がんや胃がんなど、化学療法に感受性のある固形がんの「形勢を一変させ得る」レジメンとして認められた。

 

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昨年後半、未治療の頭頸部扁平上皮がん患者を対象に行われた「KEYNOTE-048試験」の結果が発表され、キイトルーダと化学療法の併用療法は、標準治療であるEXTREMEレジメン(セツキシマブ+シスプラチン/カルボプラチン+フルオロウラシル)に比べて全生存期間(OS)を有意に延長したことが示された。これには、最大の懐疑論者さえもが、この併用療法に好意的な見解を表明した。

 

同試験の最終解析結果は今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表された。それによると、キイトルーダと化学療法(プラチナ製剤+フルオロウラシル)の併用は、CPS(PD-L1陽性スコア)≧20の患者群、CPS≧10の患者群、そして全患者でEXTREMEより優れたOSベネフィットを示しただけでなく、CPS≧20とCPS≧10の両群で奏功期間を延長した(CPS≧20で7.1カ月 vs 4.2カ月、CPS≧10で6.7カ月 vs 4.3カ月)。加えて、キイトルーダ単剤もCPS≧20群とCPS≧10群で優れたOSを示し、全患者でEXTREMEレジメンに対する非劣勢を示した。

 

胃がん対象の「KEYNOTE-062」では優越性示せず

KEYNOTE-048試験により頭頸部扁平上皮がんの治療は一変する可能性がある。一方で、胃がんでの見通しはそう明るいものではない。

 

今年4月、当初予定されていた「KEYNOTE-062試験」の終了から遅れること2カ月、メルクは短いプレスリリースを出し、胃腺がん・胃食道接合部腺がんに対するファーストライン治療としてキイトルーダ単剤とキイトルーダ+化学療法(シスプラチン+フルオロウラシルまたはカペシタビン)を評価した同試験の結果、主要評価項目を達成できなかったと発表した。

 

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同試験の結果はASCOでも発表された。それによると、キイトルーダ単剤は化学療法に対してCPS≧1の患者群でOSの非劣勢を示した。しかし、キイトルーダ+化学療法は、CPS≧1、CPS≧10のいずれの患者群でも、化学療法に対してOSで優越性を示すことができなかった(CPS≧1ではHR=0.85、P=0.046、CPS≧10ではHR=0.85、P=0.158)。

 

こうした結果は、実臨床でどういった意味を持つのだろうか。キイトルーダと化学療法の併用療法が「万能レジメン」となる可能性はあるのだろうか。KEYNOTE-062試験の失敗は、キイトルーダと別の化学療法の組み合わせに向かわせるのだろうか、それとも胃がんという強敵の前に屈してしまうのだろうか。

 

キイトルーダ+化学療法、P2・P3で150以上の試験

KEYNOTE-048試験の肯定的な結果は、頭頸部扁平上皮がんの治療を転換させることになるだろう。ASCOの専門家パネルも、キイトルーダをファーストラインとして使用することを支持している。

 

一方で医師らは、ファーストラインといえばキイトルーダ単剤、という状態に辟易しているようだ。米FDA(食品医薬品局)は6月10日、PD-L1陽性(CPS≧1)の頭頸部扁平上皮がんを対象に、キイトルーダ単剤療法、化学療法との併用療法の両方を承認したと発表した。医療現場でどちらのレジメンが医師に好まれるかは、時がたてばわかるだろう。キイトルーダ単剤療法は、虚弱な患者や化学療法が使えない患者への選択肢となると主張する向きもあるかもしれない。しかし、そうした患者はKEYNOTE-062試験の基準からすると適格ではなかったはずなので、同試験のデータがぴたりと当てはまるわけではない。

 

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Decision Resources Groupの最新のまとめによると、キイトルーダ+化学療法を検討するP2試験とP3試験は、現在までに150以上が登録されている。非小細胞肺がんや頭頸部扁平上皮がんでの結果は有望であり、使用を後押しするものとなっている。一方、胃腺がん・胃食道接合部腺がんでの結果は、がん種に固有の特徴が免疫療法単剤や化学療法との併用療法に対する反応にどれだけ影響するのかを物語っている。

 

やはりこの分野は興味深く、向こう数年は目を離すことができないだろう。

 

(原文掲載日:2019年6月24日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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