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膀胱がん治療、多様化の時代へ|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、転移性膀胱がんに対する新薬開発。米国臨床腫瘍学会(ASCO)では、治療選択肢の拡大を期待させる、複数の分子標的薬の臨床試験データが発表されました。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

アンメットニーズの高い転移性膀胱がん

これまで、転移性膀胱がん患者に使える治療は化学療法だけだった。シスプラチンベースの治療の適応とならない患者は半数に上り、治療選択肢は非常に限られている。化学療法や免疫療法のあとに進行した患者や、こうした治療で効果を得られなかった患者に使える新たな治療薬には、大きなアンメットニーズがある。

 

ASCO2019では膀胱がんに対する多様なパイプラインが取り上げられ、膀胱がんがほかのがん種の状況にようやく追いついてきたこと、そして、さまざまな作用機序を持つ薬剤が効果をもたらしつつあることにスポットが当てられた。こうした新規薬剤が膀胱がん患者に提供し得るベネフィットについて、ASCOでの発表をもとに紹介する。

 

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【FIERCE-22試験】FGFR3阻害薬Vofatamab 転移性膀胱がんにおける全奏効率が有望

膀胱がんの分野では、最近、米FDA(食品医薬品局)が「Balversa」(一般名・erdafitinib)を承認し、分子標的治療が注目を集めている。こうした状況の中、ASCO2019では、FGFR阻害薬vofatamabの臨床第1b/2相試験「FIERCE-22」の結果が話題となった。

 

FIERCE-22は、プラチナ抵抗性の転移性尿路上皮がん患者を対象に、vofatamabとキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の併用療法を検討した試験。客観的奏効率(ORR)は30%で、忍容性の高い治療であることが示された。管腔様の腫瘍は免疫学的に“コールド”であることが多いが、それらの腫瘍がvofatamabに強く反応していると考えられることは注目される。この結果は、vofatamabとキイトルーダの相乗的に作用し、抗腫瘍免疫反応をもたらすことを示唆している。

 

【HCRN GU14-182試験】1次治療として化学療法を行った転移性膀胱がん患者に、維持療法としてキイトルーダを投与

「HCRN GU14-182試験」は、転移性膀胱がん患者に維持療法としてキイトルーダを投与する試験で、より深い奏効と無増悪生存率(PFS)の延長にフォーカスしている。キイトルーダを維持療法として使うことで、化学療法の投与期間を短縮し、結果として副作用の軽減が期待される。

 

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この試験では、患者をキイトルーダ維持療法群またはプラセボ群に無作為で割付し、プラセボ群の患者にはキイトルーダへの切り替えが許容されました。

 

結果によると、PFS中央値は、プラセボ群3.2カ月に対してキイトルーダ群5.4カ月と有意に延長。ORRはキイトルーダが22%、プラセボが12%だった。キイトルーダが転移性膀胱がんの維持療法として使用できるようになるかは、P3試験の全生存期間(OS)データによって決まるだろう。

 

治療のシークエンシングも課題となる。免疫チェックポイント阻害剤は、疾患の早い段階で使うのか、それによって以降の治療選択肢が限られてくるのか。転移性膀胱がんのセカンドライン治療として承認された薬剤の多くは、すでにリストから外れている。維持療法として免疫チェックポイント阻害剤を使用することには、慎重になるべきだろう。

 

【EV-201試験】enfortumab vedotinの極めて重要なP2試験、化学療法・免疫療法の実施後に進行した患者で有望な結果

ASCO2019での膀胱がんに関する発表の中で最も革新的であり刺激的だったのは、enfortumab vedotinを評価する極めて重要なP2試験「EV-201」の結果だろう。発表では、化学療法と免疫療法の両方を実施しても進行が抑えられなかった患者のデータが示された。

 

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それによると、enfortumab vedotinは、ORR42%、完全奏効率9%という素晴らしい成績だった。化学療法と免疫療法の実施後に進行した患者には現在、有効な治療法がないことを考えると、これは意義ある結果だ。

 

この領域のキーオピニオンリーダーらは、enfortumab vedotinはアンメットニーズに応える極めて有望な治療薬である、との意見で一致している。enfortumab vedotinは抗体薬物複合体(ADC)で、膀胱がんでは新しい薬剤クラスの代表格でもある。バイオマーカーがさらに明らかになれば、この薬剤クラスは伸びる可能性があることが示された。

 

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【RC-48】中国のRemegen、HER2標的のADCを開発

ASCO2019では、膀胱がん治療の標的としてHER2を使おうという動きも見られた。

 

中国のRemegenは、HER2を標的としたADC「RC-48」のP2試験結果を発表した。対象は、化学療法後に内蔵転移した転移性尿路上皮がん患者。全身治療の経験が1回以上あるHER2陽性患者で、ORR 60.5%という結果を出したのは見事だった。

 

分子標的治療の開発が活発に

これらの発表は、膀胱がん治療薬市場の急展開を予感させる。膀胱がんの理解が分子レベルで深まり、分子標的治療へのシフトが進むだろう。

 

このことは、低分子薬だけでなく、HER2やネクチン4などを標的とする複数のADCとして現れている。治療選択肢が多様化することで、将来、膀胱がんでも生存可能な患者が増えると期待される。進展が待たれる部分も多いが、研究開発は確かな足取りで正しい方向へと進んでいる。

 

(原文公開日:2019年6月14日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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