2019年6月に米FDA(食品医薬品局)が承認した主な新薬と適応拡大をまとめました。
【新薬】PolivyやVyleesiなど
「Nucala(新剤形)」英グラクソ・スミスクライン
重症喘息・好酸球性多発血管炎性肉芽腫症治療薬「Nucala」(一般名・mepolizumab)は、オートインジェクター製剤とプレフィルドシリンジ製剤が新たに承認されました。従来の凍結乾燥製剤ではできなかった自己投与が可能となり、利便性の向上が期待されます。日本では凍結乾燥製剤が発売されています。
「Polivy」米ジェネンテック(スイス・ロシュ)
抗CD79b抗体「Polivy」(polatuzumab vedotin)は、再発・難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を対象に、bendamustineとrituximabとの免疫化学療法で承認されました。日本では、同じ適応で臨床第3相(P3)試験が行われています。
「Vyleesi」米AMAG
「Vyleesi」(bremelanotide)は、米国で閉経前女性の10%が罹患する後天性の性的欲求低下障害の治療薬です。性的活動の前に患者が自己投与することで、症状に付随する痛みや人間関係の苦しみを和らげると期待されています。
【適応拡大】Emgalityの群発頭痛、Keytrudaの小細胞肺がんなど
「Zerbaxa」米メルク
β-ラクタマーゼ阻害薬配合抗菌薬「Zerbaxa」(ceftolozane/tazobactam)は、グラム陰性菌による成人の院内感染・人工呼吸器関連肺炎への適応拡大で承認されました。米国では14年に腹腔内感染症と尿路感染症の適応で承認。日本でも6月25日に発売されました。
「Emgality」米イーライリリー
片頭痛治療薬の抗CGRP抗体「Emgality」(galcanezumab)は、新たに反復発作性群発頭痛の適応で承認。臨床試験では、71.4%の患者で痛みを伴う発作の頻度を半分以下にしました。同薬は18年に片頭痛の予防薬として承認を取得しており、群発頭痛の治療薬としては米国初。日本では片頭痛の適応でP3試験を実施中です。
「Keytruda」米メルク
免疫チェックポイント阻害薬「Keytruda」(pembrolizumab)は、6月に▽PD-L1陽性の転移性または切除不能の再発頭頸部扁平上皮がんの一次治療▽転移性または切除不能の再発頭頸部扁平上皮がんに対するプラチナ製剤、フルオロウラシルとの併用療法(PD-L1発現を問わず、一次治療)▽転移性の小細胞肺がん(セカンドライン以降)――の3つの適応拡大が承認されました。
「Victoza」デンマーク・ノボ ノルディスク
GLP-1受容体作動薬「Victoza」(liraglutide)は、10歳以上の小児の2型糖尿病を対象に承認。小児対象の薬剤としては、メトホルミンが00年に承認されて以来、19年ぶりのインスリンフリーの治療薬です。日本では成人を対象に販売されています。
「Symdeko」米Vertex
嚢胞性繊維症治療薬「Symdeko」(tezacaftor/ivacaftor)は、特定の遺伝子変異をもつ6歳以上の小児患者への適応拡大が承認されました。嚢胞性繊維症は、肺や消化管などに厚い粘液の蓄積をつくる遺伝性疾患。18年に12歳以上の患者で承認を取得しており、対象年齢が広がりました。
「Dupixent」米リジェネロン
米リジェネロンが仏サノフィと共同で開発するアレルギー性鼻炎・喘息治療薬「Dupixent」(dupilumab)は、鼻ポリープのあるコントロール不十分な慢性副鼻腔炎を対象に承認を取得。手術やステロイド治療を回避しながら、鼻ポリープを縮小し嗅覚を改善します。日本でも同適応でP3試験を実施しています。
「Soliris」米アレクシオン
抗補体(C5)抗体「Soliris」(eculizumab)は、抗AQP4抗体陽性の成人の視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)治療薬として承認されました。同疾患に対する治療薬は米国初。抗AQP4抗体は、NMOSDの発作を引き起こす原因で、患者の約73%で陽性。日本でも同適応で申請中です。
(亀田真由)