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“患者発”の医薬品開発を日本でも―東大と3HHD、希少疾患薬の開発支援プログラム

東京大と3Hホールディングスが、“患者発”の希少疾患向け医薬品開発を支援する共同プログラムを開始します。希少疾患患者と研究者をマッチングし、患者からは医療情報や検体の提供を、研究者からは研究成果の共有ができるシステムを構築。欧米で広がる「患者中心」の医薬品開発を日本にも根付かせたいといいます。

 

患者が主体的に医薬品開発に参加できる仕組みを

東京大と3Hホールディングス(HD、旧クロエグループ)は5月20日、希少疾患向け医薬品の開発を支援する「患者中心主義に基づく希少疾患研究開発プログラム(Patient Centricity in Rare Disease R&D Program、略してPCRD2)」を共同で開始すると発表しました。患者が自ら情報を管理し、それを利活用することをベースに、医薬品開発に主体的に参加できる仕組みづくりを目指します。

 

PCRD2は、東大大学院薬学系研究科ITヘルスケア社会連携講座での共同研究として実施。同講座は、ICTを使った医薬品開発や適正使用の促進について研究しており、3HHDのほかにも、塩野義製薬や中外製薬、アストラゼネカなどと共同研究を行っています。

 

希少疾患患者と研究者を結びつけるマッチングシステムを構築

PCRD2では、3HHDが希少疾患の患者(診断のつかない患者候補を含む)と製薬企業・バイオベンチャー・研究機関の研究者をマッチングするシステムを構築します。システムではまず、患者側から新薬開発など研究への要望や期待を、研究者から研究の目的や期待される成果を共有。双方の了解が得られれば、患者が医療情報や検体(血液サンプルなど)を研究者に提供し、研究者はそれを活用して行った研究の成果をフィードバックします。

 

PCRD2プログラムの仕組み

 

一方、ITヘルスケア社会連携講座は、患者と研究者のコミュニケーションを促進する役割を担います。6月中旬には、システムの運用に先駆けて希少疾患患者向けのアンケート調査を実施。どんな疾患を持っていて、どんな解決策を望んでいるか、研究に参加する意欲があるか、などをヒアリングします。同時に、研究者向けの説明会も行い、研究者側のニーズも探ります。

 

7月からシステムの運用を開始

システムの運用開始は7月ごろを予定しており、その後は、患者と研究者の間でコミュニケーションのギャップがないか、双方の満足が得られているかなど、改善点を把握。患者が主体的に参加できる医薬品・医療機器開発のあるべき姿を提言します。

 

6月から開始するプログラム第1期では、疾患単位で20のプロジェクトを実施する予定。参加する企業・研究機関はプロジェクト単位で資金を提供します。

 

3HHDは、全国で約83万人が登録している治験情報サイト「生活向上WEB」や、希少疾患情報サイト「RareS.」などを運営。3Hライフサイエンス研究所の牧大輔所長は20日の記者会見で、希少疾患は市場が小さいため製薬企業がアプローチしづらい現状があるとし、「私たちが身近にアクセスできる希少疾患の患者から始めたい」と語りました。

 

希少疾病の研究を阻むコミュニケーションの課題

牧所長は、研究者と患者の対話不足や患者側のイメージの偏りが研究を難しくしている要因の一つだと指摘。これは、開発のトレンドが希少疾患に移っても同じだといいます。

 

希少疾患や難病の領域では、診断法・治療法が確立されていない疾患も少なくありません。疾患や病態の解明に必要な情報をデータベース化する取り組みが日本医療研究開発機構(AMED)などの主導で始まっており、患者の生体情報を管理する「バイオバンク・ジャパン」や、臨床・遺伝子変異データを集める「MGeND」などが行われています。

 

ただし、データは個々の医療機関がそれぞれのフォーマットで保管している場合も多く、データベースに格納したり、研究者がそこにアクセスしたりするには壁があります。また、研究者が患者に直接コンタクトをとることが制限されているケースもあり、対話が困難なことが研究の妨げとなっていると牧氏は指摘します。

 

PCRD2が目指すのは、患者が自らの情報を自らの手で管理することです。ITヘルスケア社会連携講座の今村恭子特任教授は会見で、「患者自身が一生を通してデータを管理していくのが本来の形」と強調。患者自身が情報の持ち主となれば、患者が自らの意志で情報を提供するかしないかを決めることができ、それが研究を加速させることにつながると期待しています。

 

患者が情報のオーナーとなる利点。従来は患者と研究者が情報のやり取りをする際に、制限がある場合もある。患者が情報のオーナーとなる場合、研究者と合意できれば、情報を直接提供ができる。

 

患者が自ら情報を管理し、研究への提供を判断

患者は主体的に研究参加する取り組みは、すでに欧米で広がっており、米食品医薬品局(FDA)や欧州医薬品庁(EMA)などの規制当局は、研究のデザインから製品化まで、患者が関わる機会を設けています。患者が自らの体験をシェアする希少疾患患者SNS「PatientLikeMe」は、100以上の研究の情報源となっているといいます。欧州では、患者が医薬品開発に参加する上で必要な知識を提供する患者支援団体主導の教育プログラムが行われています。

 

日本でも2年ほど前から、AMEDが患者・市民参画(Patient and Public Involvement:PPI)を推進する取り組みを開始しました。

 

患者が情報のオーナーとなり、主体的に研究開発に参画するには、患者の知識不足を解消して研究者との対話を可能にすることが重要です。牧所長は、PCRD2を通じて、患者が正しい知識を得る枠組みをビジネスとして日本に根付かせたいといいます。

 

PCRD2が掲げる「患者中心」とは、情報を管理する患者が、自らの判断に基づいて研究に協力するかどうかを決めること。新たに構築するマッチングシステムを患者と研究者の対話の基盤とし、患者が研究者のパートナーとして研究開発に参画できるようになることを目指します。

 

(亀田真由)

 

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