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【糖尿病】世界初 経口GLP-1受容体作動薬が登場間近―ノボのセマグルチド、DPP-4阻害薬と競合

2型糖尿病治療の新たな選択肢として、経口のGLP-1受容体作動薬の登場が近づいています。今年3月、デンマーク・ノボがセマグルチドの経口剤を米国で申請。日本でも臨床第3相試験を終えており、申請は間近とみられています。ちょうど10年前、DPP-4阻害薬の発売で大きく変わった2型糖尿病の治療。今は注射剤しかないGLP-1受容体作動薬ですが、経口剤が登場すれば存在感は一気に高まりそうです。

 

ノボ 経口セマグルチドを米国申請、日本もP3完了

デンマークのノボノルディスクは3月20日、GLP-1受容体作動薬セマグルチドの経口剤を米FDA(食品医薬品局)に申請しました。1日1回投与の錠剤で、適応は▽2型糖尿病患者の血糖コントロール▽2型糖尿病患者の心血管リスクの低減――。血糖コントロールの適応では、優先審査によって6カ月で承認の可否が判断される予定で、順調にいけば年内にも世界初の経口GLP-1受容体作動薬が登場する見通しです。

 

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、膵臓のβ細胞上にあるGLP-1受容体に結合し、食事による血糖値の上昇に応じてインスリンの分泌を促すと同時に、血糖値を上昇させるグルカゴンの分泌を抑制する薬剤。血糖降下作用が高く、低血糖を起こしにくい上、体重を減らす効果を持つのが特徴です。

 

GLP-1受容体作動薬は、すでに国内外で複数の製品が販売されているものの、注射剤しかないことが1つの大きな欠点となっていました。消化管で分解されやすいため経口投与は難しいと考えられてきましたが、ノボは米エミスフィア・テクノロジーズと提携し、同社の薬物送達技術を使って錠剤化を実現。10本の臨床第3相(P3)試験で有効性・安全性を確認し、世界初の申請にこぎつけました。

 

経口セマグルチドは日本でもP3試験を終えており、近く申請が行われるとみられています。

 

国内市場でも高まる存在感

IQVIAの医薬品市場統計によると、2018年の国内糖尿病治療薬市場は薬価ベースで5493億円(前年比0.2%減)。患者数の増加と新薬の普及で、抗がん剤(1兆2000億円、前年比9.6%増)に次ぐ一大市場に成長しました。

 

現在、治療の中心となっているのが、日本では2009年以降10製品が相次いで発売されたDPP-4阻害薬です。最近では、DPP-4阻害薬とメトホルミンの配合剤も売り上げを拡大させています。14年からは、インスリンを介さない作用機序が特徴のSGLT-2阻害薬も7製品が続々と登場。DPP-4阻害薬との配合剤も含め、徐々に使用が広がっています。

 

GLP-1受容体作動薬は、10年の「ビクトーザ」(一般名・リラグルチド、ノボ)、「バイエッタ」(エキセナチド、アストラゼネカ)を皮切りに、13年に「ビデュリオン」(同)と「リキスミア」(リキシセナチド、サノフィ)、15年に「トルリシティ」(デュラグルチド、日本イーライリリー)が発売。当初、市場浸透は緩やかでしたが、じわじわと存在感を増しており、トルリシティは18年に薬価ベースで213億円(前年比52.2%増)と売り上げを大きく伸ばしています。

 

国内で承認されているGLP-1受容体作動約の表。ビクトーザ(リラグルチド)、製造販売元:ノボノルディクス、投与頻度:1日1回、販売:10年6月。バイエッタ(エキセナチド)、製造販売元:アストラゼネカ、投与頻度:1日2回、販売:10年12月。ビデュリオン(エキセナチド)、製造販売元:アストラゼネカ、投与頻度:週1回、販売:13年5月。リキスミア(リツキシセナチド)、製造販売元:サノフィ、投与頻度:1日1回、販売:13年9月。トルリシティ(デュラグルチド)、製造販売元:イーライリリー、投与頻度:週1回、販売:15年9月。オゼンピック(セマグルチド)、製造販売元:ノボノルディクス、投与頻度:週1回、販売:未発売。

 

経口剤はDPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬と競合

グローバルで9543人の患者を対象に行われた経口セマグルチドのP3試験プログラム「PIONEER」では、DPP-4阻害薬「ジャヌビア」やSGLT-2阻害薬「ジャディアンス」との直接比較試験も行われており、いずれも主要評価項目(投与26週後のHbA1cの改善)を達成。ジャヌビアとの比較では、体重も有意に減少させました。

 

さらに、日本人患者を対象に行った試験では、注射のGLP-1受容体作動薬であるビクトーザやトルリシティとの比較でHbA1cを有意に低下させ、体重も有意に減少。トルリシティとの比較では、主要評価項目である有害事象の発現頻度も同程度でした。

 

経口剤が登場すれば、GLP-1受容体阻害薬のポジションはさらに高まるでしょう。臨床試験のデザインから考えると、ノボは経口セマグルチドについて、注射剤からのシフトはもちろん、DPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬から処方を奪うことも狙っていると言えます。特に、同じ「インクレチン関連薬」に分類されるDPP-4阻害薬とは激しく競合することになりそうです。

 

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リリー 経口GLP-1を中外から導入

経口のGLP-1受容体作動薬をめぐっては、米イーライリリーが昨年、中外製薬から「OWL833」を導入。P1試験の開始に向けて準備を進めています。

 

リリーはさらに、GIPとGLP-1という2つのインクレチンに作用するtirzepatideのP3試験を実施中。18年10月に発表されたP2b試験の結果では、投与26週後にプラセボとの比較でHbA1cと体重を大幅に低下させました。GLP-1受容体作動薬では、サノフィとノボが基礎インスリンとの配合剤を開発しており、いずれもP3試験に入っています。アストラゼネカはGLP-1受容体とグルカゴン受容体に作用する「MEDI0382」のP1/2試験を進めています。

 

国内で開発中の2型糖尿病治療薬の表。【ノボノルディスク】<セマグルチド(オゼンピック)>開発段階:P3、作用機序:GLP-1受容体作動薬(経口)。<リラグルチド(ビクトーザ)>開発段階:P3、作用機序:GLP-1受容体作動薬(用法用量変更)。<インスリン デグルデク/リラクルチド(NN9068)>開発段階:P3、作用機序:基礎インスリン+GLP-1受容体作動薬。【サノフィ】<インスリン グラルギン/リキシセナチド>開発段階:P3、作用機序:基礎インスリン+GLP-1受容体作動薬。【イーライリリー】<tirzepatide(LY32981768)>開発段階:P3、作用機序:GIP/GLP-1受容体作動薬。<OWL833>開発段階:P1準備中、作用機序:GLP-1受容体作動薬(経口)。【大日本住友/ポクセル】<imeglimin>開発段階:P3、作用機序:ミトコンドリア機能改善。【アストラゼネカ】<MEDI0382>開発段階:P1/2、作用機序:GLP-1/グルカゴン受容体作動薬。

 

2型糖尿病治療薬としてはこのほか、大日本住友製薬が仏ポクセルから導入したimegliminを開発中。ミトコンドリア機能を改善するという新規の作用機序をもっており、血糖依存的にインスリンの分泌を促進するとともに、インスリン抵抗性を改善し、肝臓での糖新生を抑制すると考えられています。

 

日本では3本のP3試験からなるTIMES試験を行っており、あわせて1100人超の患者を対象に有効性と安全性を評価しています。4月には、1本目のP3試験「TIMES1」で投与24週後のHbA1cをプラセボに比べて有意に改善したと発表。20年の申請を目指しています。

 

(亀田真由)

 

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