米国に本社を置くコンサルタント会社Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、ギリアドのP3試験失敗でNASH治療薬の開発レースでトップに躍り出たobeticholic acid(オベチコール酸)を取り上げます。この領域初の治療薬として承認の期待がかかりますが、同薬には大きく3つの課題が残されているとアナリストは指摘します。
(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
線維化改善は患者の2割
米インターセプトは、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)に対する薬剤として、史上初めて臨床第3相(P3)試験でポジティブな結果を出したと主張できる企業になった。同社のobeticholic acidがP3試験「REGENERATE」で線維化を1ステージ以上改善させたのは、目覚ましいブレークスルーと言える。ただ、検討されるべき課題もいくつかある。
・ベネフィットが認められた患者はごく一部に過ぎない。
・コレステロールの上昇を招いた。
・有害事象の中でも、特にかゆみが重度だった。
REGENERATE試験では、オベチコール酸25mgを投与した患者の23.1%が1ステージ以上の線維化の改善を達成した。肝線維化は生活習慣を改善することで長期的に回復する可能性があるが、それは同試験でも認められ、プラセボ群でも11.9%の患者で1ステージ以上の線維化の改善が見られた。
肝線維症の分類は4ステージしかないので、1ステージの改善は非常に高い効果と評価できる。しかし、それの効果を得られるのが2割にとどまるのでは、NASHの治療に転換をもたらすということにはならないだろう。
LDLコレステロールが上昇
REGENERATE試験では、obeticholic acid投与中にLDLコレステロールが4週目に最大22.6mg/dL上昇し、その後、回復するといったことが見られた。LDLコレステロールの上昇は問題ではあるが、それでも同薬が承認されるであろうことに変わりはないと私は考えている。
規制当局は、REGENERATE試験の最後の数年で、CVの長期的安全性におけるより高い確実性を確保するだろう。とはいえ、添付文書にLDL-Cの増加がはっきりと記載された場合、多くの医師はよくない印象を受けるはずだ。
重度のかゆみ 頻度は5%
obeticholic acidで最も頻繁に見られた有害事象は、用量依存的なそう痒(かゆみ)で、同薬を投与した患者の51%で生じた。ただ、プラセボでも19%でかゆみが出たことを考えると、重度のかゆみを評価した方がいいだろう。
重度のかゆみが起こった患者は、プラセボ群では1%未満だったのに対し、obeticholic acid 25mg群では5%に上った。さらに同薬群では3%に胆石症や胆嚢炎が生じたが、プラセボ群では1%未満だった。5%に満たない患者に重度の副作用が出たからといって、obeticholic acidが承認を逃すことはないだろう。しかし、NASHが一般に急性の危険を伴わない慢性疾患であることを考えると、忍容性の問題は処方(治療)の継続を妨げることになりかねない。
2月には、ライバルの米ギリアドが、selonsertibのP3試験「STELLAR-4」で主要エンドポイント未達となり、obeticholic acidは一番乗りの大本命となった。この領域では今後も開発イベントが目白押し。selonsertibのもう1本のP3試験「STELLAR-3」は極めて重要な臨床試験の1つになるとみられ、今年第1四半期(1~3月)と予想されるデータの発表に注目が集まる。
(原文公開日:2019年2月20日)
【AnswersNews編集長の目】ギリアドがselonsertibのP3試験に失敗したことで、NASH治療薬の開発レースでトップに躍り出たインターセプトのobeticholic acid。2月に発表されたP3試験の結果を受け、同社のマーク・プルザンスキーCEO(最高経営責任者)は「アンメットニーズに対処するために求められている治療選択肢の提供に一歩近づいた」とコメントしました。
obeticholic acidは米FDA(食品医薬品局)からブレークスルーセラピーに指定。インターセプトは2019年後半に同薬を欧米で申請する方針で、NASHに対する初の治療薬の登場が現実味を帯びてきました。
一方、日本では、大日本住友製薬が、P2試験を終えた段階で同薬の権利をインターセプトに返還。国内では開発されていない状況で、日本でNASH治療薬が登場するのはもうしばらく先になりそうです。 |
この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。
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