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イベニティ 日本で承認、米で承認勧告―骨粗鬆症治療薬 市場はどうなる|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルタント会社Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。心血管リスクへの懸念から審査が長引いていた骨粗鬆症治療薬「イベニティ」が日本で承認され、米国でも承認が勧告されました。市場にどんな影響を与えるのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

申請から2年半越しの承認勧告

米FDA(食品医薬品局)の諮問委員会は、アムジェン/UCB/アステラス製薬の骨粗鬆症治療薬「イベニティ」(一般名・ロモソズマブ)の承認を勧告した。まだ確定したわけではないが、FDAは米国でのイベニティの販売を承認するようだ。承認されれば今年1月の日本に続くもの。2016年7月の米国申請からおよそ2年半越しの朗報に、アムジェンとUCB、そしてアステラスの社内では歓声が上がったことだろう。

 

2016年、アムジェン/UCBは米国と日本でイベニティの製造販売承認を申請した。申請は閉経後女性の骨粗鬆症患者を対象に行った臨床第3相(P3)試験「FRAME」の結果に基づくものだ。この試験の結果はめざましく、かつてない骨密度の増加を脊椎骨折率の減少を示した。

 

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心血管リスクで一時は承認されず

イベニティの未来は明るく見えたが、2017年に2本目のP3試験「ARCH」の結果が発表されると、雲行きが怪しくなった。この試験は、骨折の危険性の高い閉経後骨粗鬆患者を対象に、イベニティとビスホスホネート製剤のアレンドロン酸を比較。イベニティは骨折の危険性を有意に低下させたが、重篤な心血管系イベントの頻度がアレンドロン酸よりも有意に高かった(2.5% vs. 1.9%)。この結果を受けFDAは、2017年7月に審査完了報告通知を出し、データの再提出を要求。イベニティの将来に突然、影が差しはじめたのだ。

 

2016年、メルクは、有望視された骨粗鬆症治療薬odanacatibについて、臨床試験で脳卒中リスクの上昇が確認されたことから開発を中止した。イベニティも同じ運命をたどるのではないかという観測もあったが、アムジェンとUCBは開発を断念することなく、2018年1月に欧州で申請し、同年7月にFDAにも申請を再提出した。

 

そして今年1月、イベニティは日本で承認され、翌週にはFDA諮問委員会が承認勧告を出した。アムジェンとUCBにとって、良いニュースが続いている。

 

黒枠警告の影響は

多くの骨粗鬆症患者がイベニティ承認の報を喜ぶだろう。

 

現在、骨形成の作用を持つ骨粗鬆症治療薬は、イーライリリーの「フォルテオ」とラジウス・ヘルスの「Tymlos」だけ。いずれも副甲状腺ホルモン(PTH)製剤で、イベニティの登場前はこれらが入手可能な骨粗鬆症治療薬としては最も有効なものだった。

 

しかし、PTH製剤には欠点もある。骨肉腫のリスクを高めるため、使用は生涯で2年間に制限され、放射線治療を受けた患者(がん患者など)には処方できない。さらに、ほかの骨粗鬆症治療薬よりもコストが高く、経済的な面でも使用のハードルが高い。

 

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イベニティは患者が待ち望んでいた新たな治療オプションとなるが、難点もある。

 

FDAの懸念をクリアするため、アムジェンとUCBは心血管系リスクについて添付文書に黒枠警告を設けることを提案した。骨粗鬆症患者は一般的に高齢で、心血管系の疾患を有する割合も高い。おそらく、黒枠警告はイベニティの売り上げを抑制することになるだろうが、それでもこれが承認取得の唯一の方法だったのだから仕方ない。

 

黒枠警告を削除するのは難しい

FDA諮問委はまた、アムジェン/UCBが市販後の観察研究を行うべきだということにも同意した。無作為化対照試験のほうが優れている(観察試験の患者集団はラベルの制限によりリスクがより低い)が、諮問委は最終的に観察研究で承認を勧告することを決めた。

 

しかし、もしもアムジェンとUCBが発売後に黒枠警告を取り除くことを望んでいるとしたら、歴史は両社の味方ではない。過去、黒枠警告の削除に成功した医薬品は「Avandia」「Chantix」、ICS/LABAs、「Letairis」「Vivitrol」「Zyban」などごくわずかだ。

 

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フォルテオの黒枠警告はブロックバスター化の妨げにはならなかったが、これは明確に定義された患者集団を対象としたものだ。もしFDAがイベニティに広い警告ラベルを与えることを決めれば、Tymlosやフォルテオよりもかなり広い範囲の患者を含むことになる。より明確に定義されたラベル(例えば「1年以内に脳卒中/MIを起こした患者」など)であれば、ダメージは小さくなる。

 

乏しい開発パイプライン

現在、骨粗鬆症治療薬の開発は限られており、市場はジェネリック化が進んでいる。段階的な治療が一般的で、ほとんどの患者がアレンドロン酸のジェネリックから治療を始める。

 

さらに、メルクが予算をつぎ込んできたodanacatibの開発を中止したことは、この領域に衝撃を与えた。昨年、われわれの取材に答えてくれたソートリーダーらは、イベニティに否定的な声が「骨粗鬆症分野の薬剤開発はリスクが高すぎて潜在的な見返りが低い」といった意見をより強固にしてしまうのではないかと心配していた。これは、現在の乏しい骨粗鬆症治療薬パイプラインに反映されている。

 

しかし、イベニティの承認やフォルテオなどの成功は、この市場に現実的なチャンスがあることを示している。

 

(原文公開日:2019年2月13日)

 

【AnswersNews編集長の目】

骨吸収の抑制と骨形成の促進という両面の作用をあわせ持つ骨粗鬆症治療薬の抗スクレロスチン抗体「イベニティ」。日本では2016年12月の申請から約2年越しで今年1月に承認され、3月4日に発売されました。

 

医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、懸念された心血管系イベントについて「臨床成績を考慮すると、ベネフィット・リスクバランスの観点から、本剤投与時の心血管系事象に関する安全性プロファイルは臨床上許容可能を判断した」(審査報告書)。添付文書の「効能・効果に関連する使用上の注意」の項で「投与にあたっては、ベネフィットとリスクを十分に理解した上で、適用患者を選択すること」と注意喚起がなされています。

 

中央社会保険医療協議会(中医協)の資料によれば、同薬はピーク時に薬価ベースで329億円の売り上げを予測。大型化を見込んでいます。

 

骨粗鬆症治療薬をめぐっては2月、旭化成ファーマが子会社を通じてPTH製剤「テリボン」のオーソライズド・ジェネリック(AG)の承認を取得。同「フォルテオ」(日本イーライリリー)にもそう遠くない時期にバイオシミラーが参入する見通しです。テリボンAGの発売時期は明らかにはなっていませんが、新薬の登場とAGを含む後発品・バイオシミラーの参入で、市場にも変化が起こりそうです。

 

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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