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【押さえておきたい】2018年に話題となった心血管・代謝・腎・血液領域のできごと|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルタント会社Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、「心血管」「代謝」「腎」「血液」の各領域で、2018年に話題となった出来事について、アナリストが振り返ります。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

プラルエントのODYSSEYアウトカム試験

2018年3月、サノフィとリジェネロンは、米国心臓病学会でODYSSEYアウトカム試験のデータを発表した。PCSK9阻害薬「プラルエント」(一般名・アリロクマブ)は、急性冠症候群(ACS)を起こした患者で、主要有害心血管イベントのリスクを有意に低下させた。

 

死亡も15%低下したが、これは競合するほかのPCSK9阻害薬が達成できていない数字だ。アムジェンの「レパーサ」(エボロクマブ)は、FOURIERアウトカム試験で死亡率の低下を示せなかった。

 

2019年に入り、プラルエントとレパーサの競争の鍵を握るのは、価格と市場アクセスだろう。2社はともに、大幅な値引きや表示価格の引き下げを表明している。

 

Xa阻害薬に中和剤が登場

2018年5月、待ち望まれていたXa阻害薬に対する初めての中和剤「Andexxa」が米国で承認された。「イグザレルト」(リバーロキサバン)や「エリキュース」(アピキサバン)を服用している患者が、致命的となりかねない、または制御不能の出血を起こした際に使われる。

 

中和剤が使えるようになったことで、長年にわたるアンメットニーズは解消。高リスク患者に対するNOAC(新規経口抗凝固薬)の使用に医師が抱く懸念を和らげると期待される。

 

BelviqとCV安全性

中枢神経系に作用する抗肥満薬に対して医学界が抱く潜在的なCV(心血管)障害の不安を背景に、多くの企業が自社薬剤の市販後CVOT(心血管疾患アウトカム試験)を実施せざるを得なくなっている。

 

2018年6月、エーザイは、「Belviq」(lorcaserin)による治療はCVベネフィットを示さなかった一方、CV障害を増加させることもなかったと発表した(ただし、自殺念慮の頻度上昇という問題は残る)。

 

Invokanaの腎アウトカム試験

Invokana(カナグリフロジン)はCANVAS-R試験で有望な結果を示しているが、ヤンセンは2018年7月、臨床第3相(P3)試験CREDENCE腎アウトカム試験が、良好な結果により早期終了となったことを明らかにした。標準療法への上乗せにより、複合エンドポイント(透析または腎移植までの期間、血清クレアチニン値の2倍化、腎死または心血管死)でベネフィットが示された。

 

InvokanaなどSGLT-2阻害薬は、糖尿病性腎疾患の進行を緩やかにする、十数年ぶりの新薬となる可能性がある。

 

PAD/CADに対するイグザレルトの承認

イグザレルトが2018年8月に欧州、同年10月に米国で、PAD(抹消動脈疾患)/CAD(冠動脈疾患)に対して承認されたことで、この疾患の治療に改めて高い関心が寄せられている。

 

今回の承認の根拠は、COMPASS試験のロバストな結果だった。今の環境で抗凝固薬市場に直接競合する薬はなく、イグザレルトはPAD市場でかなりのシェアを確保するだろう。PAD患者におけるイグザレルトの使用に向けては、エビデンス基盤が増大している。現在実施中のP3試験VOYAGER-PAD試験の結果によっては、それがさらに強化されることを期待される。

 

ヘムライブラ インヒビター非保有血友病Aに適応拡大

2018年10月、米FDA(食品医薬品局)は、ロシュの「ヘムライブラ」(エミシズマブ)の適応を、インヒビター非保有の血友病Aに拡大した。ヘムライブラは、週3回静注の血液凝固第VIII因子と比べて投与回数が大幅に少なく、皮下投与が可能であるため、治療の重要な選択肢となる。

 

インヒビターの有無を問わず使えるようになったことで、ヘムライブラを使用できる患者の数は広がり、大きな売上げが見込める。

 

2型糖尿病に対するGIP/GLP-1デュアル作動薬

201910月、イーライリリーはtirzepatide(LY3298176)は、2型糖尿病に及ぼす効果を調べたP2試験で顕著な結果が得られたと発表した。twincretinと呼ばれるこの週1回投与のGIP/GLP-1デュアル作動薬は、血糖値と体重を大幅に低下し、同社のGLP-1受容体作動薬「トルリシティ」(デュラグルチド)より有意に優れていることを立証した。

 

こうした結果を受け、イーライリリーはtirzepatideの安全性と有効性を検討する第3相試験SURPASSに全力を挙げている。成功すれば、tirzepatideは、デュアルの進化形、あるいはトリプル・コ・アゴニストにまで転じる先駆けとなるかもしれない。

 

VascepaのREDUCE-ITアウトカム試験データ

2018年11月の米国心臓協会(AHA)の学術集会でアマリンが報告した「Vascepa」のREDUCE-ITアウトカム試験の結果は、予想を上回る驚異的なものだった。

 

オメガ-3脂肪酸によるCVリスクの低下を実証する試みが過去に失敗していることを考えると、プラセボに対してVascepaが示した25%という相対リスク減少率は、とりわけ革新的だと言える。

 

とはいえ、正直なところ、なぜこれほど顕著に作用するのか、プラセボという選択が効果の程度を誇張しなかったか、という点でいくぶん疑問が残る。高脂血症の治療では、TG(中性脂肪)を下げることが再び注目されており、スタチンの収益が低下する中で売り上げ増大の拠り所となるだろう。

 

NASHにおけるTHR-ß作動薬

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)患者の多くは、2型糖尿病や高脂血症、肥満を合併している。2018年11月、MadrigalのMGL-3196とVikingのVK-2809という2つの新規THR-ß作動薬のP2試験結果が発表された。

 

これらの薬剤は、肝脂肪と線維化マーカーを低下させるだけでなく、さまざまな脂質パラメーターに良好な影響を及ぼすことが明らかとなった。NASHやメタボリックシンドロームの治療に向け、包括的なアプローチに弾みがつくだろう。

 

NASH治療薬開発へのガイダンス

NASH治療薬として承認を受けている薬はなく、現在、P3試験を行っているのも4薬のみ。承認獲得への道のりは厳しいと言わざるを得ない。

 

2018年11月、FDAとEMA(欧州医薬品庁)は、NASH治療薬開発のガイダンス素案を公表した。規制当局の承認に至るまでに、このガイダンスがメーカーの試験立案を助け、諮問委員会との協議に影響することは、10年以上前に我々が肥満市場で見た通りだ。

 

Farxiga/フォシーガのCVアウトカムデータ

DECLARE-TIMI 58試験は、SGLT-2阻害薬「Farxiga/フォシーガ」(ダパグリフロジン、アストラゼネカ)がCVアウトカムに及ぼす影響を評価した試験。動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)またはそのリスクがある2型糖尿病患者が対象となった。

 

2018年11月のAHAで発表された結果によると、ほかの2つのSGLT-2阻害薬で行われたCVOT試験と同様、MACE減少の実証には失敗したものの、心不全による入院またはCV死の複合エンドポイントでは、プラセボに対して統計的に有意な減少を示した。

 

Entrestoの入院患者への投与

2018年11月のAHAで発表されたPIONEER-HF試験の結果によると、駆出率が低下した心不全(HFrEF)における急性代償障害で入院中の患者に「Entresto」を投与したところ、NT-proBNP濃度と心不全による再入院が減少した。

 

Entrestoの処方を決める重要なタイミングとして、Decision Resources GroupがインタビューしたKOL(キーオピニオンリーダー)らは入院中と退院時を挙げており、PIONEER-HF試験の結果はEntrestoのそうした使用に道を開くものだ。

 

経口セマグルチドの肯定的データ

2018年11月、ノボノルディスクは1日1回の経口GLP-1受容体作動薬セマグルチドを検討したP3試験PIONEER6の、最も重要な肯定的結果を発表した。

 

予想通り、経口セマグルチドは主要有害心血管イベントで非劣性を示した。同イベントの減少では優越性を示すことはできなかったが、CV死は51%減少、全死因死亡は49%減少と、有意な結果だった。経口GLP-1受容体作動薬が発売されるときには、これらの有望なデータが強い追い風となって、セマグルチドの週1回の注射剤「オゼンピック」も好意的に受け入れられるだろう。

 

(原文公開日:2019年1月22日)

 

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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