米国に本社を置くDecision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は2018年に米FDAが承認した新薬をおさらいします。
(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
領域別では「がん」が最多 オーファンも増加
製薬業界にとって2018年は、米FDA(食品医薬品局)の承認という面では素晴らしい年となった。新規有効成分(NME)と生物学的製剤(BLA)であわせて62の薬が承認され、過去最高を更新した(これまでは1996年の59が最高)。
承認数が最も多かったのはがん領域で、18の薬が承認された。オーファンドラッグの承認数も伸びている。18年に承認された62新薬のうち、55%(NMEとBLAを合わせて34)がオーファンの指定を受けており、過去2年と比べて大幅に増加した(17年は39%、16年は41%)。
FDAは、必要性の高い治療薬に患者がスピーディーにアクセスできるよう、新薬の審査を迅速化している。18年にCDER(医薬品評価研究センター)の承認を得た59のNMEのうち、43(73%)は迅速審査(ファストトラック、ブレークスルーセラピー、迅速承認、優先審査)の指定を1つ以上受けている。
承認を取得した企業も多岐に渡っており、ファイザーは1社で4つも(しかも3カ月の間に)承認を取得した。4つはすべてがん領域の製品で、ポートフォリオの強化につながるだろう。2つ以上の新薬の承認を取得した企業も、アストラゼネカ、塩野義製薬、イーライリリー、アレイ・バイオファーマなど数社あった。
ブロックバスター候補はBiktarvy、Erleada、Olumiantなど
Decision Resources Groupの予測では、18年に承認された新薬のうち8つが、年間売上高10億円以上のブロックバスターになる。うち5つは生物学的製剤。ブロックバスターになるとみられるのは、▽抗HIV薬Biktarvy▽前立腺がん治療薬Erleada▽関節リウマチ治療薬Olumiant▽免疫チェックポイント阻害薬Libtayo▽片頭痛治療薬Aimovig▽同Emgality――などだ。
抗HIV薬Biktarvy
1日1回1錠のBiktarvyは18年最大のローンチであるとともに、抗HIV薬市場を拡大させる推進力になると期待される。ヴィーブのTriumeqにとっては強力なライバルとなるだろう。
Biktarvyはテノホビルアラフェナミドフマル酸塩を含有することで、腎および骨に関連する長期安全性が向上。ブースターを含んでいないことから、競合薬よりも安全性の高い選択肢となる。
前立腺がん治療薬Erleada
Erleadaは、非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)治療薬として初めてFDAの承認を取得した。前立腺がん治療薬市場でジョンソン&ジョンソンは地位をより強固なものにするだろう。有効性が高く、NCCNガイドラインではnmCRPC治療薬としてカテゴリー1で推奨されている。この疾患の治療に大きな役割を果たす薬になるだろう。
関節リウマチ治療薬Olumiant
Olumiantは米国市場では2番目のJAK阻害薬で、ファイザーのXeljanzから遅れること6年で、中等度から重度の関節リウマチ治療薬として承認された。Humiraより6割ほど安く、炎症性疾患でJAK阻害薬が幅広く使用されていることから考えると、Olumiantはブロックバスターになる可能性が高い。
免疫チェックポイント阻害薬Libtayo
PD-1を標的とする抗体医薬のLibtayoは、根治手術や放射線治療の適応とならない局所進行・転移性皮膚扁平上皮がん(CSCC)を対象に、9月にFDAの承認を得た。CSCCは皮膚がんで2番目に多く、Libtayoは同疾患に対する初の治療薬となる。同薬はさらに、非小細胞肺がんをはじめとする固形がんや血液がんなど、さまざまながん種を対象に単剤または併用で開発が進められている。
片頭痛治療薬Aimovig
抗CGRP抗体のAimovigは、片頭痛予防のために開発された最初の治療薬。既存薬では緩和できない、または副作用が忍容できない片頭痛患者にとっては、有望な選択肢となる。先行優位性に加え、CGRPそのものではなく、CGRP受容体をターゲットとしており、差別化という観点からも大成功が予想される。
片頭痛治療薬Emgality
Emgalityは抗体医薬のCGRP拮抗薬で、片頭痛予防での承認に加え、群発性頭痛を対象とした開発も進んでいる。同剤も忍容性は良好で、添付文書に警告や禁忌の記載はない。Aimovigと同じく、Emgalityにも保険給付上の制約があるが、イーライリリーは患者支援プログラムを提供している。自宅で月1回、自己注射することも可能だ。
企業との連携深めるFDA 71%が米国で世界初承認
承認数の増加は、規制緩和や審査プロセスの改善、そして企業のリスクテイキングが、より迅速な承認につながった結果なのだろうか。
確かにFDAは、可能な限りすみやかに新薬を患者に届けるための措置を講じている。18年に承認された59の新薬のうち42(71%)は、世界で初めて米国で承認された。
現在、FDAのCDERは、特に臨床試験の計画や申請資料の作成の段階で、企業と緊密に連携している。これによって企業側は、初回の承認プロセス(6~12カ月)で承認を獲得しやすくなる。18年は新薬の95%が初回の審査で承認されており、スピーディーに患者のもとに届けられている。
迅速審査や希少疾病用医薬品の対象となる新薬、そして稀な適応症のための高額医薬品の承認が増加し、今後の製薬業界で大きなトレンドとなる。診断技術の進歩に加え、ゲノミクス、プロテオミクス、ヒトゲノムマッピングといった研究への投資、バイオマーカーを拡充した臨床試験の実施などを背景に、将来的にはプレシジョン・メディスンの承認が増えていくだろう。
FDAは、効率的かつ専門的な取り組みで、安全かつ有効な治療薬をスピーディーに患者に届けることが期待される。
(原文公開日:2019年1月11日)
【AnswersNews編集長の目】記事の中でブロックバスター候補として挙げられた6つの新薬について、日本での承認・開発の状況を見てみましょう。
ギリアド・サイエンシズの抗HIV薬「Biktarvy」は、昨年12月に日本で申請済み。ヤンセンファーマの前立腺がん治療薬「アーリーダ」は昨年3月に申請されており、1月30日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会で承認の可否が審議されます。日本イーライリリーの関節リウマチ治療薬「オルミエント」は、日本では17年9月に発売されました。
サノフィの免疫チェックポイント阻害薬「Libtayo」は、子宮頸がんと非小細胞肺がんの2つの適応で臨床第1相(P1)試験を実施中。片頭痛治療薬「Aimovig」はアステラス・アムジェン・バイオファーマがP3試験を行っており、日本イーライリリーの同「Emgality」もP3試験が進行中です。
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この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。
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