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「先駆け審査」「早期承認」を法制化 不当利得には課徴金―薬機法 改正案のポイント

更新日

厚生労働省は、1月下旬招集の通常国会に、医薬品医療機器等法(薬機法)の改正案を提出する方針です。法改正を議論した厚労省の厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会が昨年末にまとめた報告書をもとに、法改正のポイントを整理しました。

 

先駆け審査指定制度・条件付き早期承認制度を法制化

法改正の1つ目のポイントは、「先駆け審査指定制度」と「条件付き早期承認制度」の法制化です。

 

先駆け審査指定制度は、世界に先駆けて日本で申請しようとする画期的新薬について、治験相談や承認審査などで優遇し、早期の実用化を図る制度。審査期間は通常の約半分の6カ月まで短縮することを目指しており、2015年4月から試行的に運用されています。

 

一方、条件付き早期承認制度は、重篤で有効な治療法が少ない疾患に対する医薬品が対象。発売後に有効性・安全性を再確認することを条件に、検証的臨床試験(臨床第3相試験など)なしで早期に承認する制度です。まず再生医療等製品を対象に導入(再生医療の場合は条件に加え期限も付く)され、医薬品では17年10月に運用が始まりました。

 

先駆け審査指定制度と条件付早期承認制度(医薬品の場合)の表。【先駆け審査指定制度(2015年~)】<対象>新規作用機序・対象疾患が重篤・極めて高い有効性・世界に先駆けて日本で申請、<内容>優先相談・事前の評価の充実・優先審査(審査期間6ヶ月)、<制度下で承認された医薬品>抗インフルエンザウイルス薬「ゾフルーザ」・結節硬化症に伴う皮膚病変治療薬「ラパリムスゲル」・急性骨髄性白血病治療薬「ゾスパタ」。【条件付き早期承認制度(2017年~)】<対象>対象疾患が重篤・治療法がないなど、医療上の有用性が高い・検証的臨床試験以外で一定の有効性・安全性が示される、<内容>市販後に有効性・安全性を確認することを条件に、検証的臨床試験なしで承認、<制度下で承認された医薬品>肺がん治療薬「ローブレナ」・免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」。

 

厚生科学審議会・医薬品医療機器制度部会の報告書では、両制度の法制化を提言するとともに、対象となる医薬品を法令上明確化すべきと指摘。法制化後の制度の運用では「医療上の必要性の高い医薬品・医療機器等に限り適用されるよう、適用の条件や判断プロセスを明確にして、透明性を高めることが重要」としています。

 

法令違反による不当利得に課徴金制度を創設

2つ目のポイントは、法令違反で不当に得た経済的利得に対する「課徴金制度」の創設です。報告書では「現行の行政処分によっては抑止効果が機能しにくい実態があることを踏まえ、違法行為の抑止を図るために検討すべき」と明記されました。

 

現行の薬機法では、66条で規定する「虚偽・誇大広告の禁止」に違反すると、個人・法人とも最高で200万円の罰金が課されますが、ARB「ディオバン」をめぐる問題を契機に、抑止力としての効果を疑問視する声も上がりました。

 

法令違反による不当な経済的利得に対する課徴金制度創設の説明の表。対象と夏法令違反について、違反行為の対象となった製品の売り上げに一定率を掛けた額を課徴金として納付するよう命令。ほかの行政処分が機能している場合は命令を行わないことも可。対象は不当利得が一定規模以上のケース。納付命令は国と都道府県の両方に権限。

 

課徴金制度の対象として厚労省は、▽虚偽・誇大広告の禁止(薬機法66条)▽未承認医薬品等の広告の禁止(68条)▽未承認医薬品等の販売・授与の禁止(14条1項・9項、55条2項など)――を想定。化学及血清療法研究所(現・KMバイオロジクス)による不正製造で問題となった、承認書と異なる方法で製造した製品を販売した場合も含める考えです。

 

課徴金の納付命令は、法令違反による不当な利得が一定額を超えた場合に行うとし、課徴金の額は法令違反の対象となった製品の売り上げに一定率を掛けて算出。具体的な基準や率については法案の作成段階で詰めます。

 

部会の報告書では、課徴金制度の創設に加え、広告違反に対して訂正広告などを命じる措置命令の検討も求めています。

 

役員に変更命令「総責」は薬剤師以外でも

課徴金制度の創設とともに法令違反の防止策として改正案に盛り込まれるのが、3つ目のポイントとなる医薬品メーカーなどの役員の責任の明確化です。

 

部会の報告書では、医薬品メーカーなどで薬事業務に責任を持つ役員を薬機法上、明確に位置付けるとともに、法令違反を行った場合などに同役員の変更を命じられる措置を定めるべきとされました。

 

製造販売業者とその役員の責務の明確化の図。

 

薬機法で設置が義務付けられている「総括製造販売責任者」(総責、品質管理や製造販売後の安全管理に総括的な役割を負う人)の要件についても、見直しが行われます。現行法では、総責には薬剤師を充てると定められていますが、この規定によって、役割と責任を果たせる適切な立場(職位)の人を総責に充てることができないといった問題も指摘されています。

 

今回の法改正では、こうした問題を解決するため、総責としての責務を果たせる職位の薬剤師を確保できない場合に限り、薬剤師以外の人を総責に充てられることを規定します。ただし、これはあくまで例外規定で、そうした状態が長く続かないよう、専門的見地から総責を補佐する薬剤師を配置したり、薬剤師の総責を社内で育成したりするなどの体制を整備することも求める方向です。

 

添付文書は電子化

4つ目のポイントは、添付文書の電子化です。

 

現行法では製品に紙の添付文書を同梱することが義務付けられていますが、改正法ではこれを廃止し、「電子的な方法」で医療機関や薬局に提供することを基本とします。製品の外箱にQRコードを表示するなどして、最新の情報が速やかに医療機関・薬局に届くようにします。

 

一方、確実な情報提供を担保するための方策として、部会の報告書では、必要に応じて初回納入時に紙の添付文書を提供するほか、添付文書が改訂された場合は紙でも情報提供する必要があると指摘しています。

 

今回の改正にはこのほか、▽製造所ごとのGMP・GCTP適合性調査の導入▽容器・包装へのバーコード表示の義務化▽卸に対する規制の見直し――などが盛り込まれる見通しです。

 

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