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胃食道がん 市場は急拡大も生存期間の改善は小幅|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング会社Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、胃食道がん治療薬。市場は急速に拡大しますが、生存期間の改善は小幅です。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については、英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

市場は年平均19%拡大

Decision Resources Groupはこのほど、2017年の胃食道がん向けの治療薬は販売額が主要7カ国で17億ドルに達したという調査結果を、「Gastroesophageal Cancer Disease Landscape & Forecast(胃食道がん疾患の状況と予測)」で報告した。胃食道がんの化学療法では、低価格の後発医薬品が多く処方されているが、売り上げの半分は4つの高価格なバイオ医薬品が占めている。

 

胃食道がんでは、向こう10年間で7つの新薬の承認と多くの既存薬の適応拡大が見込まれており、市場は2027年に95億ドルと驚異的なスピードで拡大するとDecision Resources Groupは予測している。

 

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市場の年平均成長率は19%とかなりの高さではあるが、現在入手可能な臨床データから考えると、有効性のベネフィットの伸びはわずかだ。医薬品は、有効性が標準療法を統計学的に優位に上回ることを根拠に承認されるが、臨床でその恩恵を実感するのは難しそうだ。

 

現時点で入手できるデータが示唆するのは、開発中の新規治療薬の多くがもたらす生存ベネフィットはおおむね3カ月未満と、目覚ましい数字ではない。一方、奏効率は今の標準治療から改善されている。これは、薬の恩恵を受ける患者が増えることを意味するが、最終的に重要なのは生存期間に対するベネフィットであることは言うまでもない。

 

多くの薬剤が開発に失敗

高価格の新規治療薬がいくつも発売されることになると、すでに財政事情の厳しい医療制度の負担は増す。治療の実効性を全体的に評価するには、有効性以外の視点も考慮に入れる必要がある。胃食道がんの治療が困難なのは周知の事実で、以下の薬剤を含め、多くの薬がこの適応での承認取得に失敗している。

 

・PD-1/PD-L1阻害薬…「バベンチオ」(アベルマブ、サードライン以降)、「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ、セカンドライン以降)

 

・HER2阻害薬…「パージェタ」(ペルツズマブ)、「カドサイラ」(トラスツズマブ エムタンシン)、「タイケルブ」(ラパチニブ)

 

・血管新生阻害薬…「アバスチン」(ベバシズマブ)

 

・PARP阻害薬…「リムパーザ」(オラパリブ)

 

・c-Met阻害薬…「MetMab」(onartuzunab)

 

胃食道がんで現行の標準治療を統計学的に有意に改善するのは至難の業だ。したがって、生存の改善が数値的に控え目であっても、それが意義あることだとも言える。

 

また、QOLも治療の評価ポイントとして重要だ。胃食道がんのファーストラインでは一般的に、新薬は軸となる化学療法との併用で処方されることが多く、治療ではしばしば毒性の上昇と忍容性の低下が問題となる。ただ、既治療の患者を対象に、忍容性の良好な薬剤(免疫チェックポイント阻害薬など)の単剤療法の検討も進められている。がん患者は体調が優れず虚弱なことも多く、毒性のある化学療法からの切り替えを狙っている。

 

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アンメットニーズは高い

この分野を攻略するには、やはり市場の特性を十分に理解することが不可欠だ。

 

胃食道がん治療薬の市場は、今後10年で高い成長が見込まれるが、生存ベネフィットの増大はわずかな幅にとどまるだろう。有効性と安全性、そして費用体効果がより高い治療薬へのアンメットニーズは引き続き高く、医薬品メーカーにとってはチャンスがある。

 

Decision Resources Groupのインタビューに応じた腫瘍内科医らは、胃食道がん患者にとって、より臨床的な意義の大きい治療薬を求めている。有効性の改善が小さかったとしても、企業にとっては大きな収益に結びつくかもしれない。しかし、時間をかけて有効性の高い新薬を開発すれば、患者の生活を大きく変えることもできるはずだ。

 

(原文公開日:2018年10月31日)

 

【AnswersNews編集長の目】

 国内の胃がん・食道がんの新薬開発状況を見てみると、2017年9月に小野薬品工業の抗PD-1抗体「オプジーボ」(ニボルマブ)が胃がん(サードライン以降)への適応拡大が承認。一方、この適応で先駆け審査指定制度の対象に指定されていたMSDの同「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)は、オプジーボに先を越され、先駆け指定が取り消されました。キイトルーダは胃がんでの開発を続けており、日本では現在、臨床第3相(P3)試験の段階にあります。米国では17年9月、2レジメン以上の治療歴がある胃がん・食道胃接合部がんの適応で承認されています。

 

新規の薬剤では、アステラス製薬がガニメド買収で獲得した抗Claudin18.2抗体zolbetuximabが、胃腺がん・食道胃接合部腺がんを対象にP3試験を実施中。第一三共は抗HER2抗体薬物複合体(ADC)「DS-8201」の開発を進めています。現在、P2試験を行っており、先駆け審査指定制度の対象に指定されています。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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