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「先駆け」指定の血管再生医療 米カラドリウスが日本で開発を先行させるのはなぜ?【インタビュー】

世界に先駆けて日本でCD34陽性細胞を使った血管の再生医療の実用化を目指す、米カラドリウス・バイオサイエンシズ。今年3月には重症下肢虚血を対象に「先駆け審査指定制度」の対象に指定され、2020年度の承認申請を目標に臨床試験を進めています。

 

社員26人の米国のバイオベンチャーが、なぜ日本で開発を先行させるのか。先月、来日した聳城(たかぎ)宏バイスプレジデントに話を聞きました。

 

重症下肢虚血を対象に2020年に申請へ

カラドリウス・バイオサイエンシズは、2006年創立のバイオベンチャー。米ニュージャージー州バスキングリッジに拠点を置き、再生医療等製品の臨床開発に特化して事業を展開しています。

 

「カラドリウスは社員26人の小さい会社で、再生医療の臨床開発を中心に行っています。米国と日本で承認申請に必要な臨床試験を行う、これが私たちの仕事です。普通の製薬会社であればディスカバリーグループがあると思いますが、わが社にはありません」

 

「カラドリウスは昨年、再生医療用細胞の製造子会社を日立化成に売却しました。そのおかげで、小さな会社ではありますが資産は結構あります。バイオベンチャーは開発資金の調達が大変ですが、われわれは、今のパイプラインについては申請までに必要なデータをつくるのに十分な資産を持っているということで、バイオベンチャーとしてはユニークな存在だと思っています」

 

米カラドリウスの聳城宏バイスプレジデント

米カラドリウス・バイオサイエンシズの聳城宏バイスプレジデント

 

カラドリウスは現在、自己免疫疾患向けの制御性T細胞と、虚血を原因とする疾患を対象としたCD34陽性細胞の臨床開発を進めています。CD34陽性細胞「CLBS12」は重症下肢虚血(CLI)を適応とする開発が日本で先行しており、昨年11月からピボタル試験を実施中。今年3月には厚生労働省から「先駆け審査指定制度」の対象に指定されており、2020年の承認申請を目指しています。

 

「CLIは、動脈硬化などで足の血管が詰まってしまい、血流が悪くなることで、痛みや潰瘍、皮膚の壊死を引き起こす疾患です。標準的な治療は血行再建術(ステントなどを使った血管内治療やバイパス手術)ですが、これができない、あるいはできても効果が得られない患者も少なくありません。CLIは進行するとアンピュテーション(下肢切断)が必要になる場合があります。日本にはCLIの患者が3万人いるとみられ、5000人ほどがアンピュテーションを受けています」

 

「CD34陽性細胞には血管の新生や再生を促す働きがあります。われわれが開発しているCLBS12は、患者の血液から分離したCD34陽性細胞を患部周辺の筋肉に20カ所移植する治療です。これにより、詰まった血管のまわりに新しい血管が出てきて、実際に血液が動くということになります。現在行っているピボタル試験は患者35人の登録を予定しており、2020年に承認申請を行う予定です」

 

「われわれのCD34陽性細胞は、すでに700人以上の患者に投与されており、安全性に問題は見つかっていません。患者自身の細胞を分離して患者に戻すだけで、遺伝子を導入したり、培養したりということもありません。患者にとっても受けやすい治療なのではないかと思っています」

 

カラドリウスの開発パイプラインの表。

 

先駆け審査指定制度 日本での開発を後押し

米国のバイオベンチャーで、日本に事業拠点を持たないカラドリウスが、なぜ世界に先駆けて日本でCD34陽性細胞の実用化を目指しているのか。聳城氏はその理由として、先駆け審査指定制度が創設されたこと、CD34陽性細胞が日本人研究者によって発見されたこと、の2つを挙げます。

 

「なぜ日本でCD34陽性細胞の開発をしているかというと、1つは先駆け審査指定制度という世界的にもユニークな制度があるということ。欧米では再生医療であってもプラセボを含めたコンパラティブな試験をダブルブラインドでしなさいというのが当たり前。一方、日本では安全性が確保され、有効性も『いいんじゃないか』という形の治験で十分だということで、そこにわれわれも乗ったということです。先駆け審査指定制度がなければ、日本で最初に、ということはなかったと思います」

 

「加えて、CD34陽性細胞は20年ほど前に東海大の浅原孝之教授によって発見され、日本ですでに医師主導の治験が行われていたということがあります。治験で最も大変なのは患者を集めるところで、患者を集めるにはその治療の効果を信じている医師が治験に参加することが大事です。CD34陽性細胞については、すでに日本にそうした治験を行いやすいような基盤があった。その船にわれわれも一緒に乗ることで、実際に申請に向けた治験が動き出したというところです」

 

日本での承認取得後は、パートナー企業を通じて市場展開を図る方針。臨床試験と並行して、提携先探しも始めています。

 

「カラドリウスとしては、販売組織を日本でつくろうということは考えていません。承認がとれたら、日本の企業でも外資系企業の日本法人でもどちらでもいいのですが、製薬企業や医療機器会社と二人三脚で販売していくことになると思います。今、あちこちに開発品の話をしたり、治験の内容を説明したりして、ほかの適応での共同開発も含めて声をかけている状況です。カラドリウスは米国にもセールスフォースを持っていませんので、欧米にも販売網を持っている会社と提携するという動き方もあると思います」

 

「製造についても同じです。臨床試験に使うCD34陽性細胞は今のところ、(CLBS12の臨床試験をサポートしている)神戸医療産業都市推進機構のCPC(セルプロセッシングセンター)で行っていますが、販売となると1つの施設では難しいでしょう。承認取得後は、カラドリウスと販売会社、CMOとして製造してくれる会社の3者が1つになって動いていくことになると思います」

 

カラドリウスは、下肢血管再生治療の治験に参加する重症下肢虚血患者を募集しています。詳しくは、
治験ウェブサイト:https://www2.tri-kobe.org/clbs12/
問い合わせ先:0120-103-853(シミックヘルスケア、平日9:00~17:00)

 

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