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ニュース解説

武田 メガファーマ入り実現も…シャイアー買収後に待ち構える険しい道のり

武田薬品工業によるアイルランド・シャイアーの買収が、12月5日の臨時株主総会で承認されました。来年1月には、日本発のメガファーマの誕生が現実のものとなります。日本企業として過去最大規模の6.6兆円を投じる買収劇は最大の山場を越えましたが、武田には買収後も険しい道のりが待ち構えています。

 

買収完了は19年1月8日

武田薬品工業は12月5日、大阪市内で臨時株主総会を開き、シャイアー買収に必要な発行について株主の承認を得ました。武田によると、行使された議決権のうち88%以上が賛成。クリストフ・ウェバー社長兼CEOは臨時株主総会後、「買収について株主から力強い賛同が得られたことを嬉しく思う。武田が、より高い競争力を有し、機動的で、高い収益性を有する企業、また、より高い適応能力を有する企業になると確信している」とのコメントを発表しました。

 

買収は来年1月8日に完了する予定。両社の売上高は単純合算で3兆4685億円(武田は18年3月期、シャイアーは17年12月期)に達し、世界ランキングで8位に躍り出る見通し。日本から初めて、世界トップ10入りするメガファーマが誕生することになります。

 

世界ランキング

 

武田は買収によって、「がん」「消化器」「精神神経」の3つ重点領域に、第4の柱として希少疾患を加えることになります。武田は「シャイアー買収は、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーとなるための変革を加速するもの」と強調。買収後はこれら4領域で売上高の75%を稼ぎ、研究開発費も4領域に優先的に投じるとしています。

 

ヘムライブラが脅威に

シャイアーの17年12月期の売上高は1兆6980億円で、純利益は4784億円。純利益率は28.2%と、世界的に見ても高収益な製薬会社です。武田はシャイアー買収により収益性の向上も期待しますが、それがいつまでも続く保証はありません。

 

シャイアーの売上高を疾患領域別に見ると、▽免疫疾患4894億円(売上高比28.8%)▽血友病4240億円(24.9%)▽精神神経疾患2984億円(17.6%)▽内科1870億円(11.0%)▽遺伝性疾患1611億円(9.5%)――。

 

武田とシャイアーの比較

 

このうち「アドベイト」「アディノベイト」などで世界シェアの4割以上を握る血友病では、中外製薬が創製した二重特異性抗体「ヘムライブラ」が強力なライバルとなります。アディノベイトは週2回注射により投与する必要がありますが、ヘムライブラは最小で4週1回の投与で治療が可能。インヒビターの有無にかかわらず使え、シャイアー製品からシェアの大部分を奪うとの見方が大勢です。武田は「事業上のリスクは可能な限り十分に評価されている」としていますが、買収反対派からは巨額の減損リスクを懸念する声が出ていました。海外では遺伝子治療の開発も進んでおり、競争環境は厳しさを増しています。

 

精神神経領域では21億ドル以上を売り上げるADHD治療薬「ビバンセ」の特許が5年後に切れる見通し。パイプラインも小粒で、血友病や精神神経領域の落ち込みをどれだけ補えるかは不透明です。

 

武田によると、純有利子負債は買収に伴う借入金を含め5兆4520億円に膨らむ見通しで、巨額ののれん(武田試算で4兆~4兆4000億円)と無形資産(6兆3000億~6兆7000億円)は減損計上のリスクもはらみます。

 

株主総会の直前には、創業家出身の武田国男元社長が「リスクが大きい」として買収反対の意思を示したことも伝えられました。武田は、統合後に年間14億ドルのコストシナジーが見込めることや、シャイアーの高い収益性、ノンコア資産の売却により、買収完了後3~5年で純有利子負債/調整後EBITDA倍率が目標の2倍以下になるとの見通しを強調。配当も年間180円を維持するとしています。

 

買収の成否 新薬開発が左右

買収には財務的なリスクが伴いますが、それを負ってでも勝負に出ざるを得ない状況に武田が追い込まれていたのも事実。ここ数年は低収益のあえぎ、長らく自社新薬も出せていません。後期開発品の不足も大きな課題として横たわっており、臨時株主総会で株主は成長戦略としてシャイアー買収を支持するという選択をしました。

 

株主が買収を承認したことで、今後の焦点は両社の統合に移ります。武田はシャイアーから20人いる役員のうち2人をシャイアーから起用する方針で、臨時株主総会ではシャイアーの社外取締役3人を武田に迎える議案も承認されました。両社は20の部門別チームをつくり、統合計画の作成を進めています。

 

武田の研究開発費は買収によって4000億円超に拡大する見通しで、武田は「この規模の予算は非常に競争力の高いものといえる」としています。結局のところ、買収の成否は収益を生む新薬を創出できるかにかかっています。規模の拡大を新薬開発に結び付けられるのか。統合後の成長戦略に注目が集まります。

 

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