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【ESMO2018】PARP阻害薬 最新の開発動向|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのはPARP阻害薬。10月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表された2つの臨床試験結果を紹介します。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

オラパリブとルカパリブが注目の試験データを発表

PARP阻害薬は、最近、卵巣がんと乳がんで承認され、大きなインパクトをもたらした。

 

アストラゼネカの「リムパーザ」(オラパリブ)は、卵巣がんを対象に行ったSOLO-1試験の結果を発表し、今年のESMOで最も大きな話題となった。Decision Resources Groupは、リムパーザがBRCA遺伝子変異陽性がんの治療の最前線を劇的に変えると期待している。

 

加えて、Clovis Oncologyの「Rubraca」(rucaparib)も、臨床第3相(P3)試験TRITON3への進展の根拠となった臨床データを発表した。こちらは転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)を対象としたものだ。

 

[SOLO-1試験]リムパーザによる維持療法は、BRCA変異陽性卵巣がんの1次治療でPFSを改善

アストラゼネカは6月、リムパーザが進行BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がんの1次治療で、主要評価項目を達成したと発表。詳細な結果の発表が待ち望まれていた。

 

約3年半(41カ月)のフォローアップ期間で、リムパーザ群のPFS(無増悪生存期間、中央値)は未到達、プラセボ群は13.8カ月(ハザード比:0.30[95%信頼区間:0.23-0.41]、p<0.001)だった。リムパーザは、病勢進行または死亡のリスクを70%減少させ、プラセボに比べて統計学的に有意な、そして臨床的に有意義なPFSの改善を示した。3年間、病勢進行がみられなかった患者は、プラセボ群で27%だったのに対し、リムパーザ群では60%に上った。

 

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さらに、副次評価項目である2次治療後の進行も有意に改善し、1次治療でリムパーザを使った場合でも、進行した患者のその後の治療にマイナスの影響を与えないことが示唆された。忍容性も高く、副作用はSOLO-2やStudy-19でこれまで報告されたものと同じだった。

 

SOLO-1試験の結果は卵巣がん治療にどんな影響を与えるのか

新規に診断された進行卵巣がん患者のうち、長期に生存するのは10~15%にとどまる。卵巣がんはアンメットニーズの高い疾患だ。

 

これまでも1次治療でPFSの改善を試みた薬剤はあるが、その多くが失敗している。「アバスチン」が唯一PFSの改善(6.2カ月)を示したが、それもリムパーザの前では非常に小さく見える。

 

リムパーザは、新規に診断された進行BRCA変異陽性卵巣がんに対する初のPARP阻害薬となるだろう。ただし、2020年にはTESAROの「Zejula」(niraparib)のPRIMA試験の結果が発表されるとみられている。この試験では、BRCA遺伝子の変異の有無にかかわらず進行卵巣がんの1次治療を対象としており、いい結果が出れば、より広範な卵巣がん治療の最前線を劇的に変えるかもしれない。

 

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[TRITON2試験]Rubraca 転移性去勢抵抗性前立腺がんに有望な結果

10月はじめ、米FDA(食品医薬品局)はRubracaをブレークスルーセラピー(画期的新薬)に指定した。適応は、1つ以上のホルモン療法とタキサン系抗がん剤を含む化学療法を受けたことがあるBRCA変異陽性のmCRPC。ブレークスルーセラピーに指定されたことで、TRITON2試験の結果に注目が集まっていた。

 

TRITON2試験には、DNA損傷修復の欠損を有する患者85人が登録。PSA奏効(PSA50%減少と定義)で評価された。Rubracaは45人のBRCA変異陽性の患者のうち51.1%でPSA奏効を示した(23/45[35.8-66.3])。ベースラインで測定可能な疾患を有する患者の全走行率(ORR)は、BRCA変異陽性患者25人の44%が達成した。

 

「ザイティガ」(COU-AA-301試験)と「イクスタンジ」(AFFIRM試験)が、TRITON2よりもPSA奏効率(それぞれ38%、54%)とORR(14%、29%)が低かったことを考えると、RubracaはBRCA変異陽性mCRPCの有望な治療薬となり得る。ただし、RubracaのデータはP2試験のもので、より多くの、より長期のデータが求められる。

 

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Rubracaはまた、リムパーザ(TOPARP試験)とは異なり、ほかのDDR変異(CDK12、FANCA、BRIP1)のある患者では反応が乏しかった。例えば、リムパーザはATM変異を持つ患者で反応が見られたが、Rubracaはこの変異を持つ患者で反応を示さなかった。

 

BRCA以外のDDR変異を持つ患者集団へのRubracaの効果を評価するには、より長期のフォローアップと、より多くのデータが必要だ。これは、同じくmCRPCへの適応拡大を目指すリムパーザとの差別化戦略のキーになるだろう。

 

これら2つのデータは何を意味するのか

PARP阻害薬は、卵巣がんと前立腺がんで新たな治療への道を開くデータを示した。

 

Decision Resources Groupは、PARP阻害薬が2026年までに主要マーケットで約40億ドルを売り上げる薬剤になると見込んでいる。向こう数年のうちに、複数のマーケットで4つのPARP阻害薬の承認と適応拡大が期待される。

 

(原文公開日:2018年10月31日)

 

【AnswersNews編集長の目】

 今年、日本でも承認され、注目度が高まったPARP阻害薬。国内ではリムパーザが、4月に再発卵巣がんの適応で発売され、7月にはBRCA遺伝子変異陽性の進行・再発乳がんへの適応拡大が承認されました。遺伝性がんの治療薬としては国内初で、検査やカウンセリングのあり方も含め、関心を集めました。

 

国内のPARP阻害薬の開発状況を眺めてみると、リムパーザは前立腺がんの適応拡大に向けて臨床第3相(P3)試験を実施中。卵巣がんではBRCA遺伝子変異陽性患者の1次治療、乳がんでは術後補助療法での開発も進んでいます。卵巣がんを対象に、免疫チェックポイント阻害薬「イミフィンジ」との併用療法もP3試験を実施中です。

 

Rubracaは卵巣がんや乳がんを対象とした開発が日本でも進行中。武田薬品工業は昨年、米TESARO社からniraparibを導入。日本では対象となるすべてのがんについて、韓国・台湾・ロシア・オーストラリアでは前立腺がんを除くすべてのがんについて、独占的な開発・販売権を獲得しました。日本では、複数のがんを対象にP1試験が行われています。

 

アストラゼネカによると、国内でリムパーザが乳がんの適応を取得した今年7月以降、同薬のコンパニオン診断薬でBRCA遺伝子変異の検査を受けた患者は13000人を超えるといいます。普及は速いペースで進んでいるようです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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