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ニュース解説

産業革新投資機構 米国に新ファンド―創薬ベンチャー投資で存在感を示せるか

国内最大の官民ファンド「産業革新投資機構」が、傘下に新たなファンドを設立し、米国のバイオ・創薬関連ベンチャーへの投資に乗り出します。最大で20億ドル(約2200億円)を投じる計画ですが、中国などアジア系ファンドを中心に米国のバイオ・創薬ベンチャーへの投資が過熱する中、存在感を示すことができるのでしょうか。

 

最大20億ドルを投資

産業革新投資機構(JIC)は10月26日、米国に100%出資の新ファンド「JIC-US」を設立すると発表しました。本拠は米カリフォルニア州に置き、バイオ・創薬関連分野のバイオベンチャーに最大で20億ドル(約2200億円)を投資。年内に設立手続きを終え、年明けから投資を開始する予定です。

 

JICは産業革新機構(INCJ)を改組して今年9月に発足した官民出資の投資ファンド。投資能力は2兆円を超えます。旧INCJは、次世代を担う新産業の創出を旗印に2009年に発足しましたが、実際の投資案件はジャパンディスプレイやルネサスエレクトロニクスなど、大企業の救済・再編を目的としたものが多く、批判を集めていました。JICは「本来市場から撤退すべき者の救済を目的とする資金供給は行わない」としており、改組によって原点回帰を図ります。

 

日本企業との協業や海外での事業化を支援

JIC-USは当面の資金供給を10億ドル程度に設定し、1件あたりの投資額は0.2~0.25億ドル程度を想定。まずは35件程度の投資を行い、順調にいけば2号ファンドを立ち上げて投資額を20億ドルまで拡大する方針です。

 

JICは米国のバイオ・創薬関連ベンチャーへの投資活動を通じて、
▽バイオ・創薬関連分野での「目利き力」の向上
▽国内バイオ・創薬関連企業にM&Aや提携の機会を提供
▽日本発のシーズの海外での事業化を支援
▽投資ノウハウの獲得や若手投資人材の育成
などを期待。これらにより、日本のバイオ・創薬関連産業の競争力強化や新事業の創出につなげたい考えです。

 

アジア勢が積極投資

世界のバイオ・創薬関連市場は、抗体医薬や細胞治療、遺伝子治療などにより高い成長が期待されており、中でも米国にはその最先端を走る企業が多くあります。米国のバイオ・創薬関連ベンチャーへの投資は過熱気味で、中国やシンガポールなどアジア系のファンドも積極的に投資を仕掛けています。

 

米ビジネス誌「フォーブス」は、調査会社ピッチブックのデータを引用し、米国の非上場バイオベンチャーの資金調達額が今年9月時点で97.6億ドルに達し、昨年(81.9億ドル)をすでに上回ったと報じました。このうち3割近くが中国の投資家によるもので、2016年の3%から急激に拡大しており、この勢いはしばらく続きそうだといいます。

 

JICのまとめによると、シンガポールの政府系ファンド「TEMASEK」は総額3080億シンガポールドル(約25兆3400億円)の投資規模を誇り、米ギリアド・サイエンシズなどに資金を供給。中国系のヘルスケア向けファンド「WuXi Healthcare Ventures」(3億5000万ドル=385億円規模)は、希少疾患向けの医薬品を開発する米アミカス・セラピューティクスや、がんの遺伝子パネル検査を手がける米ファンデーション・メディスンなどに投資しています。

 

エコシステム形成への寄与が求められる

JICを所管する経済産業省は、JIC-USが投資能力を20億ドルに設定したことについて、▽有望案件に迅速に対応できる機動性▽有望投資先から選ばれる必要性▽米国の投資家コミュニティーから認知される必要性――などを考慮したといいますが、後発となるJICが存在感を発揮するには「額が足りない」(業界関係者)との声も聞かれます。

 

JICは今後、国内でベンチャーキャピタルなどを立ち上げ、活動を本格化する予定。国内のベンチャー振興ではエコシステムの活性化が課題となっていますが、それに欠かすことのできないリスクマネーは出し手の数も金額も不足しています。JICには、ベンチャーエコシステムの本場・シリコンバレーで得たノウハウを日本に還元し、エコシステムの形成に寄与する役割が求められています。

 

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