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海外レポート

台湾が目指す抗がん剤のバリューベース評価 今後の見通しは?|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング会社Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、台湾の医薬品市場。抗がん剤の保険償還にバリューベースの評価を取り入れようとしています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

皆保険の台湾 赤字続きでコスト抑制が課題に

世界中各国で医療費上昇への対応が課題となる中、バリューベース・ヘルスケアが注目を集めている。この考え方は特に、アクセスの拡大とコストの抑制を絶えず追求する保険者や医療提供者を惹きつけてやまない。

 

バリューベース・ヘルスケアには、コストをベースとしたものとアウトカムをベースとしたものの2種類があるが、より注目されているのは後者。先進国市場では、がん領域を中心にこうした考え方が広がりつつあるが、そのペースは緩やかだ。一方、アジア市場でこうした路線を取る国はほとんどない。現在この地域では、韓国だけが製薬会社とリスク分担型の協定に向けて交渉しているようだ。

 

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台湾でも、こうした取り組みがかなり進展しているという。台湾の国民健康保険局(NHIA)は、新規がん治療薬の保険償還をアウトカムベースとするよう提案しており、その機会と課題について業界の利害関係者と話し合いを進めている。

 

台湾の国民健康保険(NHI)は全住民の99.9%をカバーする政府運営の単一保険者プログラムで、がんや腎不全といった難治性疾患や希少疾患の患者は自己負担が免除される。NHIは20年以上続いており、住民の満足度は80%に達する。

 

しかし、補償の範囲が広いことに加え、利用は拡大しており、近年は支出超過が続いています。2017年現在で不足額は88億ニュー台湾ドル(2億9900万米ドル)に上り、実効的かつ持続可能なコスト抑制が喫緊の課題となっている。

 

生存期間で保険償還の可否を判断

台湾は、よりアウトカムを重視する医療システムにシフトすることで、財源を有効に活用できるようにしたいと考えている。

 

例えば、NHIAは当初のレコメンデーションで、予測生存期間を満たせなかった新規がん治療薬は保険償還しないことを示唆している。すでに承認されている治療選択肢よりも生存期間が長いと予測された新薬を使用したにもかかわらず、その予測期間まで患者が生存しなかった場合、費用の10%しか払い戻さないという。

 

この政策転換には、いくつか課題がある。

 

その1つは、実臨床では生存期間を正しく評価するのが難しいという点だ。製薬企業は、生存期間には医薬品だけでなくさまざまな要因が影響しているはずだ、と主張している。NHIAはこうした意見に対応すべく、業界の専門家を交えて行動方針を策定中している。行政院衛生福利部(MOHW)は2018年末までに決議案を公表する予定です。

 

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一方、NHIAが設ける支払い基準は曖昧なものとなる可能性も指摘されている。

 

台湾では、新規がん治療薬がNHIの償還リストに収載されるまで2年以上かかる上、革新的な治療薬や免疫療法薬の多くはリストから漏れている。バリューベースの評価が承認プロセスの迅速化と包括化に貢献するとすれば、製薬企業だけでなく患者にとっても利益となるだろう。

 

ただし、QOLが改善したにもかかわらず支払いを拒否されるケースも出てくるとみられる。いくつかの患者団体は、償還レートを引き上げるかわりに、支払い関連リスクのさらなる分担を製薬会社に求めるよう、NHIAに強く要請している。償還レートが引き上げられれば、医薬品市場としての台湾の魅力がアップするだけでなく、患者アクセスの向上にもつながると考えられる。

 

いずれにしても台湾政府は、保険サービスの持続可能性に引き続き目を向けていくだろう。

 

がんの次は心血管・脳血管

NHIが資金的に厳しい状況に置かれていることに加え、革新的医薬品をいち早く自地域で使えるようにしたいとの考えも強いことから、台湾ではバリューベース評価の実現が近づいている。

 

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その先駆けとしてまずはがんに重点が置かれているが、ほかの治療領域にも確実に波及していくだろう。高齢化を背景に心血管・脳血管の治療薬には大きな需要がある。がん領域に続いてバリューベース評価の対象となるのは、これらの領域の薬と考えられる。

 

台湾は、先進各国と肩を並べるべく、医療分野で政策と規制の改革を進めている。承認審査プロセスの改善、パテントリンケージとデータ保護の導入、あるいはバリューベース評価――。いずれの策をとるにしても、台湾には市場としての大きな可能性がある。開放性と柔軟性があり、新しい概念への適応力も高い台湾は、世界の医薬品市場で存在感を増しつつある。

 

(原文公開日:2018年10月1日)

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ日本支店
斎藤(カスタマー・エクスペリエンス・マネージャー)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tel:03-5401-2615(代表)

 

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