米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回は、同社が日本で行った多発性骨髄腫治療のリアルワールドデータを紹介します。実臨床データの分析でわかった治療薬の投与実態とは。
(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら)
多くの患者が推奨量よりも低い用量で投与
ここ20年、がん領域の治療パラダイムは変化し続けている。治療選択肢は格段に広がり、有効性が向上した結果、患者の転帰は改善した。いまも多くの臨床試験が行われており、各社のパイプラインに控える先端技術は革新を成功に導き続けるだろう。しかし、新しい治療が実臨床でどのように使用されているのか、また、それらがどのような影響を与えているのかは、必ずしも明らかではない。
日本のDecision Resources Groupが行った最近の研究では、多発性骨髄腫治療の中心的な薬剤である「レブラミド」を1次治療で使った患者の57%が、1回目のサイクルで推奨されている用量の70%未満しか投与されていないことがわかった(同薬の用法・用量は、1日1回25mgを21日間連日投与したあと7日間休薬を1サイクルとして繰り返す)。
わずかな違いはあるものの、この傾向は最初の8サイクルを通じてほぼ一致している。さらに、2次治療でも60~62%の患者が1サイクルあたりの推奨用量の70%未満しか投与されていなかった。
もう1つ、多発性骨髄腫の治療に広く使われる「ベルケイド」も同じような傾向にある。われわれが研究に使用した電子カルテデータでは、注射1回あたりの薬剤の用量についての詳細はわからなかったが、移植の適応とならない2次治療では、患者の41~53%が推奨されている回数の注射を受けていないことが明らかになった。
こうして見てみると、患者は治療薬を推奨量よりもかなり少ない投与されている。われわれの分析では、「ポマリスト」「ニンラーロ」「ファリーダック」「カイプロリス」など、ほかの多発性骨髄腫治療薬も同じような傾向を示した。
これらの患者は健康状態が悪く、医師も治療を行う上で毒性や忍容性に神経を尖らせることが、推奨量よりも少ない量で投与される原因となっている可能性がある。ただ、低用量での投与は最終的に悪い転帰につながる可能性もあるので、多くの多発性骨髄腫治療薬で低用量投与が行われているのは驚くべきことである。
投与スケジュールにも遅れ
われわれの研究ではさらに、低用量投与に加え、次の治療サイクルを開始するタイミングがかなり遅れる場合が多いということもわかった。
例えば、ポマリストによる治療でスケジュール通りに2サイクル目を開始した患者は47%にとどまり、45%の患者は2サイクル目の開始が7日間以上遅れていた。遅れはサイクルが進むにつれて徐々に大きくなっていき、9サイクル目をスケジュール通り開始した患者は22%だけだった。
われわれの研究で示された低用量投与は、その製品の有効性・安全性に関するプロファイルを真に反映したものではない転帰の悪化を引き起こしうる。医薬品メーカーにとっては非常に重要な問題だ。このままだと、製品に対する医師の評価が下がり、薬剤の使用やマーケットシェア、そして商業的な可能性を損なってしまう可能性がある。
(原文公開日:2018年6月26日)
この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。
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ディシジョン・リソーシズ・グループ(担当:斎藤)
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