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アルツハイマー 新薬登場に希望再び―エーザイ「BAN2401」製品化までの道のりは

エーザイが、開発中のアルツハイマー病治療薬「BAN2401」の臨床第2相試験で、臨床症状の進行を30%抑制したと発表しました。失敗続きだったアルツハイマー病の新薬開発に、再び希望の光が差し込んでいます。

 

「有効性、しっかりとしたデータ出た」

「この薬剤が有効なのかどうかということに関しては、非常にしっかりとしたデータが出てきたと考えている」

 

7月26日、エーザイが開いた説明会で、同社の津野昌紀上席執行役員(ニューロロジービジネスグループ・デピュティチーフクリニカルオフィサー)は自信たっぷりにこう話しました。説明会で示されたのは、この日早朝にアルツハイマー病協会国際会議(AAIC2018、米シカゴ)で発表されたアルツハイマー病治療薬「BAN2401」の臨床第2相試験(201試験)の詳細データ。同試験の有望な結果はAAICでも話題になったといい、津野氏は「エーザイのバッジを胸につけ、誇りを持って会議に参加できたことに感激している」と高揚感を隠しませんでした。

 

これに先立つ7月6日、エーザイは201試験の最終解析の結果、BAN2401が統計学的に有意に臨床症状の悪化を抑制し、脳内のアミロイドβを減少させたと発表。詳細なデータに注目が集まっていました。

 

症状の進行を30%抑制

201試験は、アミロイドの脳内蓄積が確認された856人の早期アルツハイマー病患者(アルツハイマー病による軽度認知障害患者と軽度アルツハイマー病患者)を対象に実施。プラセボと実薬投与群(5用量5群)を比較しました。

 

投与18カ月時点での最終解析結果によると、アルツハイマー病の症状を評価するためにエーザイが独自開発した指標「ADCOMS」による評価で、BAN2401を2週に1回10mg/kg投与した群(最高投与量群)は、プラセボに比べて症状の進行を30%抑制。一般的な評価指標である「ADAS-cog」でも最高投与量群は47%の進行抑制を示しました。

 

PET測定による脳内アミロイド蓄積量は、最高投与量群で投与前の平均74.5から投与18カ月時点では平均5.5に減少。最高投与量群の患者の81%が、投与18カ月後には画像診断でアミロイド陰性となりました。

 

条件付きでの早期承認も視野

BAN2401は、脳内のアミロイドβ凝集体に結合して脳内からこれを除去する抗アミロイドβプロトフィブリル抗体。アミロイドβの蓄積はアルツハイマー病を引き起こす要因の一つと考えられていますが、この仮説に基づいた新薬候補はことごとく臨床試験に失敗しています。

 

2012年には、米イーライリリーの抗アミロイドβ抗体ソラネズマブと米ファイザーの同バピネオズマブが臨床第3相(P3)試験に失敗。17年にはソラネズマブが軽度の患者を対象とした2度目のP3試験でも主要評価項目を達成することができず、今年に入ってからも米メルクのBACE阻害薬ベルベセスタットや米リリー/英アストラゼネカの同ラナベセスタットが相次いでP3試験を中止しました。

 

悲惨な状況が続く中、アルツハイマー病治療薬の開発に再び希望の火を灯したBAN2401。焦点となるのは今後の開発方針です。

 

「患者を放っておいていいのか」

7月26日の説明会でエーザイの津野上席執行役員は、「有効性を再確認する、もしくは別のポピュレーションでテストするとか、次の試験のアイデアはたくさんあると思うが、このデータをベースに条件付きで早期に承認をとるというスキームもある」とし、P2試験データに基づく申請も視野に規制当局と協議する考えを表明。「次の試験をやるとまた数年かかってしまう。その間、患者は放っておかれていいのかということを協議したい」と話しました。

 

確かに今回のP2試験データは期待を感じさせるものではありましたが、一方でさらなる臨床試験の実施を求める声も聞かれます。米ブルームバーグ通信は26日、「データは有望だが決定力を欠く」との記事を配信。米ウォールストリートジャーナルも同日、「専門家からは、本当に効果があるのかを確かめるには追加の臨床試験が必要との指摘もあった」と報じました。

 

津野氏は「次の試験は必ずやることになるが、それをどういう位置付けでやるのか。それがないと申請できないのか、条件付きでの承認後にやるのかは、これからの議論の対象になる」とし、「患者のリクルートメントも難しいので、それを考えるとできるだけ早くとは思う」と強調しました。

 

201試験の結果をめぐっては、CDR-SB(臨床的認知症重症度判定尺度)による評価で26%の進行抑制を示したものの有意差がなかったことが議論の1つの的になっています。規制当局との交渉ではこの点がポイントになる可能性もありますが、津野氏は「CDR-SBはバラツキの出やすい評価指標で、今回ほどのサイズの試験でP値を出すのは難しい」と指摘。「当局はドアをオープンにしてくれていると信じているし、今回の試験で示したADCOMSでのしっかりとした差やCDR-SBの明確な傾向は十分議論の余地があると考えている」と話しました。

 

これまで失敗してきた新薬候補もP2試験までは良好な結果を得ながら、より大規模なP3試験でことごとく頓挫してきました。アルツハイマー病の新薬開発にとってP3試験はまさに鬼門。協議の行方によっては、2020年度以降の早期としてきたBAN2401の発売は早まる可能性があります。

 

開発方針は18年度中に明確化

海外の大手製薬会社が相次いでアルツハイマー病の新薬開発に失敗する中、エーザイはこの分野に積極的に研究開発投資を行っています。

 

2017年10月には、米バイオジェンとのアルツハイマー病治療薬開発に関する提携を拡大。バイオジェンが開発していた抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブの共同開発に乗り出しました。エーザイとバイオジェンは、アデュカヌマブとBAN2401のほか、BACE阻害薬エレンベセスタットの3剤を共同開発しています。BACE阻害薬は

 

前述の通り、アミロイドβをターゲットとしたアルツハイマー病の新薬開発は苦戦を強いられており、一部にはアミロイドβ仮説に懐疑的な声もあります。バイオジェンとの提携拡大を発表した記者会見でもこのことに質問が及びましたが、エーザイの内藤晴夫代表執行役CEOは「アミロイドβが主要な病因の1つであるとの自信を深めているし、開発成功の確度は高い」と答えるなど、同社は開発に自信を見せ続けてきました。

 

国際アルツハイマー病協会によると、世界の認知症患者は4700万人に上り、2050年には3倍に増える見通し。エーザイは世界に先んじて次世代アルツハイマー病治療薬を世に送り出すことができるのか。注目される今後の開発方針について同社は「年度内には方向性を明確にしたい」としています。

 

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