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アマゾンのPillpack買収は医療業界に混乱を引き起こすのか|DRG海外レポート

更新日

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、Pillpack買収でついに医薬品の販売に本格参入することになった米アマゾン。予想される影響をアナリストが探りました。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

薬局チェーンの株価暴落 医療業界に激震

5600億ドルに上る米国の医療用医薬品市場。わずかではあるがそのシェアを占めることで、アマゾンはついにこの領域への参入を果たした。10億ドルと推定されるアマゾンによるオンライン薬局Pillpack買収は米国の医療業界全体を揺るがし、CVSやウォルグリーンズ、ライト・エイドの株価は暴落。先行きの不透明感から、医療関連大手企業全体で235億ドルの市場価値が1日で失われたことになる。

 

アマゾンはPillpackを通して、医薬品供給ビジネスで主要なプレイヤーとなるためのアクセスを一瞬にして手に入れた。Pillpackは一流の薬剤給付管理会社(PBM)の多くと提携している。アマゾンが持つ米国最大の配達可能エリアを活用すれば、流通のサービスとスピードは格段に向上する。

 

Pillpack買収は最初の一歩に過ぎない。しかしそれは、医療業界のほぼすべての利害関係者に影響を及ぼす大きな一歩だ。

 

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予想される影響は

PBMや保険者はアマゾンと協力体制を組まなければならなくなる

CVSなどが提供している処方箋薬のメールオーダーサービス(翌日配達など)でも、調剤してもらうまでの手順が煩わしく、何度かやり取りをしなければならず、多くの患者が不満を持っている。しかし、アマゾンの配達体制と評判をもってすれば、処方箋薬のメールオーダーを選ぶ患者を増やすことは可能だろう。

 

e-コマース大手のアマゾンは、医薬品の支払いが自己負担となる無保険や一部保険の患者をターゲットにするのではないかとの憶測が流れている。そうすると、保険のない患者はさらにアマゾンへと向かい、結果としてPBMの影響力を削ぐことにもなりかねない。あるいはPBMがアマゾンと組み、薬の供給を引き受けてもらう代わりにリベートを差し出すことも考えられる。

 

メーカーにとっては新たな価格交渉の相手に

アマゾンは今後、医薬品の値引きを期待されることになるだろう。メーカーと直接交渉して患者に払い戻す可能性がある。そうなると、メーカーにとっては仲介業者の排除という興味深いシナリオになる。とはいえ、医療費の高騰はアマゾン1社で立ち向かえる課題ではない。

 

個人情報への不安は消えない

Pillpackで薬を購入しているのは大半が慢性疾患の患者で、薬を事前に注文し、配達まで数日待つことができる人たちだ。一方、アマゾンの配達ネットワークがあれば、待ち時間は大幅に短縮され、すぐに薬が必要な患者も恩恵を受けることができるだろう。

 

アマゾンはまた、プライム会員向けに急配サービスを提供することで、7000万人を超えるとも言われるプライム会員を取り込むこともできる。

 

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一方、患者データへのアクセス権をアマゾンに与えれば、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)が侵害される可能性が高まる。

 

顧客の購買行動について大量のデータを収集しているアマゾンが、新規顧客の、しかもより厳しい法律で保護されている医療情報にもアクセスできるようになる。顧客の同意があれば、こうした情報を取引先とシェアすることも可能かもしれない。ほとんどの患者は、個人情報に関する注意書きの小さな文字など読まない。結果として、意図せず個人の医療情報が第三者の手に渡ってしまう可能性がある。

 

アマゾンは進むべき道を定めた

アマゾンは、従業員に対する医療給付を改革するため、バークシャー・ハザウェイ、JPモルガン・チェースと手を組んでいる。今回のPillpack買収は、それとは完全に異なる動きだ。

 

しかし、これによってアマゾンは進むべき道を定めたと言える。アマゾンは今後、自前のPBM事業を持ち、成長が続く専門薬局に進出する可能性がある。ホールフーズとも共同で薬局事業を始める可能性があるが、これには州ごとにライセンスを取得する必要があり、現段階ではまだ何とも言えない。

 

(原文公開日:2018年7月12日)

 

【AnswersNews編集長の目】

いよいよと言うべきか、ようやくと言うべきか。米アマゾン・ドット・コムがオンライン薬局を展開する米ピルパックを買収し、医薬品の販売に本格参入します。

 

ピルパックは2013年設立の新興企業。ネットで処方箋を受け、薬を服用1回分ごとに小分けして配送する事業を展開しています。

 

ピルパックは全米50州全てでオンライン薬局のライセンスを持っており、買収を通じてアマゾンは一気に事業拡大を狙います。ピルパックは多くの大手薬剤給付管理会社とも提携しており、ほとんどの医療用医薬品市場にアクセスできるようになります。

 

報道によると買収額は約10億ドルとみられ、年内には買収手続きを完了する見通しです。

 

日本では医療用医薬品は薬剤師による対面販売が義務付けられており、米国とは大きく事情が異なります。一方で、愛知県や福岡市などでは、今月からは国家戦略特区を活用したオンライン服薬指導が始まりました。アマゾンの動きが日本にどう影響するかは未知数ですが、ネットの活用は加速していくことになりそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

【記事に関する問い合わせ先】
ディシジョン・リソーシズ・グループ(担当:斎藤)
E-mail:ssaito@teamdrg.com
Tell:03-5401-2615

 

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