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ニュース解説

製薬会社の営業活動 公的ガイドラインで規制―なくならないMRの不適切プロモーション

有効性を誇張するなど医療用医薬品の不適切なプロモーションをなくそうと、厚生労働省が製薬会社の情報提供活動を規制するガイドライン案をまとめました。

 

厚労省の調査によると、2017年度に医療機関から不適切との報告があった情報提供活動は5カ月間で52医薬品67事例。国内での承認範囲を超えた効能効果をPRしたり、グラフを加工して有効性を誇張したりといった事例は後を絶ちません。公的なガイドラインは、相次ぐ不適切プロモーションに歯止めをかけることができるのでしょうか。

 

未承認の効能効果をPR、グラフ加工し有効性誇張…

厚生労働省は7月12日、MRらが行う医療用医薬品のプロモーションを規制する「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の案を公表し、パブリックコメント(意見公募)を始めました。意見の募集期間は8月13日まで。厚労省は寄せられた意見も踏まえ、秋にもガイドラインを正式に決定する見通しです。

 

これまで各製薬会社や業界団体の取り組みに委ねてきた厚労省が、ここにきて公的なガイドラインによる規制に乗り出した背景には、製薬会社による不適切なプロモーションがなかなかなくらないことがあります。

 

ARB「ディオバン」(ノバルティスファーマ)や同「ブロプレス」(武田薬品工業)などで不適切なプロモーション活動が発覚したことを受け、厚労省は2016年度からMRやMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)によるプロモーションを対象に“覆面調査”を開始。全国のモニター医療機関から不適切と思われる事例を報告してもらったところ、16年度(調査期間3カ月間)は39医薬品64事例、17年度(5カ月間)は52医薬品67事例に上りました。

 

医療機関から不適切と報告されたプロモーションの円グラフ。2017年度の5ヶ月間に報告された不適切プロモーション67事例。未承認の効能効果や用法用量を示した:11.9パーセント。事実誤認のおそれのあるデータ加工を行った:14.9パーセント。事実誤認のおそれのある表現を用いた:41.8パーセント。信頼性に欠けるデータを用いた:9.0パーセント。安全性を軽視した:7.5パーセント。他社製品を誹謗する表現を用いた:4.5パーセント。その他:10.4パーセント。

 

67事例の内訳を見てみると、「事実誤認のおそれのある表現を用いた」(41.8%)が最も多く、「事実誤認のおそれのあるデータ加工を行った」(14.9%)、「未承認の効能効果や用法用量を示した」(11.9%)、「信頼性の欠けるデータを用いた」(9.0%)と続きました。具体的に見てみると、
▼海外での適応を踏まえ、承認範囲を超えた効能効果を積極的に紹介した
▼グラフに恣意的な補助線を引き、対照群との差を大きく見せた
▼比較試験の結果のグラフから対照群のデータを削除して紹介した
といった事例が報告されました。

 

ガイドライン 監督部門の設置など求める

厚労省がまとめたガイドライン案では、こうした不適切なプロモーションを防ぐため、
▼提供する情報は承認の範囲内とする
▼提供する情報を恣意的に選択しない
▼提供する情報は科学的・客観的な根拠に基づいており、かつ正確な内容とする
▼資材に引用する情報は引用元を明記。引用する研究や論文に企業が関与(物品、金銭、労務などの提供)した場合には、その具体的内容を明記する
という、情報提供活動の「4原則」を規定。MRやMSLなどの情報提供担当者には、社内審査で適切と認められた資材以外は使用しないよう求め、資材に沿って正確で科学的・客観的な根拠に基づく情報提供活動を行わなければならないとしています。

 

企業に対しては、経営陣の責任を明確化したほか、情報提供活動やそれに使う資材が適正かどうかをモニタリングする部門(販売情報提供活動監督部門)を設けることを規定。同部門には、企業から独立した第三者を含む審査・監督委員会を設置するとしました。役員や従業員の評価・報酬にも、適切な情報提供活動を行ったか(行わせたか)を反映することも求めています。

 

医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン(案)のポイント。▼ガイドラインの適用範囲 ○ガイドラインは、医療品製造販売業者と販売情報提供活動の委託先・提携先(コ・プロモーションの相手先を含む)、医療品卸売業者が行う販売情報提供活動が対象。 ○ガイドラインは、MR、MSLその他の名称や所属部門にかかわらず、企業が雇用する者すべてに適用。 ○「販売情報提供活動」とは、特定の医療用医薬品の名称又は有効性・安全性の認知の向上により、販売促進を期待して、その用医薬品に関する情報を提供すること。一般人に対する疾患啓発も含む。 ○ガイドラインで言う「販売情報提供活動の資材等」は、口頭による説明、パソコン上の映像、電磁的に提供されるものなど、提供方法や媒体を問わない。 ▼販売情報提供活動の原則 ○提供する情報は承認の範囲内。 ○副作用の情報も提供するなど、提供する情報を恣意的に選択しない。 ○提供する情報は、科学的・客観的な根拠に基づき、かつ正確な内容である。 ○情報提供資材に引用する情報は引用を明記。研究や論文に企業の関与があるものは具体的内容を明記。社外の調査研究は関係法令や指針を守って行われたものだけを使用。 ○販売提供活動で「行ってはいけないこと」「積極的に行うこと」を規定。 ▼企業の責務 ○経営陣は、自社の販売情報提供活動に関する業務上の行動に責任を負う。 ○販売情報提供活動や活動に使う資材をモニタリングする部門(販売情報提供活動監督部門)を設置。 ○販売情報提供活動監督部門に、自社から独立した第三者を含む審査・監督委員会を設置。 ▼担当者の責務 ○審査で適切と認められた資材に沿って、正確で科学的・客観的な根拠に基づく販売情報提供活動を行わなければならい。 ○例外的なデータを一般的な事実のように表現しない、品位を欠くようなイラスト等を用いないなど、不適正使用や誤使用を誘発するおそれのある表現を用いないよう注意を払う。 ▼その他 ○未承認薬・適応外薬に関する情報提供は、医療従事者や患者・国民から求められた場合は行っても差し支えない(8つの条件を満たす必要がある)。

 

未承認薬・適応外薬に関する情報提供については「医療関係者からの求めがあった場合(医療従事者以外の国民や患者から求めがあった場合も)には差し支えない」としましたが、提供する場合には、通常の情報提供活動とは切り離す、提供する情報は求められたものに限定する、情報提供を求められたように装わない、など8つの条件をすべて満たすことを求めています。

 

未承認薬・適応外薬の情報提供を行う場合の8条件。1、通常の販売情報提供活動とは切り分ける。2、情報提供する内容は要求内容に沿ったものに限定するとともに、情報提供先は要求者に限定する。3、情報提供を求められたかのように装わない。4、提供する情報は、科学的・客観的かつ正確でなければならない。要約、省略、強調などは行わない。5、企業が関与した試験研究に基づく論文を提供する場合は、その試験研究が法令により適切に管理されたものである。6、副作用の危険性が高まる、臨床試験において有意差を証明できなかったなど、不利な情報も適切に提供する。7、承認を受けていないことを明確に伝える。8、経緯、提供先、提供内容など、情報提供に関する記録を作成し、保管する。

 

ガイドラインは、医療従事者向けの情報提供だけではなく、一般向けの疾患啓発も対象。MRやMSLといった職種や所属部門(営業部門とは切り離された部門に所属しているなど)にかかわらず、製薬会社に勤めるすべての従業員に適用されます。

 

薬機法改正では「課徴金」が焦点に

これとは別に検討されている医薬品医療機器等法(薬機法)の改正では、法令違反を犯した製薬企業の役員個人に対する責任追及や、法令違反によって手にした不当な経済的利得を取り上げる「課徴金」制度の創設が焦点の一つとなっています。

 

課徴金制度の導入で厚労省が念頭に置いているのが、いわゆる「ディオバン事件」のようなケース。臨床試験でデータ改ざんが行われ、その論文がディオバンの販売促進に使われたこの事件では、同社の元社員が薬機法66条(虚偽・誇大広告の禁止)違反に問われました(2017年3月に東京地裁で無罪判決。現在東京高裁で控訴審中)。

 

虚偽・誇大広告での罰金は個人・法人ともに最高200万円。一方、ディオバンはピーク時に国内で年間1000億円以上を売り上げました。売り上げに比べて罰金があまりに小さく、「結果として逃げ得」などとの声が上がっていました。

 

「ガイドラインで定められていないこと(禁じられていないこと)であれば自由に行ってもよいとの誤った認識を持つことなく、医薬品製造販売業者に求められる本来の責務とは何かという原点を判断の基軸として、自らを厳しく律した上で販売情報提供活動を行うこと」

 

今回のガイドライン案で厚労省は、製薬企業に自浄作用を働かせるよう求めています。相次ぐ不適切な行為を背景に高まる製薬企業に対するガバナンス強化の要請。企業には、意識改革と体制整備が求められます。

 

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