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新規高脂血症薬ベンペド酸 開発の先行きに暗雲?P3試験で死亡例の頻度が話題に|DRG海外レポート

米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのは、高脂血症治療薬として開発が進むベンペド酸。最近発表された臨床試験データで、突如として死亡例の頻度の高さが話題になりました。開発の先行きにどんな影響を及ぼすのでしょうか。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

死亡例の頻度 プラセボ0.3%vsベンペド酸0.9%

Esperion Therapeuticsが開発中のベンペド酸は、コレステロール低下作用を持つ斬新な薬だ。開発は着実に進んでおり、コレステロール値が高くてもスタチンやPCSK9阻害薬を使えない多くの患者が抱える重大なアンメットニーズを満たすと期待されている。

 

5月初旬には新たに、臨床第3相(P3)試験の良好なデータが公表された。これは、心血管系リスクの高い患者に対し、スタチンにベンペド酸を上乗せすることで、LDLコレステロールが18%低下したという顕著な結果も含まれている。公表されたもう1つのデータでは、新たな安全性の懸念も報告されなかった。少なくとも、同社のプレスリリースには問題を示唆するような文言は見当たらない。

 

Red mark check on Cholesterol, Triglyceride and HDL-Con request

 

ところが、このプレスリリースにリンクされたチャートには、想定もしなかった不穏なデータが示されていた。致死的な有害事象が、プラセボ群で2例だったのに対し、ベンペド酸群では13例あった。死亡率に換算すると、それぞれ0.3%と0.9%となる。

 

救命と延命を最優先とする医薬品にとって、いいニュースでないのは確かだ。このデータの発表後、Esperionの株価は急落した。

 

「19年に欧米で申請」Esperionは計画変えず

ベンペド酸の希望はついえたのだろうか。そう決めつけるのは時期尚早だ。Esperionはデータを公表したのと同じ日、米国と欧州で2019年の承認申請を目指す計画に変更はないと発表した。

 

ところがネット上では、公表されたデータや死亡数、さらにはEsperionとベンペド酸の行く末に対する軽率な書き込みであふれた。その多くは悲観的なものだったが、ベンペド酸を擁護する投稿は、この臨床試験の全死亡数の低さ(被験者2000人超のうち15人)を指摘。死亡率が高めに出たのは偶然ととらえていた。

 

Esperionのプレスリリースでも、最も可能性の高い死因はがんか心血管系疾患であること、重要なのはベンペド酸群の心血管系疾患による死亡率がプラセボ群より低い点であることが強調されていた。

 

sick man with heart attack

 

どんな薬でも、規制当局は安全性を承認の決定的な要因としていることは言うまでもない。しかし、われわれが生きている現代は脊髄反射的なリアクションやセンセーショナリズムが横行する時代だ。今回の件について言えば「臨床試験の結果は再現可能でなければならない」という原則に立ち返るのが最善だと私は考える。

 

承認を先延ばしする可能性も

だからこそ、ベンペド酸については次の試験結果の発表が切に待たれる。最終的には、ベンペド酸は脂質異常症に対する安全かつ有効な治療選択肢であるということが明らかになるだろう

 

ただ、規制当局の態度は曖昧だ。心血管系のアウトカム試験のデータによって安全性が裏付けられるとともに、治療機会を逃したことで死亡が早まったり、心血管イベントを起こしたりする患者のリスクが反映されたデータとなるまで、承認を引き伸ばす可能性がある。

 

逆に、今ある臨床試験データだけに基づいて承認されれば、ベンペド酸自体に起因して高まる死亡リスクに患者をさらすことになりかねない。私としては、もう少し態度を保留し、ベンペド酸の運命が判断できるだけの結果が発表されるのを待とうと思う。

 

(原文公開日:2018年5月21日)

 

【AnswersNews編集長の目】

このコーナーでベンペド酸を取り上げるのは2回目。昨年12月に掲載した記事では、ベンペド酸がスタチン不耐の高脂血症患者が抱える重大なアンメットニーズを満たすとし、将来的には売上高数十億ドルのヒット薬となる可能性を伝えました。

 

そんなベンペド酸に安全上の懸念が生じたというのが今回の記事です。5月に発表された52週にわたる臨床試験の結果によると、有害事象の発現率はベンペド酸群で78.5%(1487例中1167例)、プラセボ群で78.7%(742例中584例)、重篤な有害事象はベンペド酸群で14.5%(216例)、プラセボ群で14.0%(104例)と差はなかった一方、致死的な有害事象はベンペド酸群で0.9%(13例)、プラセボ群で0.3%(2例)でした。

 

記事にもある通り、Esperionはベンペド酸について、19年第1四半期(1~3月期)までに米国で、同年第2四半期(4~6月)までに欧州で、それぞれ承認申請を行う方針を崩していません(いずれもエゼチミブとの併用)。

 

Esperionはこれまでの臨床試験から「ベンペド酸は安全で忍容性が高い」との見解を示しています。今年8~9月には、別の臨床第3相試験のトップラインデータが発表される予定となっており、注目が集まります。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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