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【デジタルメディスン】急接近する医薬品と医療機器|DRG海外レポート

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米国に本社を置くコンサルティング企業Decision Resources Groupのアナリストが、海外の新薬開発や医薬品市場の動向を解説する「DRG海外レポート」。今回取り上げるのはデジタルメディスン。医薬品と医療機器が、急速に結びつきを強めています。

 

(この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。本記事の内容および解釈については、英語の原文が優先します。正確な内容については原文を参照してください。原文はこちら

 

AbilifyMyCiteの承認と、Onduoの立ち上げ

ここ数年「デジタルメディスン」の進歩により、医療における2つの主要な部門、すなわち医薬品と医療機器が急速に接近している。医薬品と医療機器のコンビネーション(Drug-Device Combinations=DDC)はデジタルメディスンの応用例の1つで、デバイスのセンサーを使って薬の効果をモニタリングするというものだ。

 

DDCの開発は多方面から奨励されており、医薬品メーカーや医療機器メーカーも、この分野への対応を鮮明にしている。

 

最近、米FDA(食品医薬品局)が「Abilify MyCite」を承認したのも、その一例だ。この製品は、大塚製薬と米プロテウスが共同で開発した。大塚の抗精神病薬Abilify(アリピプラゾール)にプロテウスの服用可能なセンサーを組み込んでおり、統合失調症患者の服薬状況や活動状況を、スマートフォン経由で離れた場所からモニタリングすることが可能だ。

 

Tablet and pills, Capsule on Touch Screen

 

デジタルメディスンとDDCの分野でもう1つ期待されているのが、仏サノフィと米グーグル傘下のライフサイエンス企業Verilyによる共同事業「Onduo」の立ち上げだ。両社による5億ドル規模の共同事業は、デジタルな糖尿病治療を生み出すことを目標にしている。すでにGlytecやVoluntisといった企業がOnduoと提携し、糖尿病向けデジタルデバイスの開発と販売を目指している。

 

FDAも開発を支援

米FDAもDDCの開発を強力に支援している。コンビネーション製品政策審議会(Combination Products Policy Council)の設立は、その最も顕著な例と言えるだろう。DDCを開発するには、医薬品と医療機器でそれぞれ異なる規制に対応しなければならない。この審議会は、そうした企業を支援することを目的に設立された。

 

医薬品・医療機器メーカーは、この分野のパイオニアやイノベーターとして名乗りを上げるべく、FDAの支援というチャンスの活用を検討しているようだ。

 

デジタルメディスンのインパクトは大きい

反面、デジタルメディスンは、従来型の診断向け製品に依存している医療機器メーカーや、デジタルソリューションを自社製品に組み込むには限界がある医療機器メーカーにとって重大な脅威となっている。新薬を開発したり、新規の薬物送達デバイスを開発したりする能力に限りがある後発医薬品メーカーもまた、DDCの将来性が高まることで不安に駆られている。

 

Little girl feeling sick

 

ただし、デジタルメディスンはまだ黎明期だ。こうした企業でも、競争力を維持するために共同で新基軸を打ち出すチャンスは十分、残されている。

 

この先数年間、デジタルメディスンは、DDCをめぐる規制環境も含め、医薬品業界や医療機器業界に非常に大きな影響を及ぼすことになるだろう。例えば、AbilifyMyCiteで遠隔地から持続的にモニタリングできるようになれば、受診のために通院する必要もなくなる。

 

既存の診断用デバイス企業にとっては大きな打撃だ。逆に、デジタルソリューションを開発できる企業や、すでにその事業を開始している企業は、この先数年間は優位に立つことができるだろう。

 

(原文公開日:2018年5月30日)

 

【AnswersNews編集長の目】

大塚製薬が昨年11月に米FDAから承認を取得し、大きな話題となったデジタルメディスン「Abilify MyCite」(エビリファイマイサイト)は、抗精神病薬エビリファイの錠剤に微小なセンサーを組み込んだものです。センサーは胃液に触れるとシグナルを発し、患者の身体に貼り付けたパッチでそれをキャッチ。服薬した日時と錠数に加え、睡眠など患者の活動に関するデータも記録します。

 

エビリファイマイサイトに象徴されるように、製薬会社の間ではここ数年、IT技術を活用した服薬支援の取り組みが広がっています。

 

大塚は昨年7月、国内で抗血小板薬「プレタール」でNEC(日本電気)と共同開発した服薬支援機能付きの新包装品の承認を取得。エーザイも同年1月から、服薬時間を知らせ、薬を取り出すとその情報が家族や医療従事者に通知される服薬支援機器を販売しています。

 

海外では、スイス・ノバルティスが喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)治療薬の服薬を管理する「スマート吸入器」を開発。米イーライリリーも、注射の回数や量を記録するインスリン注射器を開発しています。

 

IT技術の進歩に伴い、今後も薬とデバイスの融合は一層、進んでいくことになりそうです。

 

この記事は、Decision Resources Groupのアナリストが執筆した英文記事を、AnswersNewsが日本語に翻訳したものです。

 

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